1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)19:01:03.38ID:f/wl4UGh0


asashio2

朝潮「そんな……司令官と……け、結婚だなんて……」

提督「嫌か?」

朝潮「と、とんでもない! 私、司令官と結婚できるなんて、幸せです! 嬉しいです!」

提督「そうか、それは良かった。なら言ってごらん? 朝潮は私と、どうしたいんだ?」

朝潮「はい! わ、私は……し、ししし司令官と、け……結婚——————」

大潮「ハイハイハーイ! 大潮、司令官と結婚しまーす!」

満潮「ちょっと大潮、あんた何勝手に言い出すのよ。司令官と結婚するのは私でしょ?」

朝潮「え、あ……ちょっ……」

荒潮「あらあら面白そうねぇ。私もしようかしら。司令官と、結婚」

霰「わたし……司令官と結婚……したい」

霞「はぁ……こんなクズとの結婚生活なんて、お先真っ暗ね。

このクズと結婚して将来きちんとやっていけそうなのは、私くらいよ」

朝潮「み、皆どうしてここに……司令官と二人きりだったはずなのに……」

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3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)19:10:51.80ID:f/wl4UGh0


大潮「朝潮だけ抜け駆けなんてズルいよー。大潮も、司令官大好きー!」

荒潮「私だって、いつも司令官のこと、好きだって言ってるじゃないの」

霰「相撲界の中では、司令官が一番すき」

満潮「私だって、本当は司令官のことが大好きなんだからッ」

霞「フン! こんなゴミクズのどこがいいのかしら。本気で最後まで好きでいられるのは私くらいね、きっと」

朝潮「そ、そんな……まさか皆、こんなにも司令官のことが好きだったなんて……」

提督「あっはっは、いやいや困ったものだ。だが、私も皆が大好きだ。……よし、じゃあ全員と結婚しよう!」

朝潮「し、司令官!? わ、私との結婚の約束は……」

提督「もちろん朝潮とも結婚するぞ。心配性だなぁ朝潮は。あっはっは」

朝潮「い、いえ、そうではなく! わ、私は……司令官を……私だけの司令官に…………」

提督「ん? どうした?」

霞「鈍感ね。つまり朝潮は、正妻を決めようと言っているのよ」

朝潮「いや、そういうわけでは……」

満潮「正妻……そうね、朝潮の言う通りだわ」

朝潮「いやだから……」

霰「どうやって決めよう」

荒潮「大潮ちゃんは正妻選びについて、何かいい案ある?」

大潮「元気出していきましょう! セーサイ!」

朝潮(くっ…………もうこうなったら、せめて正妻に……!!)

提督「じゃあこうしよう。この場でおパンツを脱いで、一番早く頭に被った人が正妻ということで」

朝潮「私やります!!」

提督「おお、即答だな朝潮」

4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)19:19:51.31ID:f/wl4UGh0


朝潮(恥ずかしいけれど、躊躇なんてしていられない! 皆もあれだけやる気なら、もうすでに下着を脱ぐ体勢に入っているはず!)

朝潮「はい! この朝潮、命に代えても司令官の正妻に——————————あれ?」

シーン

朝潮「みんな……脱がないの?」

大潮「いやー、さすがにそれはちょっと」

荒潮「女子として……というより、人としてそれは……ね?」

霞「あり得ないわね」

満潮「まさか朝潮……あんた、本気で脱ぐつもりなの……さすがにひくわ」

霰「変態行為だと思う」

朝潮「え、あれ……だって皆、あんなにスゴイやる気で……あれ?」

提督「さぁ朝潮、どうした。 やるんだろう? 脱ぐんだろう?」

朝潮「あ、あの……司令官、いや、その……」

朝潮(どうしよう……。恥を忍んで下着を脱いで、さらに頭に被れば、

私は晴れて司令官の正妻に……でも、そんなハレンチな行為を……この私が……! うぅ……)

提督「さぁ朝潮、脱ぐんだ」

朝潮「はっ! 司令官、いつの間に背後に!?」

提督「さぁさぁ朝潮、被るんだ」

朝潮「あれ? 司令官が前にも!?」

提督「さぁ、今すぐ脱ぐ。そして被る」

朝潮「あ、あれ?? 司令官が二人……三人? あれ? あれ??」

提督「自分に素直になるんだ」

提督「きっと気持ちいいぞ」

提督「脱いで被る、簡単だろう?」

提督「恥ずかしいなら私が手伝おうか?」

提督「いや、私も一緒に脱ごうか?」

朝潮「あわ、あわわわわわ??!?!?!」

提督「さぁ朝潮」

提督「さぁさぁ朝潮」

提督「朝潮……さぁ!」

提督「「「「 さぁ!!! 」」」」」

朝潮「くっ……み、見ていてください司令官……」スッ

提督「………………」

朝潮(恥ずかしいけれど……もう、やるしかない!!!)

朝潮「これが……これが、朝潮型駆逐艦の………………力なんです!!!」ズルッ

5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)19:29:52.40ID:f/wl4UGh0


〜 朝 食堂 〜

霞「朝潮……アンタちょっと酷い顔してるけど、大丈夫?」

朝潮「う、うん……平気よ。 少し、変な夢を見てしまって……」

荒潮「珍しいわねぇ。いつもはどんなに朝早くてもシャキっとしてる朝潮が」

満潮「で? どんな夢だったのよ?」

霰「気になる……」

朝潮「う、うん……一言でいえば……まぁ、司令官と結婚、する夢なんだけど……」

大潮「結婚!?」

満潮「バカ大潮、声が大きい」

大潮「えへへー、ごめんごめん。驚いちゃって」

霞「ふ、フーン……まぁ確かに、酷い夢よね」

荒潮「うふふっ、またまた霞ちゃんったら」

霞「な、何よもう!」

霰「それで朝潮、夢で何かあったの?」

朝潮「私は司令官との結婚を果たすため……危うく社会的に死ぬところだったわ……」

満潮「どういう状況よ……」

荒潮「ふふふ、でも夢って、自分の経験や考えていることを表すって言うわよねぇ。つまりそれって……」

大潮「朝潮、結婚するのォーー!?」

霞「だから声が大きいってば」

霰「でも確かに、朝潮は秘書艦で、司令官との距離は最も近いはずの存在……」

朝潮「い、いやそんな! 司令官との結婚だなんて! そんな大それたことは考えて…………あっ」

満潮「え、やっぱりそうなの?」

朝潮「いや、そうじゃなくて……。思い出したのよ」

荒潮「あら、何を?」

朝潮「あれはたしか、昨晩……遅くまで書類仕事を片付けていた時のことだったわ……」

6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)19:44:03.63ID:f/wl4UGh0


〜 昨夜 司令室 〜

朝潮「司令官、お手紙が届いています」

提督「あぁ、そこに置いといてくれ」

朝潮「ご覧にならないのですか?」

提督「それがすべて、駆逐艦の子たちからのラブレターだったら20回は読む」

朝潮「…………残念ながら、どれも軍令部からのようですね」

提督「そう……そうなんだよ。ここんとこ、ずっとそう」

朝潮「あの、差支えがなければ、内容を伺ってもよろしいでしょうか?」

提督「何の変哲もない、ただの出撃要請さ。朝潮たちも最近、実感しているだろう?」

朝潮「はい……たしかに。ここのところ、妙に出撃が増えていますね。

それも、場所や練度に見合わない、雑多な任務ばかりで…………はっ、すみません! 私……」

提督「いや、いいんだ朝潮。君の言う通りだ。他の鎮守府に要請すべきである遠方での任務。

戦艦や空母に課せられる陳腐な掃討戦。駆逐艦を危険にさらす、絶望的な出撃任務……。

上層部からの命令とはいえ、君たちにはかなり苦労をかけてしまっているな……すまない」

朝潮「そんな……司令官は悪くありません!」

提督「ありがとう朝潮。君がそう言ってくれるだけで、私は救われる」

朝潮「それにしても……何故このような、理不尽な出撃命令ばかり下されるのでしょうか……」

提督「圧力、だろうな」

朝潮「圧力……ですか?」

提督「要は嫌がらせだ」

朝潮「嫌がらせ!? どうしてそんな……理由が分かりません!」

提督「軍属でありながら、艦娘に手を出しかねない司令官とか」

朝潮「し、司令官にそんな自覚があったとは……あ、いえ何でもありません」

提督「他にはまぁ、駆逐艦を主力の一部としている、という軍令部が示す方針から逸れた組織体制とか」

朝潮「ですが、我々はきちんと戦果を得ています!」

提督「戦果を得ているからこそ、大艦巨砲主義のお偉い様方にとっては、我々が気に入らないのだろう」

朝潮「そんな……」

7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)19:54:29.61ID:f/wl4UGh0


提督「あと他にも色々と目立つことがあったりしたからなぁ……」

朝潮「はっ! もしや、以前、中央鎮守府へ転属になった私を、強引にここへ再着任させた件も……」

提督「あー……たしかにあれも、かなり睨まれたな……。

いやしかし、そもそも秘書艦である朝潮に対してわざわざ転属命令が出されている時点で、それが既に嫌がらせだろう」

朝潮「…………」

提督「なに、朝潮が気に病むことはない。むしろ私は、君たちを誇りに思っているんだ。

戦艦や空母にも負けない、最強の駆逐艦……朝潮型駆逐隊を」

朝潮「司令官……」

提督「それに、気に病むとしたら、それは私の方だ。

君たちを私の方針に付き合わせてしまって、現にこうして辛い状況に巻き込んでしまっているのだから」

朝潮「いいえ、司令官! 私たち朝潮型駆逐隊は……ううん、この鎮守府に所属する艦娘は、司令官のことが大好きです。

私たちは司令官のためであれば、どんなに辛くても、どこまでもお付き合いする覚悟です!」

提督「朝潮……。 そうか……私はその言葉が聞きたかったのかもしれない。少し安心したよ」

朝潮「それは良かったです! あ、私、コーヒーをお持ちしますね!」

提督「あぁ頼む。ちゃっちゃと終わらせないとな!」

朝潮「司令官、コーヒーをお持ちしまし……—————あれ?」

提督「ぐぅ……ぐぅ……」

朝潮(司令官……寝ちゃってる……)

