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- 123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:03:22.31ID:MY/dACDu0
- ~レッスンスタジオ~
ガヤガヤ…
やよい「えー! 伊織ちゃんのお父さん、そうだったんだー!」
千早「水瀬さんの事だから、何か理由があるんだって思っていたけれど……」
伊織「皆、ごめんなさい」ペコリ
伊織「何も皆に説明もしないで、一方的にひどい事を言ってしまったわ。
今では、本当に反省してる」
春香「ううん、いいのいいの!
私達、ちょっとビックリしただけだもん。ねっ、皆?」
美希「うんうん! デコちゃんにしては、おゲヒンかなって」
伊織「なっ、お下品って……まぁ、言われても仕方が無いわね」
伊織「ってちょっと待ちなさい! デコちゃん言うな!!」
亜美「ツッコミ遅いよ→ん、いおり~ん」ツンツン
真美「765プロきってのツッコミ役がそれでど→すんのさ、いおり~ん」プニプニ
伊織「うるさいわねっ! 好きでツッコミ役を請け負ってるんじゃないわよ!」
あずさ「あら~、それじゃあこれからはお小遣いあげた方が良いかしら~」
伊織「いらないわよっ!! まずそういう無駄なツッコミさせないで!!」 - 124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:05:26.33ID:MY/dACDu0
- 響「あははは! 良かった、すっかりいつもの伊織さー」
伊織「よくよく考えたら、この伊織ちゃんが焦る必要なんて無いのよね。
お父様にライブを招待する機会なんて、私にならいくらでも作れるんだから」
貴音「ふふっ、その意気ですよ、伊織」ニコッ
雪歩「伊織ちゃん、皆と仲直りできて良かったですぅ」ホッ
真「まったく……伊織には本当に世話が焼けるよ」ポリポリ
香「とか言いながら真ちゃん、率先してオレンジジュース買いに行ってくれたじゃない?」
真「えっ!?」
香「ふふっ。案外、真ちゃんも流行りの“ツンデレ”だったりしてね」ニコッ
真「なっ、ぼ、ボクは違いますよ! ていうか流行ってません!」
雪歩「えへへ」ニコニコ
ガチャッ
亜美「あっ! サイバーおじちゃんと兄ちゃん、りっちゃん!」 - 125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:07:24.31ID:MY/dACDu0
- リョウ「よーう皆! もっこりしてたかい?」
美希「もっこりしてたのー!」
春香「し、してないよっ!」
香「リョウ~!!」ドタドタ…
リョウ「どひぇえ~~っ!!」ドタドタ…
コツ…
律子「…………伊織」
伊織「律子…………あ、あの……」モジモジ…
伊織「ご……ごめんなさい!」
伊織「私、本当に、ひどい事を言ったわ。
自分でも信じられないくらい……いらないだなんて……」
律子「…………」フルフル
伊織「許してくれなくたっていい。でも、謝らせて」
伊織「本当に……ごめんなさい」ペコリ - 126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:09:34.36ID:MY/dACDu0
- 律子「謝らなきゃいけないのは、私の方よ」
伊織「えっ……?」
律子「手を上げた事ももちろんだけど、ちょっとね……これから話すわ」
律子「……プロデューサー」
P「あぁ……ちょっと皆、一旦集まってくれるか?」
一同「?」ザワザワ…
香「ん、何が始まるの?」ギュウ-!!
リョウ「いだだだだだっ!! 折れ、折れるっ!!!」パンパン!
律子「皆に、言わなきゃいけない事があるの」
律子「本当は、もっと早く言うべきだったのかも知れないけれど……」
律子「私は、今度のフェスが終わったら……」
律子「研修のために、ハリウッドへ行く事になっているわ」
律子「皆とは……次のフェスが、ひとまず最後の仕事になると思う」 - 127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:11:44.17ID:MY/dACDu0
- 春香「えっ!?」
一同「ええぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」
P「………………」
律子「私と社長、プロデューサーで話し合って決めたの」
律子「今の765プロが……皆がこれからも成長していくために、何が必要なのか」
律子「もちろん、国内で得られる知識を全て習得したなんて驕りは全く無いわ」
律子「でも、海外での娯楽の在り方を学ぶ事で、皆のためになる事がきっとあるって」
伊織(! 私達の、ため……?)ピクッ
律子「そう思ったの。だから……」
律子「心配しないで。何も今生の別れになる訳じゃないわ。
しばらくしたら、ちゃんと戻ってくるわよ」
律子「でも……これまで皆と一緒に活動できて、本当に良かった」
律子「765プロのプロデューサーを務めてこれた事は、私の誇りよ」 - 128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:14:13.67ID:MY/dACDu0
- 亜美「り、りっちゃん……!」グスッ…
律子「ほぉら、泣かないの亜美。
今言ったばかりでしょ? ちゃんと戻ってくるって」ナデナデ
真美「一週間くらいで戻って来てくれる?」
律子「そ、それは無理だけど……」
やよい「律子さんがいてくれないと、事務所の冷蔵庫の管理が大変ですー!」
あずさ「お、お住まいはどちらですか? 年賀状、書き直さないと……」
美希「律子、さんだけが行くなんてズルイの! ミキも行きたいー!」
千早「海外は危ない所だから、美希はもっと自衛をすべきだわ」
響「うぎゃーっ! また自分の事務仕事が増えちゃうよー!」ワシャワシャ!
「やいのやいの!!」
律子「あーもううるさーーいっ!!!」ドカーン!
律子「とーにーかーく! 私の最後の仕事くらい、しっかりキメてもらわなきゃ困るの。
ほら、全体練始めるわよ! 分かったらさっさと配置に着く!」
一同「はぁい……」
律子「だらしない! もう一回!!」
一同「はいっ!!」 - 129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:16:21.99ID:MY/dACDu0
- 伊織「………………」
伊織(ハリウッドに、律子が……私達のために……)
伊織(それが、律子が選択した行動、ってわけ……)
律子「伊織」
伊織「!?」ドキッ!
律子「あっちでの生活って、正直どうしたら良いのか何も分からないの。
英語も、学生時代からあまり得意ではなかったし」
律子「今度、色々と教えてくれる?
買い物の仕方とか、免許の取り方。後はそうね、防犯対策とか」
伊織「……いいわよ。この伊織ちゃんなら、海外での生活はお手の物だもん」ファサッ
律子「ありがとう」ニコッ
律子「ほぉらー! それじゃあ始めるわよー!!」
香「律子さん……そうだったんだ」
リョウ「………………」 - 130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:19:42.20ID:MY/dACDu0
- テクテク…
雪歩「律子さんが、そんな遠くに行っちゃうなんて……」
真「色々と言い合った事もあったけど、いざってなると寂しくなるなぁ……」
春香「うん……」
伊織「ふんっ! いつまでもウジウジ情けないわね」
伊織「決まった事に悩んだって仕方ないじゃない」
亜美「いおりんは、寂しくないの?」
伊織「……寂しいわけないでしょ」
真美「またまたぁ。さっきいおりん、りっちゃんに謝ってたクセに」
伊織「そりゃあ、律子がいなくなれば、これまでの仕事の仕方もガラッと変わるわ」
伊織「でもそれは、逆に言えばチャンスなのよ」
貴音「ちゃんす?」
伊織「そう。自分で色々とやらなくちゃいけない事が増える分、
自分で自由に行動できる幅が広がるって事」
伊織「自分の魅力を、実力を、違う形でもっと世間に知らしめるチャンスが来たって、
そう思わない?」 - 131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:22:06.21ID:MY/dACDu0
- 響「ま、前向きだなぁ伊織は」
伊織「そうじゃないとアイドルなんてやってられないわよ」
亜美・真美「いおりんの仕事のリュウギですな」「プロヘッソナルですな」
伊織「とにかく! 律子の言うとおり、本番までしっかり仕上げていくわよ!」
伊織「美希達の方こそ、私達の代役でステージに上がる以上、
覚悟は出来てるんでしょうね!?」
美希「んー、ミキ的には、やっぱりデコちゃんは焦りすぎだって思うな。あふぅ」
伊織「あんたはもう少し危機感持ちなさいよ!!」キィーッ!
伊織「まったく……ほら、そこのボディーガード!
家までしっかり護衛しなさいよね!」
リョウ「おう、がってんしょうち~」フリフリ
伊織「あんたもそのニヤケ面止めなさいよ!! もう、新堂、出して!」ガチャッ
バタン! ブロロロロロ…
やよい「伊織ちゃん……すごく、ガマンしてました」
あずさ「あんなに大声を出して……寂しさを紛らわそうと……」
リョウ「……やれやれ、いつまでも素直じゃないな」 - 132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)19:25:26.09ID:MY/dACDu0
- ~765プロ事務所~
プルルルルル…♪
プルルルルル…♪
高木「…………私だ」
高木「今回もまた、キミの雇い人が派手にやらかしたそうじゃないか」
高木「あまり危ない事をされては、私としても気が気では無いのだがね」
高木「……フフフ、それは心外だよ」
高木「何もあそこまでやれとお願いしたつもりは無い」
高木「それに……彼の動向を把握できなくなるほどに、彼女の周囲を混乱させるのは、
あまり好ましい事では無いんじゃあないかな」
高木「良いだろう。フェス当日までしっかり仕事をしてもらう約束だ」
高木「それまでは、キミの手腕を信じる事にするよ」
高木「……フッ。上から目線で話してなどいないさ」
高木「頼んだぞ」 - 138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)20:52:25.84ID:MY/dACDu0
- ………………………
………………
――水瀬家は常に帝王たれ。
――何事にも、いついかなる時も、他者より先へ、前へ踏み出さねばならない。
「お父様……」
「それなら、なぜお父様は、私に学を授けてくれなかったの?」
「どうして、私に期待を向けてくれないの?」
「私がアイドルになりたいと言ったのは、お父様に私の事を見てもらいたかったから」
「もっと、お父様に認めてほしい……誰のためでもない、私のためよ」
「お父様が、私にアイドルをさせたのは……やっぱり、自分のため?」
「うっとおしい私を黙らせて、遠ざけるための……」
――どうしてもその答えを知りたいのなら、シャルルに聞きなさい。
――いずれにせよ、今日のライブが終わる頃には、お前にも自分の気持ちが分かるだろう。
「え…………?」 - 139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)20:54:01.38ID:MY/dACDu0
- チュンチュン… ピヨッ
伊織「………………」
伊織(……自分の気持ち…………シャルル?)
カチャカチャ…
伊織「………………」
新堂「伊織お嬢様、いかがなされましたか? ご気分が優れないようですが」
伊織「……ねぇ、新堂」
新堂「何でございましょう」
伊織「シャルルの、ここの耳の付け根……少しほつれてるみたい。縫い直してくれる?」
新堂「かしこまりました。すぐに係りの者に補修をさせましょう」
伊織「あと、お父様は……」
新堂「他社との会議があるからと、早くにお出になられておりますが」
伊織「…………そう」 - 140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)20:56:40.19ID:MY/dACDu0
- ~フェス当日、会場の公園~
ワイワイ… ガヤガヤ…
リョウ「ほほ~。これはまた大入りだなぁー」キョロキョロ
香「ホントね~。リハーサルの時は全然ガラガラだったのに」キョロキョロ
P「こっちのステージに765プロ……
それで、向こうの小さい公園を挟んで見えるアレが、961プロのステージです」
律子「私達の出番は、あと約1時間後ですね。
それまでは、あっちのテントでアイドル達は待機することになります」
春香「雪歩の足、治って良かったね!」
雪歩「うん! 心配かけてごめんね」
響「一時はどうなる事かと思ったぞ! これで皆で踊れるな!」
やよい「でも、その前に961プロのジュピターさん達に勝たなきゃいけないかなーって…」
美希「やよい、心配ゴムヨウなの! ミキ達に任せて!」
伊織「コケたらどうなるか分かってるんでしょうねぇ? にひひっ♪」
貴音「ふふっ。そのような恐ろしい脅迫を受けてしまっては、勝たざるを得ませんね」ニコッ - 141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)20:59:05.07ID:MY/dACDu0
- 香「……ねぇ、リョウ」
リョウ「ん?」
香「このイベントに乗じて、向こうは……海坊主は、何かを仕掛けてくるはずよね?」
リョウ「まぁ、アイツの柄では無いが、大勢の観客に紛れて襲いに来る可能性はあるな」
リョウ「もっとも、あんな図体の大男、ここにいるだけで目立ってしょうがないだろうが」
香「そりゃそうだ」
リョウ「俺が気にしているのは、むしろ海坊主以外の敵だ」
香「えっ? う、海坊主以外の敵?」
リョウ「香。お前、この間俺と別れた後、二人組みの男に襲われたんだったな」
香「えぇ。あの時は、冴子さんに助けてもらって……」
リョウ「そいつらは、961プロとは無関係だと、冴子の取調べには応じているそうだが……」
香「ウソに決まってるわよ、そんなの! どーせそう言うように命令されてるんでしょ」
リョウ「ウソじゃないとしたら?」
香「! そ、そりゃあ……えっと……」
香「それはそれで、何か気持ち悪いわね……」 - 142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:00:59.93ID:MY/dACDu0
- リョウ「俺達が気をつけなければならないのは、海坊主を含め、
敵の狙いが未だに分かっていないって事だ」
リョウ「念のため、冴子にもこの会場の張り込みを頼んではいるが、気を抜くなよ」
香「わ、分かってるわよそれくらい」
あずさ「あ、あのぅ、律子さん。この衣装、少しサイズがキツくて……」
律子「おっかしいなー、チェックしたサイズで注文したはずなのに……
ひょっとして、また大きくなりました?」
あずさ「そ、そんな! 甘いものは控えてきたつもりです!」
律子「そういう意味じゃなくてですね……あぁ、テントから出ないで!」
リョウ「うわはぁっ!! あずさちゃん、ボクが手伝ってあげちゃう!!」ピョンッ!