提督「ぐぅ……ぐぅ……うすしお……」

朝潮「クスッ……どんな夢を見ているんだろう……」

提督「ぐぅ……ぐぅ……」

朝潮「お疲れですか、司令官。 ……司令官も私たちと同じ…………戦っているのですね……」ナデナデ

提督「ぐぅ……ぐぐ……うへへ……」

朝潮「あ、笑った……かわいい……」

ヒラッ……ポト

朝潮「あ、手紙が一枚落ちて…………これは…………『新システム実装のお知らせ』……?」

朝潮(……何だろう? すごく気になる…………しかし、司令官宛の手紙を、盗み見るような真似は……)

朝潮「司令官……少しだけ、拝見してもよろしいでしょうか……」スリスリ

提督「ぐぅ……ぐぅ……ぐへへ……」

朝潮「わ、分かりました司令官。では少しだけ失礼して……—————こ、これは……!!」

——————————ケッコン カッコカリ

8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)20:02:22.31ID:f/wl4UGh0


大潮「ケッコンンンンンーーーー!?!?!?」

荒潮「大潮ちゃん、本当にお願いだから、もう少し静かにね?」

霞「……どうでもいいけど、序盤ののろけ回想って必要だったのかしら?」

満潮「とにかく、その『ケッコンカッコカリ』っていうシステムが原因でおかしな夢を見たってことね」

霰「夢の内容よりも、その新システムというのが気になる……」

大潮「そうそう! そのケッコンって、どんなシステムなの!? 手紙の続きは読んだんでしょ!?」

霞「何言ってるのよ。真面目な朝潮がそんなことするわけ————」

朝潮「—————当然、読んだわ」

霞「読んだんだ……」

朝潮「ケッコンカッコカリシステム……

それは、軍令部が定めるところの最高練度に達した艦娘にのみ適用を許された夢のシステム……」

満潮「最高練度の艦娘…………」

朝潮「司令官から直々に、左手の薬指に指輪を差し込まれることで、その効果が発揮されると書いてあったわ」

荒潮「あらやだ……本当の結婚指輪みたいじゃないの」

霞「フン……そ、そんなのどうだっていいわよ。それで、その効果とやらは何なの?」

朝潮「指輪を装備することで、艤装の耐久力、燃費、運の向上……」

霰「運がよくなるんだ……」

満潮「いやいや、たしかに駆逐艦にとっては時の運ってヤツは大事だけれど……」

朝潮「それから、さらなる成長を遂げることが可能になると、その手紙には書いてあったわ」

大潮「さらなる成長!! 戦艦になれたりするのかな!!」

荒潮「そういうわけではないような気がするけれど……」

霞「ふーん、なんだか胡散臭いわね」

朝潮「えぇ、まぁ言われてみればそうなんだけど……」

満潮「でも最高練度に達した艦娘に適用可能っていうことは……もしかして……」

霰「もしかするかも……」

荒潮「あり得るわよねぇ」

大潮「大潮たち、司令官から指輪がもらえる!!」

霞「ふん、アホくさ。そんな頑張ったで賞みたいな粗品を貰って、何が嬉しいっていうのよ、まったく」

朝潮「あの、それでその、指輪のことなんだけど……」

霞「あーはいはい、どうせ失くしたら始末書、とかそういう話でしょ」

朝潮「……じゃなくてその指輪、各鎮守府にひとつしか支給されないみたいなのよ」

一同「…………」

9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)20:12:42.65ID:f/wl4UGh0


大潮「ハイハイハーイ! じゃあここは、代表して大潮が! 司令官から指輪を貰いまーす!」

霞「はァ!? アンタ、何勝手に決めてんのよッ!!」

荒潮「あら〜? 霞ちゃんは指輪なんて、興味ないんじゃなかったの?」

霞「ち、違うわよ! 私はただ、その……ちょうどアクセサリが欲しかったっていうか!!」

霰「わたしも……指輪、欲しい」

満潮「私だって欲しいわよ! いや、言っておくけどね! 司令官からの指輪が欲しいんじゃなくて!

強くなるために欲しいの! ほら、私って占いとか信じるタイプだから! 本当だから!!」

大潮「ええー、嘘だー。 満潮、占いは食べられないから興味ないって言ってたくせにぃー」

満潮「言ってないわよ! あんたと一緒にしないで!」

朝潮「み、みんな落ち着いて! こういう時こそ会議をしましょう。

この中で司令官から指輪を頂くのにふさわしい人物は誰なのか……話し合って決めましょう」

霰「朝潮型緊急会議……in食堂」

大潮「ハイハーイ! 艦娘たる者、やっぱり戦って勝った人が指輪をゲットするってことで良いと思いまーす!」

朝潮「なるほど……優勝商品として、ということね」

満潮「でもそれだと、露骨すぎて司令官に怪しまれない?」

霞「それもそうね。第一、私たちはケッコンカッコカリについては知らないハズなんだし」

霰「それに、最終的な決定を下すのは司令官……」

朝潮「では、一体どうすれば……」

荒潮「うふふっ、そんなの簡単じゃない。司令官に対するアピール、すなわち点数稼ぎ……これしかないわ」

霞「なんだかヤな響きだけど、たしかに一理あるわ」

朝潮「司令官に自分の良いところを見せて、気に入ってもらうということね」

大潮「要は、お色気攻撃で司令官をローラクさせればいいんでしょ!」

満潮「はんっ、大潮のチンチクリンで、司令官を虜にできるわけ…………」

霰「……あの司令官が相手なら、できそう」

霞「誠に残念ながら、あの変態なら……ね」

朝潮「そ、そういうのはナシで! 自分のアピールポイントを示していく方針で行きましょう!」

荒潮「それなら、きちんとルールを決めておいた方がいいわねぇ」

満潮「なら、ボディタッチ禁止で」

荒潮「服を脱ぐのは?」

霞「ダメに決まってんでしょうがッ!」

霰「それから、一人が司令官を独占するのもナシにしよう」

大潮「うんうん! じゃあ一回のアピールで、最大3分までにしよう!

3分経ってもアピールを続けていたら、床が開いて落下する形式で!」

霞「なんでわざわざ芸人スタイルの退場しなきゃいけないのよ……」

10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)20:21:57.77ID:f/wl4UGh0


朝潮「ではここまでの意見をまとめましょう。

まず、司令官から指輪を頂くために、私たちができることは『アピール』のみ。

理由がどうであれ、最終的に決断を下すのは司令官であり、私たちは異議を唱えないこととします」

満潮「そうね。誰が勝っても、恨みっこなしね」

霰「分かった……」

朝潮「そして『アピール』には一定のルールを設けることとします。

まず、ボディタッチは厳禁。司令官を誘惑するような破廉恥な行為を、私たちは認めません」

荒潮「はーい、質問。ボディタッチといっても、司令官から触ってきたり、やむを得ない場合は?」

朝潮「それは……」

霞「向こうから触ってきた場合は、その場で殴るか憲兵団を呼ぶこと。

やむを得ない場合ってのがどんな状況なのか想像つかないけど、まぁセーフでいいんじゃない?」

朝潮「そうね……では、そういうことにします。 あと、服を脱ぐ行為は全面的に禁止です」

荒潮「はーい、質問。脱ぐのは禁止といっても、司令官が脱がせてきた場合は?」

霞「速やかに消し炭にするか、憲兵団を呼ぶこと」

荒潮「やむを得ない場合は?」

霞「やむを得ず服を脱ぐ状況って何よ!」

朝潮「世の中にはやむを得ず下着を脱いで頭に被るという状況も存在するくらいだから……」

霞「どんな状況よ!!」

大潮「最初から何も着てなければ、脱ぐことにはならないんじゃない?」

荒潮「あぁ〜、なるほどぉ」

霞「アンタたち、冗談で言ってるのよね……」

朝潮「それから、司令官を独占するような行為も禁止とします(秘書艦を除く)」

満潮「いやいやいや! なにさらっと秘書艦を除かせてんのよ!」

朝潮「秘書艦ともなれば、自然と司令官と二人きりになる時間が増えるので」

霰「朝潮だけアピールする時間がたくさんあって……ずるい……」

大潮「それなら大潮たちも、ずっと司令官のそばを離れなきゃいいんだよ!」

霞「な、なんでわざわざ休憩中までクズ司令官の所にいなきゃいけないのよ」

荒潮「あらー、じゃあ霞ちゃんはお部屋にいるといいわ」

霞「ふん、そうさせてもらうわ。別にそこまでしてその指輪が欲しいわけじゃないし……」

朝潮「ではこのような方針で、異議はありませんね?」

一同「異議なーし」

朝潮「それじゃあ皆……おそらくこの中から一人だけ、近々司令官から指輪を渡され、

新システムのケッコンカッコカリが適用されることになるでしょう……。

その相手が誰になったとしても、私たちは決して恨まず、僻まず、祝福することを、ここに誓いましょう」

一同「了解!」

11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)20:27:59.29ID:f/wl4UGh0


〜 司令室 〜

霞「—————って、言ってるそばから……」

朝潮「…………」

提督「おぉ皆、おはよう。揃ってどうしたんだ? 今日は非番じゃなかったか?」

霞「……」ジロッ

提督「な、なぜ睨む……」

大潮(朝潮だけずるーーい!!)