香「ふんっ!!」グイッ ビシィッ!!
リョウ「おごふっ!?」ドテッ!
リョウ「く、首……お前、俺を殺す気か……」
香「気を抜くなって10秒前に言ってたのはどこのどいつだ」 - 143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:03:18.67ID:MY/dACDu0
- テクテク…
高木「やぁ。皆、調子はどうかね?」
春香「あっ、社長!」
一同「こんにちはー!!」
高木「ハハハ、元気そうで何よりだ」
律子「お疲れ様です、社長。何とか無事に、この日を迎える事ができました」
高木「うむ、ご苦労だったね。
冴羽さん達も、皆の事を守ってくださり、ありがとうございました」ペコリ
香「いえいえ、そんな」
リョウ「社長さん、お言葉だが、まだ目的は達成されてはいない。
海坊主とのケリを付けるまでが、俺の仕事だと思っている」
高木「うむ……そうでしたな」
ヴィー!… ヴィー!…
P「ん? 携帯が……事務所から?」ピッ!
P「もしもし、音無さんですか? ……」
P「何ですって!? きょ、脅迫電話っ!?」 - 144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:06:45.42ID:MY/dACDu0
- 一同「!?」ザワッ…
P「そ、それで、内容は……うん……」
P「な、765プロの、水瀬伊織…………じゃない、誰ですか!?」
P「!! み、水瀬財閥の……当主の身柄を引き渡せ!?」
伊織「!!?」ガタッ!
P「な、何でそんな電話がウチに!? ……えっ、今日のライブに!?」
P「そんな事を……あ、後は現金を、ご、5億円……それで電話は切れたんですか!?」
P「お、落ち着いてください音無さん! 大丈夫です、今のところ皆無事で……えっ?」
P「私も冴羽さんと一緒に行きたかったピヨ? 何を言ってんですかこんな時に!!」
P「ご、ごめんなさい。とにかく! 俺達は会場を警戒しておきますから!
何かあったらすぐに連絡ください!」
P「い、一旦切りますね!? すみません、失礼します!」
ピッ!
P「…………社長、これは……!」
高木「ウム……
つまり犯人は、金目当てで水瀬家の長女である水瀬伊織君を狙っていた、と」 - 145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:10:49.35ID:MY/dACDu0
- 伊織「そ、そんなのおかしいわよ! だってお父様は私の事を少しも…!」
リョウ「仮にそれが本当だとしても、誰もがそれを知っているとは限らないだろ」
伊織「でも……!」
律子「ただ、伊織のお父さんが見に来るという情報まで得ておきながら、
伊織の家の家庭環境は把握していないというのも、変な気がします」
リョウ「伊織ちゃんが、水瀬財閥を脅すに当たって本当に狙うに値しない存在なら、
財閥当主の動向を把握する時点で分かってもおかしくないはずだが……」
香「そんな事を議論してる場合!? 伊織ちゃんのお父さんが狙われてるのよ!?」
P「そ、そうだった! えぇと、ど、どうすれば……!」
リョウ「俺と香は、怪しいヤツらがいないかどうか、会場をくまなく見回って来る」
リョウ「プロデューサーさんは、伊織ちゃんのお父さんを探して、確保しておいてくれ。
律子君は、ここでアイドルの皆の事を頼む」
律子「わ、分かりました!」
P「うぅ……こ、こんな事になるとはぁ……!」オロオロ…
香「情けない事言わないで! アンタが動揺したらアイドルの子達も不安がるわ!」
P「はっ! そ、そうですね。
い、いぃ伊織。だだ大丈夫だ、お前のお、お父さんはおお俺がちゃんと…」ガタガタ…
伊織「しっかりしなさいよ、馬鹿プロデューサー!!」 - 146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:12:19.80ID:MY/dACDu0
- 春香「うぅ、ぷ、プロデューサーさん……」
千早「とうとう、恐れていた事態が起こったわね……」
リョウ「しかし、予測はしていた。慌てる事は無い、俺達がついてるさ」ニコッ
真美「そ、そうだよ皆! 真美達には、このもっこりサイバーおじちゃんがいるじゃん!」
リョウ「おじちゃんじゃなぁいっ!」くわっ!
美希「ミキは、最初から何にも心配してないよ? もっこりのおじさん、頑張ってなの!」
響「余裕があったら、自分達のステージも見ててほしいけど……
でも、伊織のお父さんと、あと皆の事を頼んだぞ、冴羽リョウさん!」
貴音「冴羽殿、もっこりです」キリッ
雪歩「し、四条さん、真顔で言う事じゃないですぅ……!」カァッ…
真「香さんも、くれぐれも気をつけてください!
悪いヤツらがいたら、ボクもガーンって駆けつけますから!」
香「それには及ばないわ、でもありがとね!」 - 147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:13:43.08ID:MY/dACDu0
- 亜美「もっこり! やよいっちもほら、魔法の合言葉だYO!」ピョン!
やよい「うっうー! 冴羽さん、もっこりしましょー!」ピョン!
リョウ「悪いな。俺は君達よりも、三浦あずさ君ともっこりがしたいんだ」キリッ
あずさ「あ、あら~……」
香「いい加減にしろっ!!」スカァンッ!!!
リョウ「あいでぇっ!!」
香「とにかく行って来るわね! ほらリョウ、ボサッとするな!」
リョウ「ぢぐじょお~……あずさちゃん、俺のもっこり預けたぞぉ~」
タタタ…
高木「やれやれ、こんな時に……まぁ、あの余裕は頼もしいとも言えるかな」
P「そ、それじゃあ俺も行ってきます!」タッ
高木「あぁ……頼んだよ」
タタタ… - 148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:14:46.89ID:MY/dACDu0
- 高木「………………」
律子「……社長、どうされたんですか?」
高木「ん? あぁ、いや何……」
高木「水瀬君のお父さんとは旧知の間柄だが、こんな事になったのは初めてなものでね。
さすがに動揺を隠し切れんよ、ハハハ」
律子「笑ってる場合ですか!」
伊織「わ、私新堂に状況を伝えてくるわ!」ダッ!
律子「あっ、ちょっと待ちなさい伊織!!」
タタタ…
律子「あぁもう、今はあの子が一番危ないってのに……!」ソワソワ…
高木「………………」 - 149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:16:59.44ID:MY/dACDu0
- タタタ…
新堂「……? おや、伊織お嬢様」フキフキ…
伊織「新堂っ!! はぁ、はぁ、はぁ……」
新堂「いかがなされましたか、お嬢様。そのように息を切らすまで走られては……」
伊織「わ、私の事はいいから! はぁ、はぁ、お、お父様が……!!」
新堂「お嬢様、まずは落ち着いてください。
今、オレンジジュースをお出し致しましょう」スッ
ヒラッ…
伊織「だ、だから私の事なんていい、って……?」
伊織「新堂? 何かポケットから落としたわよ?」スッ
新堂「ムッ?」
伊織「!! こ、これは……これって!」
伊織(今日のフェスのチケット……席の番号も、お父様に渡したのと同じものだわ!!)
新堂「おぉ、これは大変な失礼を。申し訳ございま…」
伊織「何でアンタがこれを持ってるのよ!!」 - 150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:18:43.40ID:MY/dACDu0
- 新堂「ご主人様が、私にくださったのです」
新堂「私には必要の無いものだ、とおっしゃっておられました」
伊織「…………!!!」
伊織「ひ、必要の、無い……!?」
伊織(わ、私が、フェスに出られなくなったから……?)
伊織(いいえ、それでもアンコールのオールスターズで出るもの!)
伊織(な、そんな……どうして……約束したのに!!)
新堂「お嬢様? ……申し訳ございません、何かお嬢様は…」
伊織「いいえ……いいわ、新堂。もういい」スッ
新堂「はっ?」
伊織「お父様は会議だから、ここに来ていない。襲われる心配も無い……それで十分よ」
伊織「そうよね、シャルル……」ギュッ…
トボトボ…
新堂「フ~ム……この新堂、どうやら要らぬ勘違いをさせてしまったようですな」 - 151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:20:29.80ID:MY/dACDu0
- トボトボ…
伊織「………………」
ガサッ…
海坊主「………………」
海坊主(一人でほっつき歩くとは、無用心な……)
海坊主(リョウのヤツは何をしている……まぁいい)
海坊主(行くか)ザッ
スカッ
海坊主「……? む、むおぉっ!?」ドキッ!
海坊主「な、何だこの穴は!?」
雪歩「うんしょ、うんしょ……」ザックザック…
雪歩「これくらい掘れば、良いかな……
わ、悪い人達を穴に落とす作戦だ、って冴羽さんが言ってたみたいだけど……」
雪歩「私、ダメダメだから、ちゃんと皆の役に立たなくちゃ……」ザックザック… - 152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:22:09.25ID:MY/dACDu0
- 海坊主「…………お、女!?」
雪歩「!? ひぃぃっ!! お、男の人ぉっ!?」ビクッ!
海坊主「そ、そんな所で何をしている!」
雪歩「ひぃぃんっ!! こ、怖いですぅ~!!」ザクザクザクザク!
海坊主「それ以上掘るんじゃない! 出て来られなくなるぞ!」
海坊主「あぁ、くそっ、標的が遠く……もういい、勝手にするんだな!」プイッ
のっしのっし…
<ひぃ~ん!! い、犬ぅ~!!
海坊主「!?」クルッ
犬「ワンッ! ワンワンッ!」
男の子「わぁ、何か穴の中に女の人がいるぞ! 面白いなぁタロウ、あはは!」
雪歩「ひぃ~~っ!! お願いだから近づけないでぇ!!」 - 153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:23:26.48ID:MY/dACDu0
- のっしのっし…
男の子「あははははっ!! タロウにビビッてら、おっかしぃー…」
男の子「……?」クルッ
ズウゥゥゥゥゥゥン…
海坊主「………………」ゴゴゴゴ…
男の子・犬「!!?」
男の子「ひ、びええぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
犬「キャン、キャインッ!!」ダッ!
スタコラサッサー…
雪歩「ひぃぃぃぃぃぃっ……!!」ガタガタガタ…
スッ…
雪歩「…………ふぇ?」
海坊主「手を貸せ」
雪歩「あ……うぅ……」 - 154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:25:23.73ID:MY/dACDu0
- ガシッ グイィッ!
雪歩「きゃっ……!」
ストンッ
雪歩「ととっ……あっ……」
海坊主「………………」
雪歩「あの…………あ、ありがとうございましたぁ」ペコリ
海坊主「俺が通っていなかったら、どうなっていたか……
自分で出られないほどの穴を掘る上に、犬一匹追い払えんとはな。ふんっ」
雪歩「あうぅ……ご、ごめんなさい」シュン…
トコトコ…
海坊主「?」
子猫「ニャア~」
海坊主「!!?」ビクッ!
子猫達「ニャアン」「ニャアニャア~♪」
海坊主「ね、ねこぉっ!!?」
雪歩「?」 - 155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:27:18.77ID:MY/dACDu0
- 子猫達「ニャア~♪」「ニャ~ン♪」スリスリ
海坊主「や、やめろ!! あぁあっちへ行け、ひぃぃっ!!!」ガクガク…
雪歩「あのぅ……どうしたんですか?」
海坊主「どうしたんですか、じゃあない!! は、早くコイツらを何とかせんかぁ!!」
雪歩「何とかって言われてもぉ……」
海坊主「ひえぇぇぇっ!!!」ガクガク…
冴子「………………」ジィーッ…
冴子「……コレでいいの? リョウ」ジィーッ…
『だぁーっはっはっはっはっはっはっはっ!!!』
冴子「もう。ようやくスマホに変えたと思ったら、こんなくだらない事ばっかり」 - 156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:30:06.09ID:MY/dACDu0
- ~会場周辺~
リョウ「ぎゃあ~っはっはっはっはっはっはっ!!!
あひ、あひっ、ひっ!! なーっはっはっはっはっは!!!」ゴロゴロ…!
香「テレビ電話の使い方間違ってんじゃないの?」
リョウ「ひ、「ひえぇぇぇっ!!!」だって!!
もう最高、ボクちんガマンできないい、いひ、いひっ!!!」バンバン!
リョウ「スマートホンってのは良いモンだなぁ。
便利な上にもっこりな画像も検索し放題! うふ、うふふふ!」
香「スマート“フォン”よ、フォン! まったく、冴子さんに何をお願いしてんのよ」
リョウ「まぁ良いじゃないか。こうして海坊主を簡単に無力化できた事だし」
香「だからと言って、冴子さんや雪歩ちゃんまでダシに使わなくたって良いじゃない!」
リョウ「勘違いするな、香。
俺は冴子に、海坊主がいたら猫を差し向けて動画を撮れ、って言っただけだ」
香「えっ? じゃ、じゃあ雪歩ちゃんは何でテントを離れてそこに……」
『雪歩ちゃんは、どうやら誰かに言われてここに来た様子だったわよ』
リョウ「……冴子!! 雪歩ちゃんが危ないっ!!」 - 157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:32:31.90ID:MY/dACDu0
- 冴子「えっ!?」
ザッ… グアァッ!
冴子「……ハッ!?」
ブンッ!!
冴子「ッ!!」サッ
謎の男「ちっ、惜しい」
冴子「……海坊主の仲間、って訳じゃなさそうね」
雪歩「えへへ、かわいい」ナデナデ
子猫「ミィミィ♪」
海坊主「貴様ぁっ!! さっさとしろ、してくれぇ!!!」ガタガタ…
ガサガサ…
冴子「!! 危ないっ!!」ダッ!
謎の男「おぉっと、待ちな。そっちには行かせねぇよ」ザッ
冴子「くっ……!」 - 158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:33:56.05ID:MY/dACDu0
- 雪歩「よしよし……?」
ザッ
謎の男達「へっへっへっへ……」ニヤニヤ…
雪歩「!? あ、あわわわ……」ガタガタ…
海坊主「!? な、何だ貴様らは!」
謎の男A「こっちへ来なぁっ!!」グイッ!
雪歩「きゃあああぁぁっ!!」
謎の男B「おい、コイツはどうする?」
謎の男C「ファルコン……凄腕の傭兵とかいうヤツか。今のうちに痛めつけておくか?」
海坊主「ぐっ……!!」 - 159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:35:10.47ID:MY/dACDu0
- 謎の男D「止めておけ。無駄な事はするな、ってボスが言ってただろ」
謎の男E「それもそうだな。じゃあなおっさん」ダッ!
海坊主「ま、待てぇっ!!」
雪歩「た、助け……モガモガ……!!」
タタタ…
バキッ!
謎の男「ぐあぁっ!!」ドドォッ!
冴子「ッ……し、しまった! 間に合わない!!」 - 160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:37:13.68ID:MY/dACDu0
- リョウ「……ちっ、冴子のヤツ、電話に出ない」
香「まさか、冴子さんの身に何かあったんじゃ……!」
リョウ「アイツはそう簡単にやられるタマじゃない。心配なのは雪歩ちゃんだ」
ヴィー!… ヴィー!… 『アーイヨー キーエナイデ モーオ-ー ウウー♪』
リョウ「むっ?」
香「冴子さんから?」
リョウ「…………非通知……」ピッ!
リョウ「……誰だ」
『シティーハンター、冴羽リョウだな』
リョウ(変声機……)
リョウ「なぜ俺の名と、この番号を知っている」
『キミに質問をする権限は無い』
『私は、既にキミ達のアイドルの身柄を預かっている』 - 161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:40:55.13ID:MY/dACDu0
- リョウ「!」
『一つゲームをしようか、冴羽リョウ』
『私達は、いくつかのグループに分かれてこの会場内をウロついている』
『キミ達のアイドルを連れてね』
『765プロのライブまで、あと40分……フェアリーが歌い終わるまでに、
私達の手から彼女達を救い出す事ができれば、何も悲劇は起きない』
『キミ達の勝ちだ』
リョウ「もし救出できなかったらどうなる。爆弾でも爆発させるのか?」
『察しが良いな。さすがに、この手合いには慣れているという事か』
リョウ「おかげさんでな。俺にとってはちっとも面白くないゲームだがね」
『まぁ、そう言うな』
『裏の世界で生きてきたキミにとって、アイドルのライブなど退屈だろう?』
『シティーハンターの名に恥じない、素晴らしいショーとなる事を期待しているよ』
プツッ!
リョウ「……………………」 - 162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:42:24.56ID:MY/dACDu0
- トボトボ…
伊織「………………」
伊織「…………?」ピタッ
ンーッ! ンーッ…! タタタ…
伊織「あれ……うそ、雪歩……?」
タタタ…
P「…………おーい、伊織!」
伊織「あっ、プロデューサー?」
P「お前、こんな所で何をしているんだ!? 早く皆のところへ戻れ!」
P「それにしても、どこにいるんだ伊織のお父さんは……くそ、もう一度観客席を…」
伊織「お父様は来ないわ」
P「えっ?」ピタッ - 163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:44:48.99ID:MY/dACDu0
- 子猫達「ニャァ~……」
トコトコ…
海坊主「貴様ぁ~!! よくもこの俺をあんな目に……!!」ワナワナ…!
リョウ「だぁから悪かったってば。俺もすっかり油断してたぜ」
香「それで、どうするの、リョウ?」
冴子「ひとまず、本部へ増援の依頼はしたけれど……」
リョウ「冴子。爆発物処理班の出動を要請する場合、どれくらいでここへ来れる?」
冴子「……警視庁へ連絡が届き次第、通常は遅くとも1時間以内には現場に到着するわ」
冴子「でも、今回は残念だけど、処理班の増援は期待できないわね。
最悪、さっき依頼した本部の増援さえ……」
香「そんな、どうして!!」 - 164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:47:07.66ID:MY/dACDu0
- 冴子「これまで爆破事故……いいえ、爆破事件が連続して起きているから、
今日の警備を行うに当たって処理班を待機させるよう、私も本部へ掛け合ったの」
冴子「でも本部は、危険物の確認が無ければ出動は認められない、の一点張り……
よほど強力な圧力が掛かっているのか、爆破事故は無いものとされているみたい」
香「何かあってからじゃ遅いのよ!? どうしてそんな事が許されるのよ!!」
冴子「ごめんなさい。私も、父に直談判をしたのだけれど、聞いてもらえなくて……
今日ほど本部が情けないと思った事は無いわ」
香「あっ、ご……ごめん。冴子さんは何も悪くないのよね」
リョウ「結局、俺達でやるしかないって事か」
リョウ「伊織ちゃんのお父さんの身まで狙われている中、こんな事まで起きるとはなぁ」
タタタ…
P「冴羽さん! 冴羽さん、伊織のお父さんが……!」
リョウ「ん? おぉ、プロデューサーさん」
伊織「うぇっ!? こ、この男が海坊主。で、でかい……」
海坊主「………………」ズゥーン…
香「伊織ちゃん! どうしてここに!?」
伊織「そ、そんな事より、雪歩! 雪歩が悪そうなヤツらに……!」 - 165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:49:20.90ID:MY/dACDu0
- リョウ「伊織ちゃんのお父さんは、新堂さんにチケットをあげて自分は来ない、と」
香「そ、そんな……そう」
伊織「……とにかく、私のお父様の事はもう心配しなくていいわ」
冴子「そうね。それだけは不幸中の幸いと言えるわ」
リョウ(……しかし、なぜ伊織ちゃんがさらわれていないんだ?)
香「で、でも、961プロってそんなに影響力のある事務所なの?
そこまで警察の行動を制限させるだなんて……」
リョウ「おい海坊主。お前の依頼主さんに何とか言ってやれないのかよ」
海坊主「あの男が裏で何をしているのかなど、俺が知る由も無い」
リョウ「ちぇっ、唐変木め。
お前が起こした騒ぎだって、黒井社長が握り潰してきたんだろうが」
海坊主「さっき現れた連中は、俺の知り合いでは無かった。
それどころか、俺も襲われかけた」
伊織「何ですって?」
リョウ「連中が961とは違う組織なのか、あるいは961が新たに雇ったヤツらなのか、
考えるのはこの際後回しだ」
リョウ「ライブが始まるまで、そろそろあと30分……
連れてかれたっていうアイドルの子達を、さっさと助け出さなくちゃな」 - 166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:52:08.28ID:MY/dACDu0
- 香「でもどうするっていうのよ。
皆の居場所も、連中の勢力も、爆弾の場所も、何も分からないのよ?」
リョウ「ふっ……ガラケーすら使いこなせん機械オンチのお前には分かるまい、香。
この文明の利器、スマートホンの真の使い道をな」スチャッ
香「はぁ?」
ピコン! ピコン! …
冴子「これは……発信機?」
リョウ「そう。香の服に付けている機器と同じものを、こっそり皆の服にも付けていた」
リョウ「機器からソナーのような音波も出しているから、
彼女達の周囲に何があるか、どれだけ人が立っているのかもおおよそ分かるんだ」
伊織「一歩間違えれば犯罪じゃない? これ」
リョウ「そう言うな。どれどれ……」
リョウ「ふむ……白のアイコンが雪歩ちゃんだ。
それで、黄色と紫と、青のアイコンも、この765プロのテントから離れている」
P「黄色が亜美か真美のどちらかは分かりませんが……
あずささんと千早も犯人グループにさらわれている、って事ですか?」
リョウ「あぁそうだ」 - 167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:53:32.78ID:MY/dACDu0
- 香「……そう、分かったわ、ありがとう!」ピッ!
香「リョウ、律子さんに確認したわ!
やっぱり真美ちゃんとあずささん、千早ちゃんもいないって!」
伊織「そんな、4人もさらわれるなんて……!」
冴子「悠長に一人ずつ助けに行く時間は無いわ。
分担を決めて、各アイドルに分かれて助けに行きましょう」
P「そ、そうですね! お願いします」
香「えぇと4人だから、リョウ、冴子さん、海坊主……」
海坊主「………………」
リョウ「この状況で、あともう一人戦力になれそうなのは……」
P「えっ、な、何で皆俺を見てるんですか?」 - 168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:55:30.63ID:MY/dACDu0
- リョウ「俺はあずさちゃんを助けに行くから、皆は他の子達を頼むぞ」ダッ!
冴子「待って、リョウ」
リョウ「むっ?」ピタッ
冴子「この紫のアイコン……良く見たら、周囲の人の反応が少ないわ」
海坊主「それだけ、彼女に付いている連中の数も少ないという事か」
香「もし、プロデューサーさんにもアイドルの子達を助けに行かせるなら、
あずささんの下へ行かせた方がリスクは少ないわよね?」
リョウ「う、うぐぐ……」
P「ちょ、ちょっと待ってください。俺本当にそんな事でき…」
伊織「もう時間が無いわ! お願いよ、プロデューサー!」
P「えぇっ!?」
海坊主「俺の銃を一つ貸してやる。弾は無いが、ハッタリくらいにはなるだろう」ズシッ
リョウ「ぐぅ~……あぁもうしょうがない! 俺のもっこり分、アンタに譲るぜ!」
冴子「危なくなったらすぐに連絡を。
私は、彼女から比較的近い、如月千早さんの所へ行くわ」
香「アタシも一緒について行くわ! 頑張りましょう、プロデューサーさん!!」グイッ! - 169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)21:57:04.06ID:MY/dACDu0
- P「や、やだあぁぁぁぁぁっ!!!」
タタタ…
冴子「……ちょっと気の毒だったかしら」
リョウ「余計な心配してる暇は無い。俺は真美ちゃん、お前は雪歩ちゃんだ。行くぞ」
海坊主「ふん」
伊織「さ、冴羽リョウ……!」
リョウ「ん?」
伊織「新堂から聞いたわ……あんたがシティーハンターっていう、凄いスイーパーだって」
伊織「今まで、全然そんな事信じてこなかったけど……
皆を助けるためには、あんたの事を信じるしか無いって、今は思うの」
伊織「勝手でごめんなさい、だけど……」
伊織「皆を助けて、お願い!」
リョウ「………………」フッ - 170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:00:03.42ID:MY/dACDu0
- スッ…
伊織「? えっ……」
リョウ「裏の世界で生きてきた俺には、煌びやかなアイドルの世界なんて分からない」
リョウ「でも、君の事は分かる。伊織ちゃん……
心根の優しい君が、本当は何のためにアイドルをしているのかくらいはね」
伊織「私が……?」
リョウ「新堂さんから聞いた」
リョウ「そのシャルルちゃん、君が小さい時に、お父さんからもらったものなんだってな」
伊織「!」
リョウ「果汁100%のオレンジジュースもそう。
お父さんが好きなものを自分も飲みたい、ってワガママ言ったのが始まりだって」
リョウ「トップアイドルを目指すのは、お父さんを見返してやりたいんじゃない」
リョウ「大好きなお父さんに、キラキラに輝く自分を見て欲しいからだ」
リョウ「もしお父さんが嫌いなら、シャルルちゃんやオレンジジュースに拘るはずが無い」
リョウ「全部、お父さんのためだ。君の行動は全部、ね」ニコッ - 171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:02:10.10ID:MY/dACDu0
- 伊織「…………お父様」
リョウ「俺達はこれから、会場の外で賑やかにしている連中を黙らせてくる」
リョウ「会場を盛り上げるのは、君達の仕事だ。頼んだぜ」
伊織「…………うん」コクッ
リョウ「よし、行くぞ」
海坊主「ふん、お前に言われるまでも無い」
冴子「あら、珍しく乗り気ね。ひょっとして、雪歩ちゃんがお気に入りなの?」
海坊主「ば、馬鹿者っ!! そんなはずがあるか!!」
リョウ「へぇ~、お前にそんな趣味があったとはねぇ」
タタタ…
伊織「……シャルル、そうなの?」
伊織「私は、お父様の事を、見返したいって……いつから、私は……」
タタタ…
新堂「伊織お嬢様~」 - 172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:03:48.65ID:MY/dACDu0
- 伊織「新堂!? どうしたの、こんな時に」
新堂「先ほどお渡しできなかった、オレンジジュースでございます」スッ
伊織「そんな、別に良かったのに……」
新堂「いいえ、この新堂、伊織お嬢様に釈明せねばならない事がございます」
伊織「えっ、釈明?」
新堂「ご主人様は、会場にお越しになっておられます」
伊織「…………えっ」 - 173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:08:26.31ID:MY/dACDu0
- 伊織「そ、そんな……おかしいじゃない!