満潮(そうよ! なんで朝潮が率先してルール無視してんのよ!)

霰(秘書艦特権……)

荒潮(司令官の膝の上で一緒にお仕事なんて、これはポイント高いわねぇ)

朝潮(ち、違うのよ! これはその、朝やる気の出ない司令官を元気にするために、毎朝やっていることであって……)

霞(そんなの関係ないわよ! ルール1のボディタッチ厳禁に違反よ!)

朝潮(こ、これは司令官が円滑に仕事を行うために、やむを得ず行った行為に該当するわ!)

提督「えっと……なんか皆、私を置いてアイコンタクトで会話してないか?」

霰「……そんなことはない。司令官が、少し疲れているだけ」

満潮「そうよ。……あ、私、司令官にコーヒーを淹れてくるわ!」サッ

霞「あっ、しまった、出遅れた!」

提督「え?」

霰「わたし……疲れている司令官のために、肩叩きする」ポンポンポンポン

提督「ありがとう霰。おぉ……なんだか孫を持つおじいちゃんになった気分だ……和む」

霞(霰め……朝潮がルールを曖昧にしたのを見計らって、さっそくボディタッチを……!!)

霰「おじいちゃんの背中、とっても大きい」

提督「霰よ、欲しいものがあれば何でも買ってやるぞ。ふぉっほっほ」

霰「おじいちゃん、霰、なにかキラキラしたアクセサリが欲しいなー」

提督「おうおう買ってやるとも。おじいちゃんに任せなさい」

霞(アピールが露骨すぎでしょ!!)

荒潮「あらー、しまったわー、どうしようかしらー」

提督「どうかしたか? 荒潮」

荒潮「うふふっ、気づかない? 私、今日はスパッツを履き忘れちゃって」

提督「な、なに!? いつもスパッツを履いている荒潮が……今日は……」ゴクリ

霞(んなっ! 荒潮……まさか本当にそんな仕込みをしてくるとは……!!)

荒潮「せっかくだから気分を変えて、今日は髪をポニーテールにしてみようかしら」ファサッ

霞(髪ゴムを口にくわえて髪をかき上げ、さりげなくうなじを見せる角度……なんて計算し尽くされた立ち姿なの!?)

提督「おお……おお……いいな。 いいな!!」フゥンフゥン

荒潮「あっ、シュシュ落としちゃった。よいしょっ」

提督「うおおおお! 見え……見え……見えーっ!!」

霞(わざと落とした!? スカートの中がギリギリ見えないように拾うその姿に、ゴミクズはもう釘づけ!!

さ、さすがは荒潮……私まで少しドキッとしたわ……)

12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)20:35:38.16ID:f/wl4UGh0


大潮「うおおお!! 司令官!! ドォオオーーーン!!!」

提督「お、どうした大潮……って、うわぁ!?」

大潮「大潮は、司令官の肩の上で索敵を開始します!」

提督「うおおおっ」

霞(大胆というか、不自然すぎる突然の肩車! そして潔いほどのルール無視!

言ってることも意味が分からないけれど、太ももが顔に当たっているからか、クズはご満悦!)

大潮「辺りに敵影を確認できません!」

提督「よし大潮、もっと動いてよく確認するんだ」

大潮「了解です!」ユーラユーラ

提督「おぉ……」スリスリ

霞(しかも調子に乗り始めた……!)

満潮「お、お待たせ司令官! こ、コーヒーを持ってきたわ!」

提督「おぉ満潮、ありが……————な、なんてことだ……いつの間にか満潮がフリフリメイド姿に!」

霞(こ、これは想定外だったわ! まさか満潮が、七夕祭りで散々嫌がっていたメイド服を、また着てくるなんて……!)

満潮「べ、別に着たくて着たわけじゃないわよ! ちょうど着る服がコレしかなかっただけよ!」

霞(しかもそんな見え透いた嘘まで用意して……!!)

提督「ではさっそくコーヒー頂こう……あ、砂糖をひとつ貰えるか?」

満潮「スティックシュガーしかないわよ、ほら」スッ

提督「ああ、ありがとう」

満潮「あっ」
提督「あっ」

霞(そして砂糖を渡す時に少しだけ触れてしまう手……大胆なボディタッチとは違う、そこはかとない青春っぽさ!

二人の背景はもう、シュガーのように甘いシャボントーン!)

朝潮「司令官、それより早くお仕事を……!」

霰「おじいちゃん、霰、手元が光る装飾が欲しいな」

荒潮「あら、これシュシュだと思ったら今朝履こうと思っていた下着だったわ。私ったら、慌てんぼさんねぇ」

大潮「司令官! 大潮、索敵を続けます!」

満潮「司令官は仕事を続けなさい! コーヒーは私が飲ませるから!」

提督「あぁ^〜」

霞「ま、まずい……! 気づいたら私だけ何もしてないじゃない……!! 解説なんてしている場合じゃなかった……!」

提督「いやぁ、今日は何だか良い日だなあぁ。あっはっはっは」

霞(くっ……このままじゃ、私が指輪を手に入れる確率は低い! なんとかして逆転の一手を……!!

この際だからルールなんて無視して、とにかくクズ司令官が喜びそうなことを……)グルグルグル

霞(もう……下着を脱いで……頭に被るしか……!!)グルグルグルグル

13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)20:41:58.33ID:f/wl4UGh0


朝潮(はっ!? 霞のあの体勢はもしや……!)

満潮(あの霞が……まさか……)

荒潮(苦悩の末に、行き着いた答えなのね……)

霰(プライドを捨てた、最低な行為……でも、司令官にはたぶん、効果テキメン……)

大潮(霞、トイレでも我慢してたのかな……?)

霞「うぅ……このクズ……私になんてことさせんのよ……」

提督「え? え? どうしたんだ霞?」

霞「うるさい! いいからよく見ておきなさい! これが本気になった私の——————」

コンコン

??「失礼します」

提督「あ、はい」

ガチャッ

??「あの……何やら騒がしいようですが、ここが司令室でよろしいのでしょう……か…………」

一同「………………」

提督「えっと……あ、はい。いかにも司令室ですが」

??「では、この状況について、何かご説明して頂けないでしょうか」

提督「いや、これはその……」

霞(もうやだ、死にたい……)カァアアアア

朝潮「あの……」

??「はい」

朝潮「あなたは艦娘ですが、この鎮守府の方ではありません、よね?」

??「駆逐艦朝潮、あなたの仰る通りです」

朝潮「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか?」

??「そうでしたね。大変申し訳ありません。遅ればせながら自己紹介をさせて頂きます。

私は、軍令部直属部隊、軍令部総長の秘書艦を務めます———————」

一同(軍令部……!!)

??「——————————大和型1番艦、戦艦大和です」

14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)20:51:31.58ID:f/wl4UGh0


〜 駆逐艦寮 会議室 〜

朝潮「今回の議題は……皆も知っての通り、大和さんについてです」

満潮「唐突すぎて驚いたわ……。まさかあんなタイミングで現れるなんて……」

霰「戦艦大和……生で見たのは初めてだったけど、噂ではよく耳にする人……」

霞「まぁ、私たち艦娘の間では有名な人よね。私たちが艦娘になるよりも前……今ほど防衛線が整っていない頃、

深海棲艦による本土への侵攻を、たった一隻で防ぎ切った無敵の戦艦……」

荒潮「そして、当時の指揮官が現軍令部総長であり、大和さんがそのまま秘書艦となった……っていう話だったわよね?」

大潮「でもそんなスゴイ人が、うちに何の用があったんだろう?」

満潮「大潮、あんた話聞いてなかったの? 言ってたでしょ、監査役として来たって」

大潮「ふむふむ監査……つまり?」

朝潮「ここのところ、ずっと軍令部からの風当たりが強かったと、司令官が言っていたわ。

そして、いよいよ軍令部の秘書艦が直接来たということは…………」

霰「司令官が………………クビになるかもしれない」

霞「最悪、この鎮守府そのものの存続にも関わるかもしれないわね」

大潮「えぇー!? そんな! 司令官がいなくなるのも、鎮守府がなくなるのもイヤだよ!!」

朝潮「えぇ……だからこそ、私たちで何とかしようという会議よ」

荒潮「けれど、まず私たちにできることって、何があるのかしら……?」

満潮「あんな変な所を大和さんに見られちゃってるし、むしろ状況を悪化させているわね、私たち……」

霰「朝潮、私たち、一体どうすれば……」

朝潮「それは、私にもどうすればいいか分からない。けれど、必ず何か手はあるはず。

だからまずは監査役としてやって来た大和さんについて、少しまとめておきたいの」

霞「そうは言っても、噂程度しか聞いたことが……」

大和「その会議、私が混ざってもよろしいでしょうか?」

朝潮「はい、まぁ今回は人数が多ければ情報も多く集ま———————」

一同「えぇええーーーーーーーっ!?」

大和「すみません……やはりお邪魔でしたでしょうか?」

霞「あ、あああああアンタい、いいいいつからそこにィ!?」

大和「申し訳ありません、会議が始まるころから、ずっと聞いておりました」

荒潮「あらあら……全部筒抜けだったのね……」

16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)21:00:26.21ID:f/wl4UGh0


朝潮「であれば大和さん。包み隠さず、単刀直入にお伺いします」

大和「はい」

朝潮「軍令部はどうして、司令官に対して嫌がらせのような圧力をかけ続けているのですか?」

一同「…………」ゴクリ

大和「すみません。それは、私からはお答えできません」

霞「はァ!? ちょっとそれどういうことよ! あれだけクズ司令官に嫌がらせして!