だって、私がお父様にあげたチケットは、新堂がさっき持って…!」
新堂「えぇ、この通り」スッ
新堂「信じられないと仰られるのであれば、こちらの画面を」ヴィン…
伊織「何これ、モニター? 観客席の…………!!」
伊織「うそ…………お父様……」
新堂「なぜ、ご主人様はお嬢様からのチケットを必要無いと仰られたのか……」
新堂「既に買っておられたのです。それも、チケット発売日の早朝に」ニコッ
………………
……………………… - 174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:11:11.50ID:MY/dACDu0
- ………………………
………………
「失礼致します。お呼びでしょうか、ご主人様」
「は? ……インターネットでのチケットの買い方、でございますか?」
「お言葉ではございますがご主人様、そのような雑務は私めにお申し付けいただければ…」
「……おぉ、これは…………なるほど、左様でございますね」
「しかし、わざわざこのような事をしなくとも、運営会社に手配をして良いチケットを…」
「なるほど……お嬢様に気取られぬよう、一般に紛れてチケットを買い、鑑賞されたいと」
「ふふっ……あぁいえ、申し訳ございません」
「かしこまりました。それでは、この新堂が操作のご説明を致しましょう」
「まず、ご覧いただいている画面の右下を……」
………………
……………………… - 175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:16:19.78ID:MY/dACDu0
- ………………………
………………
伊織「そんな…………あの、お父様が……?」
新堂「本日の会議は、予定を2時間も繰り上げて、早朝から行ったとの事です」
新堂「全ては、伊織お嬢様がお出になられるこのフェスのために。
ご主人様も、普段は下げない頭を下げてやったと、どこか誇らしげでございました」
伊織「!!」
新堂「チケットは、当日観賞し終わった後すぐに返すよう、
ご主人様より仰せつかっております」
新堂「ご自分で買われたチケットと、伊織お嬢様からもらったチケット。
ご主人様は、二つとも手元に置いておきたいのでしょう」
新堂「チケットをいただきはしましたが、この新堂、
職務を放棄して鑑賞するわけにはまいりませんと、僭越ながら申し上げた所……」
新堂「ご主人様は、私に休暇を命じました。
伊織お嬢様がステージに上がる、その間だけ」
新堂「恥ずかしながら、この新堂、先ほどから年甲斐も無く興奮を抑えきれずにおります」
伊織「お父様が、このフェスを……楽しみに……?」 - 176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:18:44.19ID:MY/dACDu0
- 新堂「ご主人様は、お嬢様に期待をしていないのではございません」
新堂「授けるべき学を、お嬢様は既に持っておられたのです」
新堂「水瀬家が持つべき素養……帝王として他者を導く器を、生まれながらにして」
新堂「水瀬家きっての逸材をどのように育てるべきか、頭を悩ませていた折……
お嬢様の口から、アイドルを志すと聞いた時のご主人様は、大層嬉しそうでした」
新堂「進むべき道を、娘自身が見つけてきたと……
それも、まさしく人を輝かせ、導く存在をあの子は目指したのだと、ね」
伊織「! 人を、輝かせる……?」
新堂「素直になれない点において、今のお嬢様はまるでご主人様の生き写しでございます」
新堂「小さい頃は、とても素直であらせられた事を、よく覚えておるのですが……」
新堂「やはり、子は親に似るというのが常なのでしょうな」ニコッ
伊織「……………………」
………………
……………………… - 177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:19:54.65ID:MY/dACDu0
- ………………………
………………
「うわあぁぁぁぁん!!」
「しんどうー、おへやにへんなのがいるー!!」
「ピンクのうさぎみたいなのいるー!! こわいよー!!」
「えっ? おとうさまがくれた、あたらしいおともだち?」
「ならだいすき! おとうさまがくれたものなら、こわくないもん!」
「ねぇねぇ、このこ、おなまえなんていうの、しんどう?」
「すきななまえにしていいんだって! やったぁ!」
「シャルルちゃんにする! このまえならったフランスすき!」
「シャルルちゃん、よろしくね! いっしょにおそといこう?」
………………
……………………… - 178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:21:19.14ID:MY/dACDu0
- ………………………
………………
「おとうさまー、なにのんでるのー?」
「えー、オレンジって、みかんのこと? おのみものになっちゃうの?」
「しんどうー! しんどうー、てつだってー!」
「オレンジジュースつくるの! みかんもっといっぱいちょうだい!」
「うわあぁぁぁぁん!! おだいどころよごしてないもん!」
「おとうさまとおなじののみたいんだもん! いおりちゃん、なにもわるくないもん!」
「えっ? もうあるの?」
「みかんがいっぱいのあじする! いおりちゃんもこれだいすき、おとうさまー!!」
………………
……………………… - 179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:22:51.08ID:MY/dACDu0
- ………………………
………………
伊織「……………………」
新堂「お嬢様、オレンジジュースを」スッ
伊織「………………」
スッ チュー…
伊織「…………美味しいわ……すごく美味しい」
新堂「ありがとうございます」ペコリ
伊織「新堂」
新堂「何でございしょう」
伊織「もう休暇を取っていいわ。お父様がいる観客席へ行ってあげて」スタスタ…
新堂「かしこまりました」ニコッ - 180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:25:13.32ID:MY/dACDu0
- ~765プロ側テント~
律子「あぁもう……何でこんな事に……!」ソワソワ…
高木「ま、まぁまぁ律子君。焦っていても水瀬君達が戻ってくるわけでは…」
律子「これが落ち着いていられますか!? 無事が分からないんですよ、あの子達の!!」
高木「うっ、す、すまない……」
春香「千早ちゃん……」グスッ…
亜美「うわあぁぁぁん! 真美ぃ、あずさお姉ちゃぁん……!」ポロポロ…
真「み、皆! 気をしっかり持とうよ! 雪歩だって、きっと冴羽さん達が……!」
やよい「そんな事言われてもぉ……」
響「うわーん! 貴音ぇ、どうにかなんないのかー!?」
貴音「何も状況が見えず、どうにもできない事が、こんなにも悔しいとは……」
スタスタ…
美希「! あっ、デコちゃん!!」
律子「伊織っ!?」
伊織「皆、心配をかけてごめんなさい」 - 181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:28:08.01ID:MY/dACDu0
- 伊織「皆に、話さなきゃいけない事があるわ」
伊織「雪歩とあずさ、真美と千早は、今、何者かにさらわれているの」
一同「!?」ザワッ…
伊織「もし、美希達のライブが終わるまでの間に助ける事ができなかった場合、
会場のどこかに設置された爆弾を爆発させる、と犯人は言っているそうよ」
律子「そ、そんなっ!! すぐに警察に連絡を…!」
伊織「警察は既にいるわ。それに、これ以上の増援は期待できない」
真「えっ!?」
伊織「はっきり言って、状況はあまり良くないと思う」
伊織「でも、今はあの男……冴羽リョウ達が必死に頑張って、皆を助け出し、
爆破を止めようとしているわ」
伊織「アイツは、会場を盛り上げるのは私達の仕事だって、そう言ってた。だから……」
伊織「私達には、私達でできる事をしましょう!」
伊織「会場に来てくれたお客さん達を、決して不安がらせないような……
むしろ元気にさせるような、そんなライブにしなくちゃ!」
伊織「アイツと一番一緒にいた私を信じて!
必ずアンコールまでに雪歩達を連れて帰ってくるわ! 爆弾だって……!」 - 182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:29:39.52ID:MY/dACDu0
- 伊織「きっと……!」
貴音「伊織」
伊織「……!」
貴音「貴女の真っ直ぐな思い、しかと受け止めました」
貴音「私達は、皆がここへ戻ってくる事を信じ、必ず961プロに勝ちます」
響「ぜぇーったいに勝つぞ、美希、貴音!! なんくるないさー!!」
美希「うん! ミキ、デコちゃんももっこりのおじさんも信じてるの!!」
律子「そうね……よし、それじゃあフェアリーが出る前に、ちょっとした余興でもやる?」
亜美「はいはーい! それじゃあ亜美とはるるんで、
あみまみちゃんならぬ“あみあまみちゃん”をやるよーん!」ビシッ!
春香「うえぇっ!? 私ああいうシュールなの自信無いよぅ!」
やよい「うっうー! それじゃあ私、客席からばばーんって合いの手入れちゃいますー!」
真「良いね、やよい! ボクの乙女パワーもガツーンって上乗せしちゃうぞー!!」ガッツ!
伊織「皆……ありがとう!」 - 183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:31:52.49ID:MY/dACDu0
- ~千早グループ~
千早「………………」
男A「へっへっへ、悪いねぇ千早ちゃん」
男B「恨みは無いんだが、ボスから金をもらえるんでな。少しの間大人しくしててくれや」
男C「ライブが終わるまでアイドルを拘束してりゃ良いだなんて、ボロい商売だぜ、ひひ」
千早「一体、何が目的なんですか、あなた達は」
男A「目的なんぞねぇ。金がもらえるから俺達は手を組んだだけだ」
男A「おたくらアイドルだって、所詮はファンから金をもらうための職業だろう?」
千早「違います」
千早「以前まで、確かに私はアイドルなんて、
歌手になるための腰掛け程度にしか思っていませんでした」
千早「でも、今は……私は、皆とアイドルをやれて、良かったと思う。
アイドルとしての自分に、プライドを持つ事ができました」
千早「人としての誇りの欠片も無いあなた達に、私達の火を消す事なんてできない!」
男B「てめぇ、生意気な事を……!」
冴子「良く言ったわ、如月千早さん」
千早「えっ?」 - 184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:33:43.30ID:MY/dACDu0
- シュッ! バキッ!!
男B「ぐわああぁっ!!」ドサッ!
男C「何モンだてめぇっ!!」
冴子「本部は腰抜けばかりかも知れないけれど、
私も、この国の警察官でいられる事を誇りに思うわ」
冴子「あなた達のような人間から、罪も無い人達を守れるもの」
男A「け、警官っ!?」
男C「聞いてないぜ! 警察は来ないんじゃなかったのかよ!!」
冴子「普通の警察はね。生憎だけど、私は一味違うの」チャキッ
シュバァッ!!
男A・C「ぎゃああぁぁぁっ!!」ビシビシッ!! - 185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:36:28.62ID:MY/dACDu0
- 千早「あ……ありがとうございました」
冴子「礼には及ばないわ。この男達が言っていた事で、何か気になった事は無い?」
千早「……この人達は、ただ私をここに連れ去る事だけが目的のようでした」
千早「約束の時間が来るまで……何もせず、ただ見張るだけだ、って」
千早「そうすれば、ボスと呼ばれる人からお金ももらえるし、
私も解放するつもりだったようです」
冴子「そう。ありがとう」
冴子(つまり、彼らが爆弾を起爆させる訳ではない……ボスという人物が?)
冴子(救出さえすれば爆破は起きない、という保証も無いけれど……
とにかく今は、捕まったアイドル達を救出していくしか無いわね)
千早「それにしても……くっ!」
千早(刑事なのに、とは言わないけれど……何て大きさなの……!)
冴子「? ……とりあえず、この場はもう大丈夫そうね」
冴子「私は三浦あずささんの元へ行くから、あなたは急いで765プロのテントへ」
千早「えっ? あ、はいっ!」 - 186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:38:09.23ID:MY/dACDu0
- ~雪歩グループ~
雪歩「ひ、ひぃぃぃぃんっ!!」
男達「ひえぇぇぇっ、助けてぇっ!!」
バキッ! ゴキッ!
男達「」ピクピク…
海坊主「け、ケガは無いか……?」スッ
雪歩「ひっ……!」ビクッ!
海坊主「ぐっ……す、スマン」
雪歩「いえ、あ、あの……」
雪歩「私こそ、すみません。二度も助けてもらったのに……失礼、でしたよね」
雪歩「助けてくれて、ありがとうございました」ペコリ
海坊主「……ふ、ふん! また穴を掘られては迷惑だと思っただけだ」プイッ! - 187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:40:12.41ID:MY/dACDu0
- 男「ニャァ~ン♪」
海坊主「ひぃっ!?」ビクッ!
雪歩「あっ!」
男「へへっ、聞いた通りだぜ! 猫の声真似すら苦手とはな!」
男「全員倒したと思って油断したな、スキ有り!」ジャキッ!
海坊主「ヌゥ……!!」
雪歩「え、えーいっ!!」グアァッ!
コォーン!!
男「おほっ!?」
男「ば、馬鹿な……スコップ…………」フラッ…
バタッ
雪歩「ふ、ふえぁぁ…………」ヘタッ…
海坊主「……上出来だ」 - 188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:42:19.67ID:MY/dACDu0
- ~真美グループ~
真美「あっ、サイバーおじちゃん!!」
リョウ「おっ、何だ、真美ちゃんだけか?」キョロキョロ
真美「来ちゃ、来ちゃダメ!! 後ろが危ないってば!!」
ジャキッ
真美「あぁ……!」
男A「音に聞こえたシティーハンターとやらが、こうも簡単に背後を取られるとはな」
男B「所詮、コイツもアイドル相手に鼻の下を伸ばしたオジンって事さ」
男C「ははは、まったくお笑いだぜ」
リョウ「……消えろ」
男A「あぁん? 何か言ったか?」
リョウ「消えろと言ったんだ。後悔しないうちにな」
男B「てめぇ……この状況が分かってねぇのか!」
男C「後悔しながら消えるのはてめぇの方だ! 死ねぇっ!!」グッ! - 189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:44:19.22ID:MY/dACDu0
- カチンッ
男C「!? なっ、あれ……!?」
リョウ「フッ……最近の悪党は、銃の重さも知らないのか?」スッ
つ 弾倉
男C「なっ!? 馬鹿な、いつの間に!!」
バキッ!!
男A「うぶっ!」
ヒュッ パシッ! ガシャッ!
ジャキッ!
男B「あっ! うっ……!」ビタァ!
リョウ「銃ってのは、こうやって扱うんだ」
男C「うぐぐ……!」
リョウ「アイドルの前で粋がりたい気持ちも分かるが、相手を選ぶべきだったな」
リョウ「もう一度言う。消えろ」 - 190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:46:00.42ID:MY/dACDu0
- 男達「ちきしょー! 覚えてろー!!」
タタタ…
真美「うえーん、おじちゃぁん!! 怖かったよぅ……!!」ボロボロ…
リョウ「おーよしよし、そうだな。あと俺はおじちゃんじゃなくてお兄さん」ナデナデ
ピコン! ピコン! …
リョウ「よし……あずささん以外のアイドルは、皆765プロのテントに戻ったようだ」
真美「ほ、本当!? 良かったぁ!」ホッ
リョウ「そっちはどうだ、香? あずささんの方は」
『それがねぇ、どうにも様子がおかしいのよ』
リョウ「何ぃ?」 - 191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:48:58.51ID:MY/dACDu0
- ~あずさグループ~
あずさ「えぇと、す、すみません。私、そろそろテントに戻らないと……」
男A「そこを何とか! このバナナクレープを食べる間だけ、僕と一緒に!」サッ
男B「いやいや、そんなものよりも美味しいタピオカジュースはどうですか!?」ササッ
あずさ「あら~……困ったわねぇ」
香「犯人グループらしいヤワな男達が、あずささんを前に目が完璧ハートマークで……」
P「よ、良かった……色々な意味で良かったぁ」ホッ…
『それなら心配無さそうだな。その場は任せるぞ』
香「えぇ、任せて!」
香「さっ、それじゃあさっさとあずささんを助けに行くわよ、プロデューサーさん!」
P「は、はひっ!?」
ダダダ…
香「こらー、そこの男達ー! あずささんのそばから離れなさーい!!」 - 192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:51:19.83ID:MY/dACDu0
- あずさ「あら~? プロデューサーさんと香さん」フリフリ
男A「あん? げっ、男女二人組!! コイツらがひょっとして、シティーハンター!?」
男B「マジかよ!! まさか一番弱い俺達の所に来るなんて!!」
P「て、手を上げろぉっ!!」ガッ!
P「あいったぁっ!! 撃鉄に指の肉が挟まったぁっ!!」
香「えぇーっ!?」
男A「何でぇ、大した事ねぇでやんの!」バキッ
P「おうっ」バタッ
香「やられた!? 弱いっ!!」
男B「やった、シティーハンターを倒したぞ! 女の方もやっちまえぇ!!」ダッ!
ドゴオォォォンッ!!! 【100t】
男達「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
香「リョウ以外の男に、これを使う日が来るとは……!」
あずさ「あ、あの~……いつも、どこに仕舞っているんですか~?」 - 193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:53:58.14ID:MY/dACDu0
- ~765プロ側テント~
律子「! ……そうですか、良かった! ありがとうございます!」
ピッ!
律子「香さんから、今あずささんの救出も終わったって!」
一同「やったぁー!!」バンザーイ!
伊織「…………!!」ホッ!
春香「さすがは冴羽さん達だねっ、伊織!」ニコッ
伊織「当然よ、この伊織ちゃんのボディーガードだもの! にひひっ♪」
スタッフ「すみませーん! 765プロさんそろそろご準備お願いしまーす!」
律子「いよいよ出番ね……準備はいい、皆!?」
美希「待ちくたびれたの!」
響「卑怯な手を使う961プロなんかに負けないさー!!」
貴音「いざ、参りましょう。決戦のステージです」 - 194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)22:59:40.97ID:MY/dACDu0
- 亜美「とその前に、はるるん前座行くYO!」
春香「あぁぁ! そういえばそうだった!」
真「打ち合わせ通りにやるから、しっかりね! 亜美、春香!」
やよい「皆さん、今こそ命を燃やしましょー!!」ピョン!
伊織「どこで覚えるのよ、やよい、そんな言葉」
ガヤガヤ…
千早「えっ、何をする気なの、皆?」
雪歩「さ、さぁ……」
真美「うあうあー! すっごく楽しそうなのに、完全にカマの外だYO!」
律子「残りの懸案は、犯人の言う爆弾の処理」
律子「あずささんは香さんが連れてきて、他の子達が無事に帰ってきた今、
冴羽さん達は引き続き爆弾の捜索をするそうです、社長」
高木「ウム、そうか……」
高木「何事も、起きなければ良いのだがね……」 - 195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:01:21.34ID:MY/dACDu0
- ~会場周辺~
リョウ「……チッ、ここにも無いか」ガサガサ…
『東側を探したけれど、それらしい不審物は無かったわ。西側はどう?』
『無い』
ピッ!
リョウ「くそっ、どこにあるんだ……いや、本当にあるのか?」ガサゴソ…
ヴィー!… ヴィー!… 『アーイヨー キーエナイデ モーオ-ー ウウー♪』
リョウ「おっ、誰か見つけたのかな」スチャッ
リョウ「! …………」
ピッ!
リョウ「……アイドルは全員救出した。ゲームは俺達の勝ちのはずだな」
『もう4人を救出したんだネ。さすがの早さダ、驚いたヨ』
リョウ(機械音声……?) - 196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:03:15.91ID:MY/dACDu0
- 『しかし、ひょっとしたラ、キミは勘違いをしテいるんじゃないかナ』
『拘束されたアイドル全員ヲ助け出した気でいるようだガ……違うんだナ、実は』
リョウ「!?」
『おそらく、残りの子達ハ、自分が身柄を拘束されテいる事にさエ気づいていなイ』
『そして、時が来れバ、彼女達のステージ……
プロジェクト・フェアリーのオーバーマスターが終わっタ瞬間……』
『めでたくステージは“終了”ダ』
『音源を止めても無駄ダ。状況を問わズ、ステージが終われば起爆するのだからナ』
プツッ!
リョウ「………………」スクッ
「あみあまみちゃん、れぼりゅーしょん」
春香「生きてるってー なーんーだーろー♪」
亜美「生きてるってー なーあーにっ♪」
ワハハハハハ…! - 197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:04:55.15ID:MY/dACDu0
- 春香「毎日毎日同じ事の繰り返しで、生きてる気が、しな…!」
<そんな事無いよ、春香ぁー!!
亜美「ちょ、ちょっとまこちん! 合いの手入れるタイミング早いYO!!」
春香「亜美! 亜美もそれ言わないっ!! しぃーっ!!」
<うっうー! 春香さん、生きてますー!!
伊織「やよいももういいってば!!」バッ
春香「えぇーっ、伊織の出番もっと後じゃなかったっけ!?」
亜美「うあうあー!! まさかのグダグダ展開だよー!!」
ドッ!! ワハハハハハハハハハ…!!
律子「というわけで、そんな賑やかな765プロの中でも一際個性的なこの三人!」
律子「プロジェクト・フェアリーで、『オーバーマスター』をお聞きください!!
どうぞ!!」
~~♪
ワアァァァァァァァァァァァァァッ!!!
リョウ「…………!!」 - 198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:07:35.04ID:MY/dACDu0
- ズルズル…
P「うーん、ムニャムニャ……」
香「よいしょっと……ったくプロデューサーさん、すっかり伸びちゃって」ズルズル…
あずさ「うふふ。お仕事中は、とっても頼りになるんですよ~」
香「それはそうなんでしょうけど……うんしょっと」ズルズル…
ピロリロリロ!… ピロリロリロ!…
香「ん? ……リョウだ」ピッ!
香「もしもし?」
『香、今すぐ765プロのステージに向かってくれ!!』
香「えっ!?」
『爆弾の位置が分かった! ステージだ!』
『曲の音源が終わった瞬間、起爆する爆弾がある可能性が高い!!』
『海坊主と冴子には、連絡がつかないんだ! お前が音声機器の周辺を探してくれ!!』
香「わ、分かったわ! でも、もう曲が始まっているのよ!?」
香「あの曲が終わるまであと4分も無いわ! もし見つけたとしても、解除が…!」 - 199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:09:01.17ID:MY/dACDu0
- リョウ「解除するんだ、何としても」
リョウ「俺達は、決して依頼を途中で放り投げるような事はしてこなかった」
香「!」
リョウ「あの子達は、俺達を信じている」
リョウ「俺達も信じるんだ。あの子達が信じてくれる、俺達自身を」
リョウ「忘れるなよ。俺とお前、二人コンビでシティーハンターだってことを」
香「……当然よ!! 任せなさい!!」ダッ!
あずさ「あら~?」
香「ごめん、あずささん! 先に行ってるから!!」
Thrillのない愛なんて
興味あるわけないじゃない
分かんないかな~♪
ワアアアアァァァァァァァァァ!!! - 200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:11:16.69ID:MY/dACDu0
- あずさ「あらあら、香さん、行っちゃった……」
あずさ「どうしましょう……私一人で、プロデューサーさんをおんぶできないし」
あずさ「う~ん、困ったわねぇ」
ガチャッ
あずさ「えっ……」
???「静かに。動かないで」
???「大人しくさえしてくれれば、悪いようにはしない」 - 201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:12:56.50ID:MY/dACDu0
- ~765プロ側テント~
律子「そこで、そう、指先! ……よしっ!」グッ!
律子「いい感じよ、三人とも……すごく、集中できてる……!」
タタタ…!
香「律子さんっ、皆っ!!」
伊織「香っ!? あずさはどうしたの?」
香「後から来るわ! それより、音源はどこ!?」
春香「お、音源ですか? えぇと、確かあっちの方に……」
香「ありがとう!」ダッ!
真「か、香さーん。何かあったんですか?」
香「音源からステージの下へ、変なコードが伸びてる……!」ガサゴソ…
香「………………!」
香「見つけた……リハーサルの時には無かったはずなのに、なんで……!!」 - 202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:16:34.02ID:MY/dACDu0
- 香「どうしよう。もう時間が無いわ……!」
香「繋がれたコードは、ひぃ、ふぅ、みぃ……5本!?」
香「そ、そうだ! いっそのこと、音源を止めれば……!」
律子「香さん、どうしたんですか!?」
香「律子さん、今すぐ曲を止めて!!」
律子「えぇっ!? でも、やっとここまで良い調子でこれ…!!」
香「爆弾が爆発するのよ!! 悪いけど、もう手段が無いわ!!」
一同「!!?」
ザッ…!
リョウ「止めるな!」
香「リョウっ!?」
伊織「冴羽リョウ!!」
リョウ「犯人の言い分だと、曲を止めても爆発する」
リョウ「コードを切って、起爆装置を解除するしか方法は無い」
香「何ですって!? で、でもコードって、一体どれを……!!」 - 203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:19:30.95ID:MY/dACDu0
- ダダダダッ!!
ジャキッ! ジャキッ!
スタッフ達「動くなっ!!」
一同「!?」
スタッフA「ちょいと頼まれ事をされていてな。全員、床に手を伏せてもらおうか」
律子「ちょ、ちょっと! 一体何のマネですか、音声さん達!!」
スタッフB「黙ってろ!! 風穴空けられてぇか!!」ジャキッ!