私たちにまでその影響が及んでいるのよ!? そうするだけの、真っ当な理由がない限り、納得できないわ!」

大潮「そーだそーだー!」

大和「軍令部がこの鎮守府に対して圧力をかけていること自体は、もちろん私も存じています。

ですがその理由については、私も総長から聞かされておりません」

霰「軍令部総長の意向を、その秘書艦が知らないなんて……ヘン……」

満潮「霰の言う通りだわ。そんな主張、とても信じられない」

大和「皆さんがそう仰られるのは当然だと思います。総長の意向を秘書艦が理解できていないというのも、

私自身、おかしな話だと思います。 ですが本当に、恥ずかしながら……分からないんです」

朝潮「……分かりました。では質問を変えます。大和さんは今回、監査役として当鎮守府にいらしたと

仰っていましたが、具体的な監査項目を教えていただけますか?」

霞「まさかコレも分からないなんて言わないでしょうね?」

大和「……私は、あることを確認し、必要とあれば適切な処置をとるようにと、総長から命を受けて参りました」

大潮「司令官が変態異常者であることを確認したら、即刻その場で打ち首、鎮守府は爆撃処分に!?」

大和「機密事項のため具体的なことは申し上げられませんが、

提督を辞めさせたり、鎮守府を閉鎖させるようなことは致しません」

満潮「ほっ……なんだ、少し安心したわ……」

朝潮「ですが大和さん。司令官への圧力と、今回の監査…………何か関係があるのですね?」

大和「それは……」

荒潮「沈黙は肯定の印……ね」

大和「すみません、私からお答えできるのは、これで全部です」

霰「結局、色々分からないまま……」

一同「………………」

霞「はぁ……。無敵の大和型が、今じゃまるでお人形ね」

荒潮「ちょ、ちょっと霞ちゃん、さすがにそれ以上は……」

大和「…………」

霞「軍令部総長が何をしようとしているのか分からない。けれど命令には従う。

それも深海棲艦との戦闘ならまだしも、こんな下らない監査のため。

危険な海域には私たちのような下っ端に出撃させておいて、大戦艦さまはのうのうと電車に揺られながら味方の偵察?

何が無敵の艦娘よ、何が大和型よ。陸の上で縮こまってるだけの、ただの操り人形じゃない」

大和「………………」

大潮「うわぁ……霞、言い過ぎ……」

荒潮「あ、あの大和さん……霞ちゃんは少し口調が厳しいだけで、別に悪意があるわけじゃ……」

大和「いいえ……霞さんの言う通りだと思います。何度か勲章を頂いたことはありますが、それはもう昔の話です。

最後に艤装を装着して海へ出たのはいつだったでしょうか……。今となっては、陸の上でこんなことばかり

しているような気がします。…………あはは、ダメですね、私」

17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)21:05:58.84ID:f/wl4UGh0


〜 工廠前 〜

朝潮「そして最後に、こちらが工廠です。最近では電探の開発を主に進めています」

大和「ありがとうございます、朝潮さん。私なんかのために、わざわざ鎮守府の案内までして頂いて」

朝潮「いえ、大和さんはしばらく鎮守府に滞在するとのことなので、一度鎮守府全体を見ておいた方が良いと、

司令官も仰っていましたし。私も、誰かに鎮守府の案内をするのは好きなので」

大和「そうでしたか……。それにしても、ここの提督は不思議なお方ですね。

本来であれば目の敵にするはずの私に対して、ここまで良くして頂いて……」

朝潮「司令官は、私たちのことが……艦娘のことが大好きなんです」

大和「え?」

朝潮「たまに怒ったり突き放したり、変なコトもしてきたりしますけど、そのすべてが、私たちに対する愛情なんです。

だからこそ私も、この鎮守府に属する皆も、司令官のことが大好きなんです」

大和「はい……それは皆さんを見ていると、本当によく伝わってきます。

だからこそ、あの時の霞さんの言葉は、私の心に深く刺さりました」

朝潮「あ……すみません! 霞は決して、悪い子では……!!」

大和「はい、それはもちろん分かっていますよ。私がただ、事実を突きつけられだけですから。

昔は私も未熟者でしたが、現総長と二人で二人三脚で頑張ってきました。辛くて苦しい場面に何度も直面しましたが、

そのたびに乗り越えてきました。…………とある、ひとつの夢のために」

朝潮「私たちと、同じなんですね」

大和「ですが、私も総長も、役職が上がるたびに出撃回数は減り、今となっては総長のお考えが私には分かりません」

朝潮「大和さん……」

大和「今思えば司令室の扉を開けてあなたたちと提督の姿を見た瞬間、少し昔の自分を思い出していたのかもしれません。

夢に向かって突き進むだけの、楽しかったあの時を……」

朝潮「…………」

大和「あ、すみません朝潮さん。こんな暗いお話をするつもりではなかったのですが、あははは」

朝潮「大和さん!」

大和「は、はい?」

朝潮「私、あなたのことを誤解していました。同じ艦娘、平和を取り戻す者として、共に奮闘している同志なのですね」

大和「朝潮さん……」

朝潮「私たち朝潮型駆逐隊は、あなたを歓迎します!」

18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)21:38:42.05ID:f/wl4UGh0


〜 別の日 夜 司令室 〜

提督「なんだか最近、賑やかになってないか? この部屋」

朝潮「えぇ、まぁ……」

大和「すみません、執務のお邪魔にはならにように努めますので……」

提督「いやまぁ、別に立入禁止というわけじゃないからいいんだが……」

大潮「ねぇねぇ満潮ー、おせんべいはー?」

満潮「無いわよ。全部あんたが食べたから」

大潮「えーっ!? もう誰だよ大潮のおせんべい食べたのー!」

満潮「だからあんただってば! っていうか、もともと私のお煎餅だからね?!」

荒潮「あらぁ霰ちゃん、椅子なんて持ち込んじゃって、気持ちよさそうねぇ」

霰「この場所、結構気に入ったかも」グデーン

荒潮「あらあら、じゃあ私も、布団でも持ってこようかしら?」

霞「アンタたち、人の部屋でくつろぎすぎでしょ……」

朝潮(大和さんの件で色々とうやむやになってしまったけれど、アピール作戦に関しては誰も忘れていないみたいね……)

提督「皆そろそろ風呂にでも入ってきたらどうだ?」

大潮「おおー、気付けばもうこんな時間!」

荒潮「あら、じゃあ司令官もご一緒します?」

提督「よし。ではそうしよう」

大和「……はい? あの……提督もご一緒されるというのは、つまりどういう……」

提督「裸と裸の付き合い。これがウチのやり方でな」

大和「そ、そうだったのですね……」

満潮「なワケないでしょ!!」

霞「アンタのお風呂は別! さっき『私が』沸かしておいたから、さっさと入りなさい!!」

霰「霞の……さり気ないできる子アピール……」

朝潮「私の仕事なのに……」ショボン

提督「おぉ、さすが霞だ。気が利くじゃないか」ナデナデ

霞「と、当然よ! っていうか、気安く触らないでよねっ」プイッ

一同( すごく嬉しそう…… )

大潮「ねーねー、じゃあ大和さんは、大潮たちと一緒に入ろうよ!」

大和「え? よろしいのですか……?」

朝潮「はい。私たち、大和さんとお話ししたいことがたくさんありますし」

荒潮「来客用のお風呂って、なんだか味気ないものねぇ」

満潮「まぁ、いいんじゃないの? 広いし。霞はどう?」

霞「な、何でいちいち私に振るのよ……。 ……構わないわよ、別に」

大和「ありがとうございます。ご一緒させて頂きますね」

大潮「よーし、そうと決まればお風呂にゴー!」

提督「いやぁ、大勢でお風呂って楽しいよなぁ」

霞「…………あん?」

提督「冗談です」

霰「強いて言うなら、ここまでの一連の流れがウチのやり方……」

大和「あははは……」

19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)21:52:14.77ID:f/wl4UGh0


〜 駆逐艦寮 大浴場 〜

カポーン

大和「本当に大きいですねぇ、駆逐艦寮の浴場は……」

朝潮「はい。少し前までは一番少なかったのですが、今ではたくさんの駆逐艦がいますから」

大和「軍令部ではいつも個室のお風呂でしたので、なんだか感動です」

大潮「うん……すごいよこれ、この大きさは、本当に感動ものだよ……ッ!」ペターン

大和「はい、そうですね」ドーン

満潮「大潮、あんたドコ見て言ってんのよ……」

霞「さすがだわ。軍令部の秘書艦様ともなれば、個室のお風呂が与えられちゃうのね」

荒潮「もぉ、霞ちゃんったらまた悪態ついちゃって」

霞「う、うるさいわね……」

霰「わたしは……広いお風呂で、皆と一緒の方がすき……」

大和「私も同感です、霰さん。こうやって誰かとお風呂に入るのも、かなり久しぶりです」

満潮「逆に私たちは、一人で入浴することなんて滅多にないわねぇ」

大潮「あっ、ハイハーイ! 大潮、大和さんに質問がありまーす!」

大和「はい、何でしょう?」

大潮「軍令部って、どんな所なの? 何があるのー?」

満潮「随分とまたキワドイ質問ねぇ……」

大和「ふふっ、いいですよ。まず軍令部は、こちらと同じで海に面しています。

ですが中枢都市に存在しているということもあり、どちらかというと機械や人混みといった

環境音であふれる場所になります」

霰「波の音が聞こえないのは……ちょっと不安になりそう」

荒潮「ある意味、職業病ねぇ……」

大和「ですが少し行ったところには山もあるので、鳥や虫たちの鳴き声が聞こえてきて、とても風流ですよ」

朝潮「そうなんですか。あ、山ならウチにもありますよ」

大和「ここへ来る途中に見えました。なんという山なのでしょう?」

大潮「その名も…………うらめし山」

満潮「勝手に変な名前つけるな」

霰「“温羅山(うらやま)”っていう名前の山で、鬼とか幽霊とかが出るって言われてる山」

大和「お、鬼や幽霊!? 本当ですか?」

霞「そうやって言われてるだけよ。実際は艦娘の墓標として存在しているみたいね」

大和「そうなのですか……とはいえ、少し怖い気もしますね」

朝潮「ただの山ですし、なんてことはありませんよ」

満潮「いやいやいや、朝潮が一番怖がってたでしょうが」

大潮「そうそう! そういえば朝潮、真夜中にその山で迷子になったんですよー」

大和「それは大変でしたね。提督も、さぞご心配されたことでしょう」

荒潮「あの時は逆に、キリッとしてたわよねぇ、司令官」

霞「まぁ、実は無理してただけで、失神寸前だった、っていう裏話もあり得そうだけど……」

20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)21:58:25.68ID:f/wl4UGh0


〜 数分後 〜

大和「それから軍令部は、鎮守府と違って艦娘が少なく、男性の軍人さんが多いですね」

満潮「まぁ、中枢部だものね」

大和「それに厳格な方が多く集まっているので、この鎮守府のように司令室に集まってお喋りするようなことはできませんね」

大潮「うえー、大潮、堅苦しいのは苦手だなぁ」

霞「何しろ、急に司令室に呼び出されたと思ったら、ふざけたクイズ大会が始まるくらいだものね、ウチは」

大和「クイズ大会?」

朝潮「ふふっ、霞が落ち込んでいる時期があって、見かねた司令官が元気づけるために開催したんですよ」

大和「艦娘のメンタルケアまで、面倒見の良い提督ですね」

霞「あ、あれは結局クズ司令官が、私を弄んだだけで……!」

荒潮「でも、最終的にはご機嫌になったじゃない」

霰「おまけに第二改装まで受けられて」

大和「そういえば霞さんは、朝潮型駆逐隊の中で、唯一の改二でしたね?」

霞「別に改二になったからって、特に変わりはないわよ」

霰「司令官のことがより好きになったってことくらい」ボソッ

霞「うーるーさーいー!!」グイー グイー

霰「あうあうあう」

大和「くすっ」

霞「あっ! いま笑ったわね……戦艦だからって、容赦しないわよ!」

満潮「まぁまぁ霞」

荒潮「今更そんなムキにならなくても、ねぇ?」

大潮「そーそー。もう認めちゃえばいいのに」

朝潮「霞が皆や司令官のことが大好きなことくらい、みんな知っているわ」

霞「あーもう! 何なのよォー!!」

大和「うふっ、あはははは」

一同「あはははははっ」

22:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)22:05:44.69ID:f/wl4UGh0


〜 別の日 演習後 桟橋 〜

大和「皆さん、演習お疲れさまでした。よろしければこれ、大和特製ラムネです」

大潮「うおおおー!! なにこれ、なんかスゴそう! 貰っていいの!?」

大和「はい。お口に合えば良いのですが」

満潮「ふーん。じゃあ、遠慮なく頂くわ」ゴクゴク

荒潮「あら、美味しい」

霰「口の中が……シュワシュワする……」

霞「まぁ、疲れた後の一杯としては、悪くないわね」

朝潮「ありがとうございます大和さん」

大和「うふふ、いいんです。半分趣味みたいなものですし、それに皆さんの素晴らしい演習も見られましたし」

霞「それはどーも。でも、どうせ言うなら、悪い点を指摘してくれた方がこちらとしてはありがたいんだけど?」

大和「悪い点、ですか?」

荒潮「ここに来たばかりの頃は色んな人に教わってきたけれど、今ではそういうことも無いものねぇ」

霰「初心に帰ること……大事だと思う」

大和「そうですねぇ……本当に非の打ちどころのない技術と艦隊運動だとは思いますが、

一点だけ気になることがありました」

大潮「え、なになに!」

満潮「遠慮なく言ってちょうだい」

大和「では……皆さん、何かを急いてはいませんか?」

朝潮「急いている……?」

大和「各々が焦っていると言いますか、手柄を立てるために前へ出すぎているように思えました。

うまく表現できませんが、成長するための演習というより、魅せるための演習……みたいな」

一同「………………」

大和「どうやら、何か心当たりがおありのようですね」

霞「軍令部の秘書艦なら当然知ってるわよね。……ケッコンカッコカリってのがあるんでしょ?」

大和「…………はい、もちろん存じ上げております」

荒潮「うちの鎮守府における最高練度の艦娘は、ほぼ間違いなく私たち朝潮型駆逐隊」

満潮「でもシステムの適用を許されているのはひとりだけ……」

霰「演習の結果は、いつも司令官に報告されるから」

大潮「成績が良ければ、司令官に選んでもらえるでしょ!?」

大和「なるほど……それで皆さん、あんなにも張り切っていたのですね」

朝潮「教えてください大和さん。ケッコンカッコカリとは何なのでしょうか?