春香「ひぃっ!?」ビクッ!
リョウ「ほう……たった6人のチンピラが、玩具を手に何をしようっていうんだ?」
スタッフC「お、玩具だとぉ!? てめぇ、コイツを見ても寝言を言え…!」ジャキッ!
ガァァンッ!!
バアンッ!!
スタッフC「う、うわあっ!?」
真「ス、スタッフさんの持っていた銃が、急に爆発した!?」 - 204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:21:15.97ID:MY/dACDu0
- リョウ「本物も、使いこなせなきゃ玩具も同然さ」スチャッ
スタッフD「貴様ぁっ!! 調子に乗ってんじゃねぇっ!!」ジャキッ!
ガァン!ッ ガァンッ! ガァンッ! ガァンッ! ガァァンッ!!
スタッフE「うっ!?」バァンッ!
スタッフF「うおぉぅっ!?」バァンッ!
スタッフA「があぁっ!!」バァンッ!
律子「な、何が起こったの!?」
香「リョウの撃った弾がヤツらの銃口に入って、銃が暴発したのよ」
春香「えぇーっ、何それぇっ!?」
伊織「ワンホールショット……これが…………!」
伊織「すごい……!!」
リョウ「銃なんてのは、素人が手を出して良い代物じゃないんだ」
リョウ「俺のようなプロを相手にするのなら、なおさらな」 - 205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:22:56.53ID:MY/dACDu0
- スタッフB「ちきしょー!! だが、どのみち爆弾は解除できずに終わりだ!!」
スタッフC「逃げるんなら今のうちだぜ、ハッハー!!」ダッ
ダダダ…
リョウ「起爆するまでの時間稼ぎ、にしてはあっけないヤツらだぜ」
Gameと割り切るヤツは
女の扱い上手いのよ
覚えておけば?
Come Again!
ワアアアァァァァァァァァァァァァッ!!!
香「二番が終わった……もう1分半も無いわ!」
律子「どうなってるんですか!? オーバーマスターと何が関連して……!」
リョウ「曲が終わった瞬間、あそこにある爆弾が爆発する。曲を止めてもな」
真「えっ!?」 - 206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:25:31.63ID:MY/dACDu0
- 真美「そんなぁ!! そんなのどうすりゃいいのさー!!」
やよい「わーん! 怖すぎますー!!」ビエーン!
雪歩「こんな、ひどい事を……!!」ポロポロ…
千早「くっ……もう、何をしても無駄だと言うの……!?」
リョウ「いいや、まだ終わりじゃないさ」
亜美「えっ?」
リョウ「香。コードの色は何がある?」
香「えぇと……黒、白、青……それと、赤とピンクよ!」
リョウ「分かった」
リョウ「皆、ステージ衣装には着替えてあるな」
リョウ「真ちゃん」
真「えっ?」
リョウ「それと、雪歩ちゃんと千早ちゃん、春香ちゃん……伊織ちゃんもここへ」
伊織「な、何? どうするの?」
ゾロゾロ… - 207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:27:12.56ID:MY/dACDu0
- リョウ「君達の力が必要だ」
リョウ「皆、俺の事を信じて目を瞑り、少し上を向いてくれ」
雪歩「こ、こうですか?」クイッ
千早「何をするつもりなのかしら……」
春香「ここは冴羽さんの言う通りにしよう、皆!」ギュッ!
香「リョウ、何をしているの!? もう時間が無いわ!!」
リョウ「分かっている」
律子「さ、冴羽さん……!」ゴクリ…
リョウ「土壇場で運を天に任せるほど、俺は自信家じゃない」
リョウ「こういう時は、こうするのさ……」スッ
リョウ「ふんっ!」ババババッ!
ファサッ フワァッ… - 208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:29:24.13ID:MY/dACDu0
- 千早「……!?」
春香「えっ」
真「うえぇっ!?」
雪歩「ひっ、やぁっ……!?」
伊織「な、何すんのよっ!! この変態、ド変態、変態大人っ!!」バチーン!
リョウ「ッ…………春香ちゃんだけ、赤……!」
リョウ「香っ!! もっこりレッドだっ!!」
香「はぁっ!?」
リョウ「いいから赤以外を全部切れ!!」
香「ちょ、ちょっと馬鹿、馬鹿っ!! 本当にそんな事で…!!」
リョウ「俺のもっこりに間違いは無い」
リョウ「俺を信じろ」
香「~~!!! え~い、ままよっ!!」グイィッ!
律子「香さんっ!!」
ブチンッ!! - 209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:31:28.74ID:MY/dACDu0
- やよい「ひっ……!」
亜美「わっ……!!」
律子「………………?」
真「あ、あれ…………?」
GentleよりWildに
WildよりDangerous
試してみれば?
Good Luck To YOU!
ウオワアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!! パチパチパチ…!!!
律子「し、信じられないわ……」
真美「爆発してない! やった、止まったよ!!」
一同「わあああああああっ!!!」 - 210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:34:49.38ID:MY/dACDu0
- リョウ「フッ……良かったな、皆…」
ドガドガアアァァァァァンッ!!! 【100t】【100t】【100t】【100t】【のヮのt】
リョウ「ぎゃあああぁぁっ!!! 最近の子達って皆ハンマー持ってるのぉ!?」
真「な、何を考えているんですかこんな時にっ!!」
千早「非常識にも程があります!」
香「大体、大抵の女の子は白なのよ! どう考えても確率偏るだろうが!!」
リョウ「違う! 俺は緻密なデータを基にこの方法を選んだんだ!」
伊織「緻密なデータって、どういう意味よ!?」
リョウ「君達の親御さんに許可を取って、部屋を物色させてもらってだな…」
春香「私達の許可も取ってください!! 何でこんな人ウチに入れたの、お母さーん!!」
雪歩「うぅ……は、恥ずかしい……」
律子「こんな人が、この世にいるだなんて……」
律子(私、この先どんなに理屈じゃ考えられない事が起きても、驚かずにいられるわ……) - 211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:37:19.12ID:MY/dACDu0
- コツッ…
高木「……皆、良くぞ無事で」
律子「社長! やりました、もう爆発はしません、皆も無事です!!」
高木「あぁ、知っているとも」
高木「先ほど、フェスの関係者からも知らせがあったよ」
高木「961とのライブ対決……結果は、我々765プロの勝利だ」
高木「聞きたまえ、このアンコールの大合唱を」
アンコール!! アンコール!! アンコール!! …
伊織「やった……本当に、やったのね……!!」ジワァ…!
タタタ…
響「皆ー!! 自分達、勝ったぞー!!」
美希「すっごく楽しいステージだったの!! お客さん、ノリノリだったの!!」
貴音「さぁ、観客がお待ちかねです。皆も早く準備を……はて?」
貴音「三浦あずさの姿が見えませんが……」 - 212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:42:18.40ID:MY/dACDu0
- 亜美「あれ?」
やよい「本当だ、いないです」キョロキョロ
高木「まだ戻って来ていないのだろうか」
リョウ「ヘタな芝居を打つのは、そろそろ止めにしたらどうだ、社長さんよ」
高木「……何の事を言っているのか、分からんが」
リョウ「とぼけても無駄だ」
リョウ「今日、このテントにアンタが来た時、俺はこう言った。
海坊主とのケリを付けるまでが俺の仕事だ、とな」
リョウ「それについて、アンタは何も聞き返しては来なかった。
「そうでしたな」などと、納得しているようでもあった」
リョウ「なぜ、海坊主の事をアンタは知っていたんだ?」
リョウ「俺は今まで、海坊主の事をアンタの前で話した事は一度も無い」
香「!? そ、そう言えば……」
高木「………………」 - 213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:46:36.91ID:MY/dACDu0
- リョウ「海坊主の事を知っているという事は、
アイツが何をしてきたのかを知っているという事だ」
リョウ「聞かせてもらおうか……アンタが961プロとどんな繋がりを持っているのか」
リョウ「なぜ、アイツに伊織ちゃんを襲わせるような真似を認めてきたのかを、な」
伊織「!? …………まさか、社長が……?」
リョウ「最初から、薄々おかしいとは思っていたんだ」
リョウ「殺す気が無い殺し屋に対して護衛を就かせる事に、何の意味があるのかってな」
リョウ「高木社長……アンタが本当に俺に依頼したかったのは、
アイドルのボディーガードとは別にあったんじゃないのか?」
高木「フフッ…………シティーハンター、冴羽リョウ」
高木「どうやら、噂に違わない方のようですな」
高木「そして人が悪い……そこまで見抜いたのなら、私の目的も分かっているだろうに」
律子「も、目的……社長、それは一体……?」
ガチャッ…
リョウ「……ッ!!」ピクッ! - 214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:48:41.59ID:MY/dACDu0
- リョウ「皆、伏せろ!!」バッ!
伊織「えっ? きゃああっ!?」
ダァンッ!!
チュインッ!!
香「リョウ!! 皆、大丈夫!?」
律子「しゃ、社長!」
高木「大丈夫だ、ケガは無い」
真「銃声が、一体どこから…………えっ」
リョウ「…………チッ、そう来るか……」
コツッ…
P「コルト・パイソンは良い銃だ」
P「6連発である事を除けばな」 - 215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:51:00.12ID:MY/dACDu0
- 雪歩「プロデューサー……? あ、あずささん!」
あずさ「うっ、く……」ガチャガチャ…
P「すみません、あずささん。もう少しだけ、このままでいてください」
あずさ「ぷ、プロデューサーさん…………どうして……」
高木「キミ……」
P「高木社長……できれば俺も、こんな事まではしたくありませんでした」
リョウ「……ッ」バッ!
ダァンッ!!
リョウ「ッ!」サッ!
チュインッ!!