朝潮型駆逐隊が、そろって適用されることはないのでしょうか??」

23:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)22:14:46.57ID:f/wl4UGh0


大和「そうですね……ケッコンカッコカリというのは、提督との絆を深めるシステムです。

指輪はそのための媒介装置であり、艦娘の心と、艤装に宿る魂に共鳴すると言われています」

大潮「……え? んん? どういうこと??」

大和「要するに、最高練度という条件さえ満たしていれば、指輪の数だけケッコンカッコカリを適用できるということです」

荒潮「指輪が六つあれば、私たち全員に適用することもできるということね」

満潮「でも、それができないから一つしか支給されないんでしょ?」

大和「はい。指輪の製造には莫大な費用と年月を要すると言われています。

将来的にどうなるかは分かりませんが、現時点では各鎮守府にひとつとされています」

霰「やっぱり……この中でひとりだけ……」

霞「分かったわ。じゃあ質問を変えるけど、その指輪の効果って結局何なの?」

朝潮「文書では耐久と運と燃費が向上すると記載されていましたが、それだけではイマイチ分かりません」

大和「では順番に説明いたしましょう。

まず耐久についてですが、これはその名の通り、艤装の耐久度を意味します。

通常であれば大破して航行不能となる場面でも、場合によっては中破で持ちこたえることがあるかもしれません」

大潮「そっかー! 夜戦ともなれば、大破と中破じゃ大違いだもんね!!」

荒潮「大事な局面で撤退を余儀なくされるというケースも、もしかしたら減るかもしれないわね」

大和「そして運についてですが、これは一般的に言われている運勢とは別物です。

たとえば夜戦等において深海棲艦と肉薄した際、

確実に敵を仕留めることができるというタイミングを、実感したことはありませんか?」

霰「ある……。その瞬間を狙って魚雷を発射すると、ほぼ確実に敵を撃沈できる」

大和「軍令部ではそのタイミングの見つけやすさを『運』と呼称しているのです」

満潮「なるほどね。つまり運が高ければ夜戦で敵を仕留められる確率が上がるってわけね。

それで、その指輪にはその『運』を上昇させる効果があると」

大和「その通りです。では最後に、燃費の向上についてです。まず具体的な数値を挙げますと、

システム適用前と比べて燃料と弾薬の消費量がおよそ15%軽減することが分かっています」

大潮「うおー! エコだ! すごーい!」

霞「でもちょっと待って? そもそも駆逐艦と戦艦とじゃ、消費量は雲泥の差よ。

戦艦ならまだしも、駆逐艦にとってはそれほど恩恵がないんじゃないの?」

大和「それも仰る通りです。あなた達を前にしては言いにくいことですが、

そもそもこのケッコンカッコカリというものは、戦艦や空母といった大型艦を強化するという

目的で実装されたシステムみたいなので、あまり駆逐艦向きではないのかもしれません」

朝潮「そ、そんな……。では駆逐艦への適用は、認められないということなのですか!?」

大和「いえ、そのようなことは決して」

霞「そういうわけではないけれど、軍令部の意向としては、大型艦に適用するべき、なんでしょ?」

大和「はい……。軍令部においては、大艦巨砲主義が基本的な考え方ですので……」

24:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)22:26:03.59ID:f/wl4UGh0


荒潮「前から気になってはいたけれど、大和さんがしているその指輪って……」

大和「はい。これは総長から頂いたものです」

大潮「うおー! これが指輪かぁ〜。もっとよく見せてー!」

満潮「やめなさい大潮、汚い手で」

大潮「えぇー、汚くなんかないよー!」

霰「大和さんに指輪の効果が加わったら、もはや敵なし……」

荒潮「燃費の問題から見ても、効果は抜群よねぇ」

霞「…………」

朝潮「司令官は……本当に私たちの誰かに、指輪を渡してくださるのでしょうか……」

大和「朝潮さん……」

霞「はぁ……ついに言ったわね、朝潮……」

満潮「この流れからして、大潮あたりを除いた全員が薄々気づき始めていたけれど……」

大潮「お、大潮だって気づき始めてたってー!」

霰「別に私たちの中の誰かでなくても、戦艦や空母の人たちの成長を待って、

最高練度に達したときに指輪を渡すという選択肢もあるはず……」

荒潮「そんな……深く考えるのはやめましょう? それは司令官が考えることであって、私たちは……」

朝潮「だって、よく考えたらおかしいわ……。 ケッコンカッコカリ実装の手紙が届いたのはもうずっと前の話なのに、

全体周知どころか、秘書艦の私にだって何も聞かされていない……」

荒潮「朝潮……」

26:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)22:32:26.50ID:f/wl4UGh0


朝潮「これはつまり、戦艦や空母の方たちが最高練度に達するまで、話自体を伏せておこうという司令官の配慮……」

霞「憶測ばかりで物を考えるのは良くないけれど、今回ばかりはそう考えざるを得ないわね」

大潮「同じ練度になれば、強いのはどう考えたって大型艦だもんねぇ……」

満潮「悔しいけれど、性能差がありすぎるわ」

霰「……そう考えれば、司令官の判断は正しいのかも」

荒潮「所詮私たちは、駆逐艦の中では強いだけ。戦艦や空母と同じ土俵には立てないものね……」

朝潮「司令官は最初から、私たちに指輪を渡すつもりなんて、なかったんだわ……」

一同「………………」

大和「私は、最初に言ったはずです」

一同「…………??」

大和「ケッコンカッコカリとは“絆を深める”システムです、と。これは文書の一番初めにも書かれている言葉です」

朝潮「絆を……深める……」

大和「はい。色々と細かいお話をしてきましたが、このシステムの第一目的は“絆を深める”ことであると、

総長は仰っておりました。それは艦隊を運営する上での単なる『システム』ではなく、

本当の結婚のように、心と心を繋ぐ『 印 』であると」

霞「でも……そうは言っても軍令部の方針は———」

大和「たしかに、大型艦に渡すべきであるという風潮はあります。ですが考えてもみてください。

あのユニークな提督が、そんな軍令部の方針に従うでしょうか?」

満潮「それは……」

大和「それは私よりも、あなた達が一番、よくご存じではないでしょうか?」

一同「…………」

27:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)22:37:43.84ID:f/wl4UGh0


大潮「そっか……そうだよね! なんたって司令官だもん!」

霰「司令官はいつも、常識にとらわれない」

荒潮「司令官は私たちに、ゾッコンだものね? うふふっ」

ピーンポーンパーンポーン

霰「あ、構内放送……」

提督『朝潮型駆逐隊、大事なお話があるので至急司令室まで来るように』

霞「噂をすれば、ね」

朝潮「もしかしたら、大事なお話って……!!」

満潮「考えても無駄。さっさと行くわよ!」ダッ

大潮「あ、待ってよぉー!」

荒潮「あらあら、早く着いたからといって、評価は変わらないわよぉ」

霰「うぅ……荒潮もそう言いつつ、全力疾走してる……」

霞「まったく、やれやれね。朝潮、私たちも行きましょう」

朝潮「えぇ。……あ、大和さん」

大和「はい」

朝潮「ありがとうございます」

大和「ふふっ、できるといいですね、ケッコン」

朝潮「は、はい……」カァアアッ

霞「朝潮ー! 置いていくわよー!」

朝潮「今行くわー!」タッタッタッ

大和「あの子たちも、私と同じなのですね。

総長、この気持ちは届いていますか? 私が本当に欲しいのは—————」

29:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)22:44:43.66ID:f/wl4UGh0


〜 司令室 〜

提督「皆、急に呼び出してしまってすまない。さっそくだが、大事な話というのは——————」

一同(ケッコンカッコカリケッコンカッコカリケッコンカッコカリケッコンカッコカリケッコンカッコカリ)ブツブツブツ

提督「けっこん————」

一同(キタ!!!)キラーン

提督「……失礼、けっこう酷な出撃任務なんだけどな」

一同(………………)ガーン

提督「お、おい……なに落ち込んでるんだ。まだ内容は何も言ってないぞ」

朝潮「し、失礼しました司令官。それで、朝潮型駆逐隊の出撃任務とは?」

提督「南方海域に突如姿を現した、新種の深海棲艦の撃破だ」

大潮「新種の深海棲艦!? 強いの?」

提督「非常に強力で、特に装甲がかなり硬いとの報告が上がっている」

荒潮「あら? 装甲の厚い大型艦なら、戦艦や空母の出番じゃないの?」

提督「軍令部はその深海棲艦を、『軽巡棲鬼』と名付けたそうだ」

満潮「軽巡? 大型艦じゃないってこと??」

霞「なるほどね……固い上に機動力もある深海棲艦……これはたしかに厄介ね」

霰「そして決め手になるのは……私たち駆逐艦の、夜戦火力……」

提督「うむ、その通りだ。物分かりが良くて助かる」

朝潮「これが私たちの……私たちにしかできない任務……」

提督「そうだ。既に中央鎮守府から陽炎型の駆逐隊を何度か送り込んだそうだが、作戦は失敗している」

大潮「大丈夫! 大潮たちなら、できる!」

満潮「相変わらず適当な自信ね……」

提督「もちろん、君たちならできると思ってこの話をしている。……朝潮、やってくれるか?」

朝潮「はい! 朝潮型駆逐隊……総力をあげて、必ずや作戦を成功させてみせます!!」

30:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)22:54:17.55ID:f/wl4UGh0


〜 南方海域 〜

朝潮「各艦、被害報告」

大潮「大潮、パーフェクト!」

満潮「満潮、損傷なし」

荒潮「荒潮、同じく損傷なし」

霰「霰、平気」

霞「霞、無傷よ」

朝潮「よし、全員ここまで損傷なし。最高の気分ね」

霰「そろそろ最終目標地点のはず……」

朝潮「そうね……大潮、満潮、羅針盤に変動は?」

大潮「異常なし!」

満潮「このまま南東へ真っ直ぐ。そろそろ小島がいくつか見えてくるはずよ」

荒潮「少し不気味な雰囲気になってきたわね……」

朝潮「今回の任務は軽巡棲鬼の撃破……。この辺りに現れるのは間違いないはず……。

敵の偵察機に捕捉される前に、敵艦を発見する必要があるわ」

満潮「グズグズしてられないわね」

朝潮「えぇ。よし……両舷前進、強速! 全方位、索敵を厳に! 島影に注意して!」

一同「了解!」

朝潮( 私たち駆逐艦が、戦艦や空母に劣る? ううん、そんなことはない!

今回の出撃だって、司令官は私たちを選んでくれた。私たちならできると、言ってくれた!

私たちは強い。戦艦や空母よりも……朝潮型駆逐隊が、一番強い!! )

霞「敵艦見ゆっ!!」

一同「!?」

霞「十字方向、小島の影から六隻!」

朝潮「霰、望遠鏡!」

霰「…………駆逐3、戦艦2……それから、軽巡棲鬼」

満潮「ビンゴね」

荒潮「向こうもこちらに気付き始めたわぁ」

朝潮「偵察機を持つ相手に、索敵で後れをとらなかったのは大きいわね。……みんな、準備はいい?」

大潮「いつでも大丈夫!」

霞「ひとり残らず叩きのめしてやるわ」

荒潮「うふふふふっ、なんだかワクワクしてきたわぁ」

霰「絶対に……勝つ」

満潮「さぁ朝潮、ちゃっちゃと始めましょう」

朝潮「えぇ……それじゃあ、朝潮型駆逐隊! これより、戦闘態勢に移行します!!」

一同「了解!!」

31:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:02:29.04ID:f/wl4UGh0


大潮「まずは反航戦だー!」

朝潮「両舷前進、最大戦速! ターゲットは敵の駆逐艦三隻に固定!」

荒潮「かわいそうかしら? うふふっ、一撃で仕留めてあげるから」

朝潮「砲戦用意! ……撃てぇーーーー!!!」

朝潮「報告!」

大潮「駆逐艦を撃沈! うっ、あいったたたぁ〜」

朝潮「大潮、大丈夫?」

大潮「うぅ、軽巡棲鬼の砲撃がかすっただけで中破だよぉ。でも大潮、まだ、大丈夫だから!」

霞「うっ……あの戦艦にやられた……。被害としては小破だけど、魚雷発射管がイカれたわ」

荒潮「うふふ、小破したけれど、私も駆逐艦を撃沈したわ」

霰「損傷なし」

満潮「私も無傷よ」

朝潮「私が撃沈させた駆逐艦も合わせると計三隻の撃沈……。

こちらの被害は、大潮が中破、霞と荒潮が小破ね。概ね予定通り……行ける!!」

霰「朝潮、次はどうする?」

満潮「まだ夕暮れ時……夜戦を始めるには早すぎるわ」

朝潮「そうね……皆、軽巡棲鬼の姿は見た?」

霞「嫌でもよく見えたわ……。あれ、ヲ級やタ級よりももっと……完全に人型だったわね……」

大潮「大潮、あれに睨まれた気がする。殺意の塊だったよぉ〜」

朝潮「そうね……。きっとあの深海棲艦は、今まで見てきた中でも、かなり知能の高い部類だと思う。

こちらの目的が艦隊としての勝利ではなく、軽巡棲鬼の撃破であるということも、おそらく向こうは勘付いているわ」

荒潮「このまま夜を待って夜戦へ突入しても、軽巡棲鬼は戦艦にかばわれる……?」

朝潮「そういうこと」

霰「なら一体……」

朝潮「残りの戦艦二隻を…………昼のうちに沈めます」

満潮「せ、戦艦二隻を、昼のうちに!?」

霞「くくく……滅茶苦茶言ってくれるじゃない。でも……燃えてきたわ!」

大潮「うおー! すごい! すごい!」

荒潮「朝潮? 何か策があるの?」

朝潮「えぇ……一度しか言わないから、皆よく聞いて———————」

32:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:08:09.68ID:f/wl4UGh0


朝潮「作戦開始!」

大潮「いよーーっし! 頑張るぞー!!」

朝潮「大潮……本当に大丈夫? かなり大変な役目よ」

大潮「もぉ、朝潮は心配性なんだから。大丈夫、大潮にドーンと任せてよ!」

朝潮「信じるわ大潮……沈まないで」

大潮「へへん、朝潮もね!」

朝潮「じゃあ行くわよ……両舷前進! 最大戦速!!」

大潮「よーし…………うわっ、出た! 後方に戦艦二隻と軽巡棲鬼!!」

朝潮「よし、うまく引き付けられたわね……。撃ってくるわよ! 最大戦速を維持したまま之字運動!」

ドォオオオン! ドォオオオン! ドォオオオン!!

大潮「うわぁああああすごい轟音! 当たるよ! 当たるってぇええ!!」

朝潮「当たらないで!」

大潮「そんな簡単に言うけどぉおおおおお!!」

朝潮「じゃあ祈って!!」

大潮「うわぁあああああ危ない! 危ないってばぁああ!!」

霞「大潮そのまま! 当たるんじゃないわよ!!」

荒潮「うふふふ、軽巡棲鬼さん? あなたの相手は、私たちよ?」

軽巡棲鬼「………………ニドトフジョウデキナイ……シンカイヘ………………シズメェッ!」

霞「こいつ、喋るの!?」

荒潮「あらあら、面白いじゃない。私たちと口喧嘩でもする気かしら?」

霞「ふんっ、良い度胸ね。泣いたって、許してあげないんだから!!」

33:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:15:46.03ID:f/wl4UGh0


朝潮「よし……軽巡棲鬼の離脱を確認。霞、荒潮、頼んだわよ……」

大潮「うわっ!? え、あれ!?」

朝潮「どうしたの大潮! 被弾!?」

大潮「違う! 違うけど……あれ!? なんか主機から異音がするよ! 出力も落ちてる!!」

朝潮「くっ……あと少しなのに……。なんとか持ちこたえて!」

大潮「ぐぬぬぬぬっ! あほー! もっと速く動けぇええっ!!」

朝潮「満潮、霰、聞こえる?! そちらの状況は?」

霰『聞こえる』

満潮『持ち場についたわ。いつでも行ける』

朝潮「大潮がもう限界なの! なんとか一撃で仕留めて!」

霰『朝潮、落ち着いて』

満潮『ちょっとは信用しなさいよね』

朝潮「うん……ありがとう。二人の声が聴けて、安心したわ」

大潮「うおおおおっ!! 大潮、絶対にそっちまで行くからぁあああっ!!」

ドォオオオン! ドォオオオン! ドォオオオン!!

朝潮(ここから約2km先に島がある……。島の近海には、あらかじめ満潮と霰が機雷を設置。

水しぶきが上がって敵の目を眩ませた瞬間に、島影から霰と満潮が超至近距離からの挟撃……。

敵を引き付けているうちに私と大潮は大破するかもしれないけれど、

これなら霰と満潮を無傷のまま夜戦へ送り出せる!)

34:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:24:01.23ID:f/wl4UGh0


大潮「ぐぅうう……ううっ……!」

朝潮「大潮、血が!」

大潮「大丈夫! 破片がかすっただけ!」

朝潮「あと少し……あと少しよ! あの場所まで行けば……たどり着きさえすれば——————」

ドォオオオン!

大潮「うわぁあああああああっ!!」

朝潮「大潮ッ!!」

大潮「うぅ……」

朝潮「だめ……直撃弾……。大潮、意識がない……しっかりして! 大潮! 大潮!!」

大潮「…………」

朝潮「このままじゃ……」

大潮「うぅ……朝潮……いっ……」

朝潮「大潮! 良かった、気が付いたのね! さぁ手を! 私が曳航するわ!!」

大潮「だめ……朝潮……行って……」

朝潮「なっ……何言ってるのよ!! 大潮を置いて行けるわけ!」

大潮「倒して…………勝って…………司令官に……褒めて、もらっ……て……ケッコン……」

朝潮「もうバカ! こんな時に……何言ってるのよ!!」

大潮「…………」

朝潮「大潮! 起きて!! 大潮ーーーーーーーっ!!!」

35:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:30:49.41ID:f/wl4UGh0


霞「ちっ……この距離からの砲戦で倒せるとは思ってないけど……」

荒潮「本当に時間稼ぎにしかならないわねぇ」

霞「それに、少しでも気を抜いたら! 一撃でやられる!」

荒潮「朝潮たちの心配を、してる場合じゃないわね!」

霞「荒潮、各自最大戦速で回避運動を取りつつ砲撃、いいわね?」

荒潮「うふふ、了解よ」

霞「いい? お願いだから衝突とかやめてよね! すっごい痛いわよ!」

荒潮「あら、霞ちゃんこそ。射線上に出てきても、私、撃っちゃうわよ?」

霞「ふんっ、そしたら撃ち返してあげるわよ!」

荒潮「うっふふふふ、それじゃあ、行くわよぉ〜!」

霞「くっ……お喋りするだけあって、なかなかやるじゃないの……」

荒潮「霞ちゃん! そっちに行ったわよ!」

霞「くそっ……両舷後進一杯! 後退しながら砲撃を……—————」

プスッ……  プスッ……

霞「主機が……くっ、吹かしすぎた!? だめ、体勢を立て直せない!」

軽巡棲鬼「……シズメ……シズメ……シズメ!!」

霞「ううっ!」

荒潮「霞ちゃん!」

霞「うっ……平気よ。主砲がぶっ飛んだだけだから……」

荒潮「主機は大丈夫なの!?」

霞「ちょっと最大戦速で吹かしすぎたみたいね。一時的に停止しただけで、今は大丈夫」

荒潮「そう……。でも、これ以上は無理ね。朝潮たちの方も決着がついている時間だし、そろそろ離脱しましょう」

36:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:36:12.75ID:f/wl4UGh0


霞「悔しいけど……そうね、そうするわ」

軽巡棲鬼「サセヌ……サセヌワ……!」

荒潮「逃がさないつもりね……。霞ちゃん、もう一度最大戦速、行ける?」

霞「知らないわよ! やってみるしかないでしょうが!!」

荒潮「撃ってくるわよ!」

霞「両舷前進、最大戦速!!」

ブォオオオオン!! ……プスッ……プスッ……

荒潮「そ、そんな……」

霞「くっ、速度が上がらない! この速度のまま朝潮たちの所まで逃げるしかないわ!」

軽巡棲鬼「シズメ! シンカイヘ……シズメ!!」

荒潮「霞ちゃん、危ない!!」

ドォオオオオオン!!

荒潮「うっ……くぅ……」

霞「あ、荒潮! アンタ、何かばってんのよ!!」

荒潮「大丈夫……主砲は守ったわ……これ、霞ちゃんが、使うのよ……」

霞「アホ! 装備よりも自分の身を守りなさいよ!!」

荒潮「うふっ……お説教はあとよ。私の主機は大丈夫みたいだから、このまま離脱しましょう」

霞「くっそォーーー!!」

37:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:41:58.23ID:f/wl4UGh0


朝潮「大潮……大潮ってば!!」

大潮「………………」

深海棲艦「ウオオオォオオン!!」

朝潮( ダメ……やられる……!! )

満潮「作戦変更よ、朝潮」

朝潮「満潮……どうしてここに……!」

満潮「どうしてじゃないでしょ。あんた達がもうダメそうだったから、迎えに来たんでしょうが」

霰「間に合って、よかった……」

朝潮「霰……。はっ、作戦変更って、どうするつもり!?」

霰「わたしと満潮が二人で……」

満潮「ぶっ潰すのよ、戦艦を」

朝潮「えっ……ちょ、それって……」

満潮「朝潮、あんたは大潮を安全なところに運んで! それから軽巡棲鬼との戦いにでも備えてなさい!」

朝潮「二人とも……」

霰「このデカイの二つは…………私たちが片付ける」

朝潮「くっ……大潮を移したら、すぐに追いつくから!!」

満潮「さーて霰、一世一代の大勝負よ」

霰「うん……」

満潮「なに? 怖いの?」

霰「荒潮がキレた時の戦慄に比べたら、そうでもない」

満潮「ぷっ、あとで荒潮に言っとくわ」

霰「ちょっと……」

満潮「冗談よ。それよりどうするつもり?」

霰「深海棲艦の喉元に魚雷を投げる。これしかない」

満潮「シンプルで分かりやすいわね。おっけー、それで行きましょ」

霰「やっぱり砲戦より、水雷戦…………あ、来た」

満潮「さぁいらっしゃい深海棲艦! その先にあるのは……地獄よ!!」

38:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:50:37.54ID:f/wl4UGh0


朝潮( もう夜だ……暗闇の世界……。お願い皆……無事でいて!! )

??「朝潮!!」

朝潮「えっ、誰!? どこにいるの!?」

霞「ここよ、ここ」

朝潮「霞……無事だったのね、よかった」

霞「一時は死ぬかと思ったけど、おかげ様で何とか小破止まりよ。あ、それから荒潮もいるわ」

荒潮「うふふ……ごめんねぇ朝潮。私、ちょっぴり無茶しすぎちゃって」

朝潮「荒潮! ううん……無事でいてくれただけで、本当に良かった……」

霞「大潮は? 生きてる?」

朝潮「向こうの島に退避させておいたわ。出血もしていたけど、大したことはないみたい」

荒潮「さすがは大潮ちゃん……タフねぇ」

霞「じゃあ満潮と霰は? 今頃はあの世?」

満潮『聞こえてるわよバカ……勝手に殺さないで……』

朝潮「無線……! 満潮、無事なのね?」

満潮『えぇ、大破したけど何とかね。ほら、霰も何か言いなさいよ』

霰『疲れた……死にそう……』

霞「ふぅ……残念、元気そうね」

満潮『そうそう、デカブツ戦艦なら二隻とも仕留めたから、存分に褒めるといいわ』

荒潮「あらあら……大手柄ね、二人とも」

朝潮「となると、敵の残存は軽巡棲鬼のみね……」

39:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/26(土)23:57:37.44ID:f/wl4UGh0


荒潮「闇に紛れてなんとか振り切ったけれど、アレ、まだきっと近くをうろついているわねぇ」

朝潮「そしてこちらの状況は……大潮、荒潮、満潮、霰が大破。霞が小破ね……」

霞「魚雷発射管がイカれてて、雷撃ができないポンコツ仕様だからよろしく」

荒潮「かなり厳しい状況ね……」

霞「けれど、可能性はゼロじゃない」

霰『とても危険……だと思う』

満潮『別に撤退するって言っても、私たちは恨んだりしないわよ、朝潮』

朝潮「………………いいえ、やるわ、夜戦」

荒潮「朝潮……」

朝潮「ここまで皆、死ぬ気でバトンを繋いできた……こんなところで、みすみす手放すわけにはいかないわ!