香「リョウ!!」
P「妙な真似はしないでもらおう」
P「シティーハンターに銃の腕前で勝つ気などさらさら無いが……」
P「パイソンの再装填をしている間に、そこの爆弾に一発ぶち込むくらい、
その気になれば俺にも出来るんだからな」 - 216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:53:35.05ID:MY/dACDu0
- リョウ「さっきのチンピラは、そのためか」
P「ロクに銃の扱いを知らないゴロツキにだって、あんたの弾を使い切らせる事はできる」
春香「何で……本当に、プロデューサーさんが全部やった事なんですか?」
春香「う、ウソですよね……ねっ?」
P「……竜宮小町のステージリハで、奈落が突然開いた事があったな」
P「あと、伊織の車を付け狙い、警察の野上刑事に捕まった二人組」
P「そして、今日の一件……これらは俺の仕業だ」
一同「!!」
律子「な、何故ですかプロデューサー!! 分かるように説明してください!」
律子「どうして、あなたがこんな事をしなくてはならなかったのかを!」
律子「普段のあなたからしたら、よほどの理由が無い限り、
こんな事しないはずでしょう!?」
P「よほどの理由が無い限り、か……律子らしいなぁ」
P「率直に言おう」
P「高木社長を見返してやりたかった……理由はそれだけだ」 - 218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:56:54.42ID:MY/dACDu0
- やよい「えっ……」
高木「………………」
P「俺は、皆の夢の実現を後押ししていくこの仕事に、やりがいを感じている」
P「だが、やりがいだけじゃ駄目なんだ……
少なくとも俺にとっては、俺の仕事の成果を認めてくれる誰かが必要だった」
P「人って、自分の事を他の誰かに褒めてほしい、認めてもらいたいものなんだ」
P「子供は親に、生徒は先生に、部下は上司に、同じ仲間に……承認欲求というヤツだな」
P「俺は、自分を拾ってくれた社長に褒めてもらいたくて、
765プロでひたすら骨身を削った」
P「営業、レッスン、売り込み、ライブやフェスの企画、運営指示……
勤務中だけじゃない。プライベートだって大いに犠牲にして、仕事の糧にしてきた」
P「アイドルの子達に話を合わせられるよう、女物のファッションやグルメ、
セール品の情報、話題のゲームとか色々なサブカルにだって手当り次第に手を出した」
P「皆が心身共に最高のコンディションで本番を迎えられるよう、出来る事は何でもした」
P「そりゃあ、皆は喜んでくれたし、好意を向けてくれているのも感じた」
P「でも、仕事の成果として、それを一番認めて欲しかったのは……高木社長だったんだ」
P「なのに、褒めるのはいつもアイドルの子達ばかりでな……
高木社長は、俺の方に目を向けてはくれなかった」 - 219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/27(土)23:59:41.73ID:MY/dACDu0
- P「きっと、まだ足りないんだ。
俺が今まで頑張った事なんて、プロデューサーとしてはごく当たり前の事だったんだ」
P「そう考えるようにして、俺はもっともっと仕事に没頭した。
同業者の中で、熱意だけは誰にも負けていない自負を得られるようにもなった」
P「今度のハリウッド研修の話だって、きっと俺が選ばれると思ったんだ」
P「もちろん、律子が相応しくないと言うつもりは無い」
P「でも、これまでの積み重ねを振り返れば、俺が選ばれないはずが無いと、そう思った」
P「だが、高木社長は俺ではなく、律子を選んだ」
P「俺ではなく、律子に期待の目を向けていたんだ、社長は!」
律子「…………!」
高木「………………」
P「悔しかったんですよ、社長」
P「こんなに頑張って、結果だってそこそこ残しているのに、
それを褒めてもらえないのは辛かったんです」
P「だから……俺は、考えを改めた」
P「プロデューサーとしての実力を認めてもらうのが望めないのなら、
いっそ765プロとは違う勢力となって、高木社長を見返してやるんだと」 - 220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:04:01.98ID:lATLj4IF0
- P「あらゆる面で、常に社長の765プロより優位に立ってやろう、ってな……
ははっ、黒井社長みたいだな」
香「そ、それが伊織ちゃんや、今日皆を危険な目に遭わせた事と、何の関係があるの!?」
P「最初、伊織をステージの奈落に落とそうとしたのは、手っ取り早く金を得るためだ」
P「財閥のご息女の身に危険があったと知られれば、その報復はさぞ恐ろしいだろう……
そうイベント会社に内々に脅しをかけ、示談金を吹っかけたのさ」
P「水瀬財閥の名を出したら、案の定向こうの責任者はすっかり青ざめてな。
身を震わせながら、すぐに示談金を収めてきたよ」
伊織「……あんた…………!」
P「同じような事を繰り返せば、金はすぐに集まりそうだと俺は踏んだ」
P「高木社長に対抗するには、社長と同じ土俵に立たなくちゃならない……
新しく事務所を立ち上げるための金が、俺には必要だった」
P「だが……それ以降、俺や伊織達を取り巻く状況に、不可解な変化が生じた」
P「俺が伊織を危険な目に遭わせようとする前に、別の予期せぬ事故が、
伊織の周囲で起きるようになったんだ」
P「原因はすぐに分かった。961プロがスイーパーを雇っていたんだ」
P「わざと衆目に晒されるような騒ぎを起こし、俺が手出しできないようにしていた」
P「そして、黒井社長にそれを依頼したのは高木社長……あなただという事もな」 - 221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:08:01.91ID:lATLj4IF0
- 高木「………………」
P「加えて、シティーハンターが765プロのボディーガードに……俺は相当焦った」
P「二人の凄腕スイーパーの目を掻い潜り、伊織に手を出す事は、不可能に近いとな」
P「そこで、俺はもう一度考えを改めた」
P「彼らの目を掻い潜るのではなく、彼らと真っ向から対峙し欺く策を弄してみせようと」
P「高木社長がいくら凄腕のスイーパーを手配したところで、何も守れはしない。
彼らの上を行き、俺を見くびった事を後悔させてやろうってな」
律子「それで、今日のフェスを利用したと……!?」
P「最初の示談金を使って、チンピラや物資を集めてな。当然、音無さんの電話も嘘だ」
P「すまないな、律子。今日が最後の仕事だってのに」
P「だが俺にとっても、今日は勝負の時だったんだ。見てみろ、その結果を」
P「シティーハンター、冴羽リョウは、銃弾を使い果たし身動きが取れない」
P「海坊主と野上刑事は、ありもしない会場周辺の爆弾を今も探し回っている。
他の警察は、961が仕掛けている妨害工作のせいで出動できない」
P「どうだ……いつでもステージを終わらせる事ができるぞ」
P「俺が、この引き金を爆弾に向かって引けばな」ガチャッ - 222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:10:14.38ID:lATLj4IF0
- 雪歩「……ッ!!」
亜美「や、やめてよ兄ちゃん!!」
真美「そんな事するはずないよね!? 兄ちゃん、しないよね!?」グスッ…
P「止めるかどうかは、そこの男次第だ」
千早「そこの、男……?」
高木「………………」
P「高木社長……俺に、この引き金を引かせないでほしい」
P「ただ一言、俺に謝ってほしいだけなんです。
皆がいるこの状況で、俺は良くやってくれたと、褒めてくれさえすれば良い」
P「そうしてくれれば、俺は何も言わず、警察に出頭します」
あずさ「! ぷ、プロデューサーさん……!」
響「イヤだぞ!! 爆弾が爆発するのもヤだけど、プロデューサーが逮捕なんて…!!」
貴音「しかし、あの方はもう、覚悟を決めております……!」
美希「ハニー……どうして、ミキに何も言ってくれなかったの……!?」ポロポロ… - 223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:12:40.72ID:lATLj4IF0
- 高木「………………」
P「社長……どうか、お願いします」
高木「…………断る」
P「!!? なっ……」
高木「キミに頭を下げる理由など無いし、下げた所でキミの心が救われるとも思えない」
律子「ちょ、ちょっと高木社長!?」
P「ッ……それが、それがあなたの答えですか……!!」ギリッ…!
P「自分の全てを、プロデューサーとしての仕事に……!」
P「命とまで思って! 俺は、必死にここまでっ!!」
P「撃つぞ……どうだ、終わるんだぞ!? それでも良いのか、えぇっ!!」ジャキッ!
リョウ「……プロデューサーさんよ。見くびっているのは、おたくの方だ」
P「!? な、何だと……この状況であんたに何ができる。もはや部外者は黙って…!」
リョウ「見くびっているというのは、俺の事じゃない」
リョウ「高木社長……そして、アイドル皆の事を、だ」 - 224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:14:47.71ID:lATLj4IF0
- P「な、何だと……!?」
バキューンッ!!
P「うあっ!!」ビシィッ!
あずさ「きゃあっ!」
カシャンッ! カラカラカラ…
海坊主「………………」
冴子「遅れてごめんなさい」
P「くっ……!」
香「あずささん、こっちへ!」ガバッ
あずさ「す、すみません……」タタタ…
リョウ「海坊主がおたくに渡した銃にも、盗聴器兼発信機が付けられていたのさ」
リョウ「高木社長から、もしものためにとお願いをされてな」 - 225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:17:58.63ID:lATLj4IF0
- P「く、くそぉ……!」
P「全て、お見通しだったのか、社長は……俺は、ここまでしてなお勝てなかった……」
伊織「勝ち負けじゃないわよ……」
P「……!?」
伊織「誰も争っていない、競ってもいない……全部、あんた一人の問題なのよ」
P「い、伊織……」
P「お前が一番、俺の気持ちを理解する事ができるはずだ」
P「優秀な兄達と比較され、水瀬家で冷遇されてきたお前には、
人から認められない悔しさが、苦しさが、嫌というほど分かるはずだろう!?」
P「認めてくれない人間を、見返してやりたいという気持ちがっ!」
伊織「そうね……昨日までの私なら、大いに同情していたと思うわ」
伊織「でも、気づいたのよ……今日会場に来てくれた、お父様の姿を見て」 - 226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:22:01.11ID:lATLj4IF0
- P「!? き、来ていたのか……やっと、伊織の事を認めて…」
伊織「ううん、違うわ」
伊織「お父様は、最初からずっと私の事を認めてくれていた。
それに私が気づいていない、気づこうとしなかっただけ」
伊織「そう……認めていなかったのは私自身」
伊織「私が、お父様に認められていない自分自身を作り上げて、それを盾にしていたの」
伊織「そうすれば、辛い事も苦しい事も、全部お父様のせいにして片付けられるものね」
伊織「今の、あんたのように……」
P「……!!」
伊織「でも、それは違うのよ!」
伊織「一方的に自分が駄目な人間なんだと思い込んで、被害者ぶって……
お父様が、皆が向けてくれる愛に目を向けないでいては、何も進めないって!」
伊織「お父様や高木社長、皆を、言い訳にして、逃げ道を作っちゃいけないの!
皆の愛に正面から向き合って、受け止めるのよ!!」
伊織「そうじゃないと、自分や誰かのためになる事なんて、ずっとできない……!」
伊織「今の私なら、胸を張って言えるわ!!
自分が輝くためじゃなく、誰かを輝かせるために私はアイドルをやるんだって!!」 - 227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:27:57.41ID:lATLj4IF0
- 香「い、伊織ちゃん……!」
律子「伊織……」
P「…………愛……愛か」
P「すまなかった……俺は、自分の事しか、見ていなかった」
P「仕事上、万全のコンディションにするためのご機嫌取りをしていただけに過ぎず……
皆を、愛する事ができなかったんだな……」
高木「そんな事は無い」
P「えっ……?」
高木「確かに、アイドル達に怖い思いをさせたキミの行いは、褒められたものではない」
高木「だが、キミ自身は決して、皆を命の危険に晒すような真似はしなかった」
高木「それは、キミが彼女達を誰よりも大切に思っている……愛している証拠だ」
P「何を言っているんですか……」
P「あの爆弾を見てください。現にこうして皆を命の危険に晒しているんです!」
P「こんな人間が、自分のアイドルを愛していると、何で思うんですか!?」 - 228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:29:50.91ID:lATLj4IF0
- リョウ「思うさ。おたくの話を聞いてりゃ、よぉくね」カチャッ…
P「!?」
カシンッ!
リョウ「それを俺が証明してやる」スチャッ…
香「りょ、リョウ!? アンタ一体何をするつもりなの!?」
リョウ「あの赤のコードを切る」
香「そ、そんな、ちょっと……!!」
リョウ「香」
香「! …………」
リョウ「………………」
香「…………信じるわ、リョウ。アンタも、プロデューサーさんの事も」 - 229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:33:31.04ID:lATLj4IF0
- P「な、ば、馬鹿なっ!! 正気か!?」
リョウ「冴子と海坊主はどうする? 俺を止めるか?」
冴子「止めろって言ったってやるんでしょう?」
海坊主「時間の無駄だ。さっさと済ませろ」
リョウ「……皆の意思も必要だ」
リョウ「どうだ? あのプロデューサーさんを信じるか?」
P「な、あ……」
春香「信じます」
P「!?」
春香「何だか、今のプロデューサーさんの話を聞いたら……
ちょっと、変だけど、安心しちゃいました」
春香「あぁ、やっぱりプロデューサーさんは、私達のプロデューサーさんなんだなって。
ねっ、千早ちゃん、皆?」
千早「えぇ、そうね」ニコッ
千早「私達を本当に愛していない人が、愛してやれなかったなんて、言えるはず無いもの」 - 230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:39:37.19ID:lATLj4IF0
- やよい「プロデューサー! 私も信じますー!!」ピョン!
響「プロデューサーが、完璧な自分達のステージを台無しにするわけ無いもんな!」
雪歩「プロデューサー、私、怖くありません」
美希「ミキも、ちょこっとだけ心配してソンしたの。アハッ!」
あずさ「そうだわ。私だけステージ衣装じゃないから、早く着替えてこなくちゃ~」
真「アンコールが鳴りっぱなしだよ! もうそろそろ準備しないと……」
貴音「着替えを手伝いましょう、三浦あずさ」
リョウ「俺も後で行こう」
香「行くなっ!」
亜美「おじちゃんの代わりに、亜美達があずさお姉ちゃんの着替えに行ってくるYO!」
真美「写メ、めちゃいっぱい撮ってきてあげるよん♪」
律子「撮るなっ!」
律子「もう……私が研修に行くべき人材だった訳じゃなくて、
プロデューサーが765プロに残すべき人材だったんですよ」
律子「今の私の実力じゃ、これだけの子達をまとめ切れないんですから……
それくらい、分かってくれていると思ったのになぁ」
伊織「いくら鈍感なあんたでも、これで皆の気持ち、十分に分かったでしょう?」 - 231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:42:20.80ID:lATLj4IF0
- P「や、やめろっ! 何でこんな俺の事を信じるって言うんだ!!」
P「俺は身勝手な理由で皆にひどい事をした最低の人間だ!! 皆死ぬんだぞ!?」
P「俺を信じるな!! 聞いてるのか!? 逃げろ、ここから早くっ!!」
P「やめてくれっ!! 俺の負けなんだ、頼むっ!! 俺を信じるなぁっ!!!」
リョウ「…………」ガチャッ
P「やめろおぉぉぉっ!!!」
ガアァンッ!!!
ブチッ!
シィーーーン…
P「信じられても……余計に、惨めになるだけじゃないか……」ガクッ
リョウ「おたくは、この子達の愛に向き合う度胸が無かっただけだ」 - 232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:45:04.88ID:lATLj4IF0
- P「うっ、う、うぅぅ……!」ポロポロ…
高木「すまなかった」
P「…………!?」
高木「私の言いたい事は、水瀬君がほとんど言ってくれたよ」
高木「ファンや誰かを輝かせるのがアイドルなら、彼女達を輝かせるのがプロデューサー」
高木「そのためには、私の顔色などではなく、彼女達に目を向けてほしかったのだ」
P「社長…………」
高木「他人に自分の価値を一方的に見出してほしくは無かった……
自分の価値を決めるのは自分自身である事に、気づいてほしかったのだ」
高木「辛い思いをさせてしまい、すまなかった」
P「う、うあぁ……ぐ、うぅぅ……っ!!」ボロボロ…
P「うっ、う…………」
スクッ…
P「刑事さん……俺を連れて行ってください」 - 233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:48:02.03ID:lATLj4IF0
- 一同「!!」
P「皆に、顔向けできないですし……罪もたくさん犯しました」
P「すみません……」
冴子「そうね……銃刀法違反、威力業務妨害、幇助に恐喝……
数え挙げればキリが無いくらい、立件できるネタには困らないわ」
冴子「でも……私の隣にいるこの二人」
P「…………?」
冴子「この男達こそ銃刀法違反の常習犯だし、今回だって爆破事件を何度も起こしてる」
リョウ「アハハハ、アハ……」ダラダラ…
海坊主「…………ッ」ダラダラ…
冴子「あなたを逮捕するとなれば、この男達も逮捕しなくてはならないし、
私にとってそれは少し具合が悪い事なの」
冴子「だから、連行するかどうかは、この際彼女達に判断を委ねる事にしようかしら」クイッ
伊織「………………」
P「み、皆…………」 - 234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:52:32.14ID:lATLj4IF0
- 伊織「……今のあんたに必要な事は、自分を認めてあげる事よ」
伊織「分からないならよく見てなさい。
あんたが育てた私達が、どれだけあんたの事を想っているのか」
伊織「ステージが終わっても、まだそんなふざけた事言ってたら、顔引っぱたいてやるわ」
伊織「春香」
春香「うんっ!」
春香「よぉーし!!
皆! 私達の今の最高を、会場の隅々まで、届けようっ!!」
亜美・真美「お→っ!!」
やよい「うっうー!!」
響「なんくるないさー!!」
真「それじゃあ、いつものヤツやろうか!」
美希「うんっ!!」
春香「765プロぉーっ!! ファイトぉーーっ!!!」
「目指せっ!! トップアイドルー!!!」 - 235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:56:43.12ID:lATLj4IF0
- ~会場~
アンコール!! アンコール!! アンコール!! …
北斗「まだ出てこないな。何かあったのか?」
冬馬「知るか。それより翔太、もっと紫のサイリウム貸せ」
翔太「えぇー? やっぱり冬馬君、三浦あずささんが推しメンなんだね~」
北斗「マザコンだからな、冬馬は」
冬馬「マザコンじゃねぇ!」
黒井「まったく!! コイツらときたら、さっき戦った765のライブを見るだとぉ!?
何を考えているのだっ!!」プンスカ!
新堂「おそらく、敵情視察というのが建前ではないのでしょうか」
黒井「何が建前だっ!! 大体、敵情視察という言い方も気に食わん!
我が961プロにとっては、765の連中など敵ですらないのだからな!!」
新堂「ですが、結果は……おっと失礼」
黒井「うるさいっ!! アレは審判員の目が節穴だったのだ!!
こんなフェスは土台インチキだ!!」
黒井「おのれ高木のヤツめぇ~!!
無茶な依頼をして、散々手間を掛けさせておきながら、何て図々しいヤツだっ!!」 - 236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)00:58:57.17ID:lATLj4IF0
- フッ…
黒井「……んん~~? さっきから黙っているが、何だ水瀬、貴様今何を笑って…」
黒井「!?」
黒井「み、水瀬……貴様、何だそのおびただしい数のピンクのサイリウムは……」
黒井「!! 貴様、何だその勝ち誇ったような顔は、水瀬ぇっ!!」ガタッ!
黒井「この私を馬鹿にするんじゃあない!! おい、責任者っ!!」
黒井「売店で売っているサイリウムをありったけよこせ!!」バサッ!
黒井「ありったけだ!! 横にいる男など霞むほど大量に買い占めてやるっ!!」
新堂「ホッホッホッホッ」ニコニコ - 237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:00:40.46ID:lATLj4IF0
- フッ ワアァァァァァァァァ…
北斗「おっ、やっとか」
冬馬「おいおっさん、始まるぞ。そろそろ配置に着け、ってうおっ!?」ドサッ!
黒井「そこらにいる愚民共に配れ!
961プロからのお恵みをありがたく受け取れとな!!」ポイポイッ!
翔太「やるぅ、クロちゃん!」
黒井「私が一番なのだっ!!
765プロのライブだろうと、会場を支配するのはこの私……モガモガ!!」
冬馬「出しゃばるなよおっさん、見えねぇぞ」
新堂「おぉ、お嬢様…………」 - 239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:02:25.34ID:lATLj4IF0
- ~~♪
ワアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!
雪歩(うわあぁ……!)
あずさ(サイリウムが、こんなにたくさん……)
千早(なんて綺麗なのかしら……)
貴音(私達も、負けてはいられませんね、伊織)チラッ
伊織(当然よ! にひひっ♪)ニコッ
タンッ タンッ タタン!
「~~♪ ~~~~♪」
「~~~♪ ~~~~~♪!」
P「………………!」
高木「おぉ……」
律子「……………………」 - 240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:03:52.62ID:lATLj4IF0
- 伊織「~~~~♪ ~~~♪!」タンッ タタンッ!
――伊織は前に出すぎてる! あと振りが全体的に遅れ気味よ!
伊織「~~~♪ ~~~~~♪!」タンッ タタン タッ タンッ!
――伊織、そう、指先! 見られてる事を意識して神経走らせなさい!
――ありがとうございます! ぜひ、ウチの竜宮小町を御社の番組で…!
――何やってるの伊織っ!! あれじゃディレクターさんに失礼でしょっ!
――はい、お疲れ様。オレンジジュースよ……えぇっ、これじゃダメ? もうっ。
――よっしゃ!! ……はっ!? お、オホン! まだまだよ、全然ダメっ!!
――良く頑張ったわね、伊織。
伊織「~~~~~~♪!!」タンッ タンッ!
ねぇ… 逢えて良かった
ねぇ… あなたに言葉言うなら
ありがとう そして よろしく - 241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:05:15.81ID:lATLj4IF0
- 伊織(プロデューサーがアイドルを輝かせて、アイドルが皆を輝かせる)
伊織(その向こう側に、何があるのかな……)
伊織(知りたい! いつか知って、あいつや、律子に……!)
伊織(お父様に教えてあげたい!)
伊織(皆が支えてくれたおかげで、こんなに素敵な事があったんだって!!)
伊織(いつか、きっと……そのためには!)
「~~~~♪ ~~~~~♪」
伊織(振りは、遅れてないわよね? 5、6、7、8!)
伊織(指先も大丈夫! 音程は、声は出てるの?)
伊織(全体の配置は、どうなのかしら? ちゃんとバランス良く動けてる!?)
伊織(見てる、律子……!)
伊織(もっと、律子の言う事、聞いとけば良かったなぁ……!)
伊織(律子にもっと色々な事、教えてほしかったなぁ……!!)
伊織(ごめんなさい、律子……!) - 242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:06:18.80ID:lATLj4IF0
- STAGE 歌いたいから
LIVE 踊りたいから
新しい幕を開けよう
NEVER END IDOL
M@STER PEACE!!
ワアアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
夢を初めて願って 今日までどの位経っただろう
ずっと一日ずつ 繋げよう
夢は自分を叶える為に 生まれた証だから
きっと この心で
私のM@STERPIECE
ワアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!
高木「見たまえ……キミが育てた子達だ」
P「俺は……なんて馬鹿な事を…………」
香「キレイ~~……!」
冴子「私達には、少し眩しすぎるわね……」
海坊主「………………」 - 243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:07:35.71ID:lATLj4IF0
- 律子「……………………」
リョウ「どうだい? 最後に見る教え子達の晴れ姿は」
律子「…………全っ然ダメです」
律子「春香と伊織はまだ振りが遅れてましたし、雪歩は縮こまりすぎ」
律子「やよいは逆に乱れすぎだし、亜美と真美、響は雑。美希も周りを全く見てない」
律子「千早は途中で自分のポジションを見失って、あずささんを困らせてました」
律子「貴音と真も、ペアで踊るところの合流が遅れすぎです」
律子「“最高傑作”と呼べるだけの完成度には、まだまだほど遠いと言わざるを得ません」
律子「でも…………」
律子「ッ……はぁ、す、すみません。でも……!」
律子「私は、このライブを一生忘れません……!」ポロポロ…
リョウ「………………」フッ
ワアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!! パチパチパチパチパチ… - 244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:08:59.38ID:lATLj4IF0
- ………………………
………………
ザワザワ… ザワザワ…
『ただいま、アシアナ航空107便のご搭乗案内をしております。
ご搭乗の方は、26番ゲートまでお越し下さい』
コツ コツ…
律子「………………」
律子「…………!」ピタッ
伊織「……遅かったわね」
律子「伊織…………」
律子「何をしているの? こんな所で」
伊織「見送り以外に何があるのよ」 - 245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:15:19.11ID:lATLj4IF0
- 律子「……冴羽さん達から聞いたのね?」
伊織「………………」
律子「湿っぽいお別れは嫌だから、皆には違う日付を伝えておいたのに」
伊織「この伊織ちゃんを出し抜こうったって、そうはいかないのよ」
伊織「どいつもこいつも……カッコつけすぎなのよ、あんたもプロデューサーも」
律子「あぁ、プロデューサーね。もう961プロの仕事には慣れたかしら」
伊織「まだじゃないの? ウチと全然雰囲気違うもの、あそこ」
律子「そう? あの人なら、それなりにうまくやると思うけど」
伊織「皆に顔向けできるような人間になるまで、一からやり直すだなんて……
どうしようもない馬鹿ね」
伊織「恐喝したイベント会社にだって、水瀬財閥から話を付けて、
もう許しをもらっているのに……まったく」
律子「“本当の”示談金を渡して、でしょう? ふふふ」
伊織「律子、その……」
律子「何?」 - 246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:17:48.58ID:lATLj4IF0
- 伊織「……ダウンタウンは、夜出歩かないようにね」
伊織「本当に、危ないから……」
律子「ふふ……ありがとう、気をつけるわ」
伊織「………………」
律子「私からも、いいかしら?」
伊織「えっ? い、いいけど……」
律子「今まで、ありがとね、伊織」
伊織「えっ……」
律子「あなたが竜宮小町のリーダーを務めてくれて、私はすごく助かったわ」
律子「プロデューサーとして未熟な私のサポートも、何度してもらえたか分からない」
律子「あなたがいてくれたから、今の私があるの」
伊織「………………」
律子「いつか、恩返しをするわ」
律子「エンターテイメントの本場で、いっぱい知識も経験も吸収して、
大きくなって帰ってくる」
律子「約束よ」 - 247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:20:54.41ID:lATLj4IF0
- 伊織「………………」
律子「そろそろ時間ね……それじゃあ、伊織、皆によろしく…」スッ
伊織「! ……律子っ!」
律子「?」
伊織「あ、あのっ! ハリウッドの方に住んでる連中って、
鼻持ちならない小金持ちばかりだから、まともに相手しないようにね!」
伊織「それと、あっちはカードでの買い物が一般的だから、そのつもりで!
キャッシュで支払いしたら貧乏人って思われる事もあるから気をつけて!」
伊織「地下鉄はあまり乗らない方が良いわ! 乗るなら誰かと一緒に!」
伊織「それに、それと……!」
伊織「今までありがとう、律子!!」
伊織「私も、次に会う時までに、もっと立派なアイドルになれるよう頑張るから!!」
伊織「その時に、私も成長した姿を見せて恩返しするっ! 約束よ!!」
律子「えぇ、楽しみにしているわ」ニコッ
律子「それじゃあ……行ってきます」 - 248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:23:45.39ID:lATLj4IF0
- キイィィィィィーーーン…
伊織「……………………」
リョウ「ちゃんと話せたか?」
伊織「うん…………」
リョウ「寂しくないか? 彼女と離れ離れになって」
伊織「……寂しいわよ」
伊織「寂しいに、決まってるじゃない」
リョウ「………………」
伊織「でも、寂しがってばかりいられないわ」
伊織「このスーパーアイドル伊織ちゃんを待ってるファンが、大勢いるんだもの」
伊織「そのファンの人達のために……育ててくれた律子やあいつ、お父様のために、
もっと実力をつけて、皆を喜ばせなくちゃ」
伊織「下向いてばかりいたら、律子達に笑われちゃうわよ。ねっ、シャルル?」
リョウ「…………そうか」フッ - 249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]:2014/12/28(日)01:28:09.60ID:lATLj4IF0
- 伊織「そうよ。ところで、あんたはもう765プロとの契約は切れたのよね?」
リョウ「あぁ。一応、社長から報酬ももらったしな」
伊織「あら、社長から聞かされてないかしら?
今、ウチの事務所、新しいプロデューサーを臨時で募集中なの」
リョウ「はぁ? まさか、俺にやれってんじゃないだろうな」
伊織「皆もあんたに懐いてるし、社長もティンと来たって」
リョウ「馬鹿言え、できるかそんなもん」
伊織「そうよね。小鳥はともかく、私は大して期待してなかったから別にいいけど」
伊織「それじゃあ、私があんたに依頼するわ」
伊織「午後からレッスンがあるから、それまでどこか美味しいランチが食べられる所へ、
この伊織ちゃんを案内しなさい」
伊織「できれば、いつぞや食べられなかったイタリアンが良いわね」
リョウ「そういう依頼なら、いつでも大歓迎さ」
リョウ「こう見えて、レディーのエスコートには自信があってね」
~おしまい~