それに大潮も、勝ってくれって、倒してくれって、言っていたから」

霞「そうね、天国の大潮の分までね」

荒潮「ふふっ、もう、霞ちゃんってば」

朝潮「これが最後よ……霞、付き合ってくれる?」

霞「当然よ。アンタがそう言うなら、断る理由なんてないわ、リーダー!」

荒潮「二人ともさすがね。じゃあ私は一度満潮ちゃん達と合流してから、大潮ちゃんの所に行ってるわね?」

朝潮「えぇ。皆のこと、頼んだわよ、荒潮」

荒潮「うふっ、頼まれましたっ」

霞「それじゃあ朝潮、ちょっとそこまで、深海棲艦に……風穴開けに行くわよ!」

40:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/27(日)00:10:38.48ID:fve4OYoA0


朝潮「両舷前進、微速……音を立てないで」

霞「無茶言わないでよ……私の主機、そろそろガタが来てるんだから……」

朝潮「今夜だけ……何とか乗り切って」

霞「いや、私に言われても」

朝潮「…………」

霞「…………」

朝潮「……いたわ。見える?」

霞「どんな視力してんのよ……。普通気づく? あんなの」

朝潮「あちらはまだ、私たちに気づいてない。絶好のチャンスよ」

霞「作戦は?」

朝潮「…………」

霞「ちょっと朝潮、もしかしてアンタ、今さら私に遠慮しようとしてない?」

朝潮「そ、それは……」

霞「図星みたいね……。いい? 私のことは将棋の駒や働きアリとでも思いなさい!

どういう扱いをしてもいいから、アンタの思う最善の策を提供してちょうだい!」

朝潮「……分かったわ。レッサーパンダだと思うことにする。可愛いから」

霞「いや、いいから、そういうの」

朝潮「じゃあ作戦だけど————————」

41:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/27(日)00:13:56.92ID:fve4OYoA0


霞「できればもう二度とあんな化け物と対面したくはなかったんだけど……。

まったく無茶を言うわね、うちの旗艦は……。 ふふっ、でもそれくらいじゃないと、つまらないわ!」

霞( さぁお願い……これっきりでいい……しっかり動いて! 駆逐艦霞の主機なら、根性見せてみなさいよッ!! )

霞「両舷前進! 最大戦速!! 動けぇええええええっ!!」

ブォオオオオオオオン!!!

霞( やった!!  ……って、これで喜んでどうするのよ。これからが本番だって、いうのにね!! )

霞「探照灯、照射!!」

軽巡棲鬼「オノレ…………オノレ……!!」

霞「当たってたまるもんですか!!」

霞( どんなに硬くたって、ゼロ距離で砲撃すれば……!! )

軽巡棲鬼「ウウゥウウウ!!」

霞「唸ったって当たらないわよポンコツ! さぁ、そろそろ行くわよォ!!」

軽巡棲鬼「シズメェ!!」
霞「沈みなさい!!」

ドォオオオオオオオオン!!

42:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/27(日)00:24:37.85ID:fve4OYoA0


霞「うわぁあああああっ!! うぅ……痛い……くそ……でも、確実に当てた……ダメージを与えた……」

軽巡棲鬼「…………」

霞「…………」

軽巡棲鬼「ククク……ソノテイドカ……?」

霞「う、嘘でしょ!? あんな超至近距離で被弾しといて……どんだけ硬いのよ!?」

軽巡棲鬼「ククク……」

霞「ふんっ、だけど笑っていられるのも今のうちよ……。アンタは沈むのよ。……うちの旗艦の、雷撃でね!!」

軽巡棲鬼「!?」

朝潮「一発……必中……」

朝潮( 霞が軽巡棲鬼を引き付けておいてくれたおかげで、気付かれずに敵の背後へ肉薄することができた……。

おそらくこれが最後のチャンス! 私が……私がコイツを! 沈めてみせる!! )

軽巡棲鬼「……!!」

朝潮「遅い! 四連装酸素魚雷、発射!!」

霞「お願い朝潮…………これで決めて!!」

軽巡棲鬼「オノレ……ッ!」

朝潮「深海棲艦! この世界から、出ていけぇええええええっ!!!」

43:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/27(日)00:32:49.13ID:fve4OYoA0


〜 翌日 夜 司令室 〜

大和「軽巡棲鬼……かなりの強敵であると聞きます」

提督「それは、大和にとってもか?」

大和「はい。私の砲撃でも、通用するかどうか、不安が残るところです」

提督「なるほど……それはたしかに、かなりの強敵だ」

大和「はい……ですから、そんな軽巡棲鬼を含む艦隊を相手に勝利するなんて、素晴らしいことだと思います」

提督「だな。さすが、我が鎮守府、自慢の朝潮型駆逐隊だ」

大和「朝潮さん以外が全員大破した状態で帰って来たときは驚きましたが、酷い外傷もないみたいで、心底安心しました」

提督「さて、そんな朝潮たちがそろそろ入渠を終えてこちらに来る頃だが……」

コンコン

朝潮「司令官! 朝潮型六名、入渠を終え、改めて任務の報告に参りました!」

提督「噂をすればだな……。待っていたぞ、入ってくれ」

朝潮「失礼します」

ガチャ ゾロゾロゾロ……

提督「まずは皆、本当にお疲れさま。よく全員生きて帰ってきてくれた。ありがとう」

44:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/27(日)00:37:36.76ID:fve4OYoA0


大潮「大潮、今度こそ本当にダメかと思ったぁ〜」

荒潮「大潮ちゃんが一番重傷だったものねぇ」

満潮「大潮じゃないけど、私も……途中で生きてるのか死んでるのか分からなくなったわ」

霰「地獄を見た気がする……」

大和「壮絶な戦いだったのですね」

朝潮「それでは司令官。改めて報告致します。

我々朝潮型駆逐隊は、南方海域へ出撃。目標地点へ向かう道中で二度の会敵がありましたが、

損害を出すことなく突破。そのまま目標地点へ到達し、標的である軽巡棲鬼を含む水上打撃部隊と交戦しました。

我々は最終的に五隻大破という大損害を受けましたが、結果として我々は勝利を収めることができました」

提督「うむ、ご苦労。本当によく頑張ったな」

朝潮「…………」

大和「…………」

霞「……ふざけないでよ」

荒潮「霞ちゃん……」

霞「何が……何が勝利よ……何がよく頑張ったよ……そんなの、何の意味もないわ」

朝潮「やめて霞……何も、言わないで……」

提督「霞、無意味なんかじゃない」

霞「無意味よ…………どれだけ勝利しても! どれだけ頑張っても!

作戦失敗してたら、意味なんてないじゃない!! 無理に褒めようとしないでよ!!」

一同「………………」

朝潮「私が……私が悪いんです。最後の雷撃で……一撃で、決め切れなかった……」

大潮「朝潮は悪くないよ! 元はといえば大潮が大破して、朝潮が考えた作戦を台無しにしちゃったから!」

満潮「なに言ってんのよ! そんなリスクの高い役目を大潮に負わせたのは、私たちじゃない!」

霰「せめて中破でとどまっていれば……私たちも夜戦に参加できた……」

荒潮「私、主機は無事だったんだから……夜戦で囮になるくらいなら、できたはずだったわ……」

大和「皆さん……同じ艦娘として、お気持ちは分かります。ですが、戦いの後に

『もしもこうしていたら』という話をしてはいけません」

霞「だって……あと少し……あと少しだったのよ!? あとたった一撃与えるだけで、アイツを撃沈できたのよ!?

そんなの悔しいじゃない……負けたのと同じよ……」

45:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/27(日)00:43:13.35ID:fve4OYoA0


提督「戦いの流れについては朝潮から一通り報告は受けている。

会敵から速やかに駆逐艦三隻を撃沈。策を講じたが敵の火力に一歩劣り、大潮と荒潮が大破。

その後、残った戦艦と刺し違えるようにして、満潮と霰が大破……。

夜戦にて軽巡棲鬼を追い込んだ霞と朝潮だったが、火力が一歩及ばず軽巡棲鬼を取り逃す……。

私が思うに……たとえ、たったのあと一撃で倒せたとしても、これが最大限の戦果であり、

これ以上の結果は見込めないとも考えられる」

大和「私も同感です」

朝潮「私たちの実力が……そこまでだったと……いうことですか……?」

提督「それだけ敵が強力だったということだ」

一同「………………」

提督「報告は以上だな。君たちは部屋に戻って休息を——————」

霞「違う……」

提督「霞?」

霞「あの戦いは……勝てる戦いだった……」

大潮「霞、もうそれくらいにしようよ……」

満潮「そうよ。あんたらしくもない」

霞「朝潮型駆逐隊の中で一人でも……大破ではなく、中破だったら……。

夜戦中、ヤツを確実に仕留められるタイミングを、すぐに見つけられていたら……」

大和「霞さん……あなた……」

提督「…………霞、何が言いたい」

霞「誰でもいい……私たちの中で一人でも、ケッコンカッコカリが適用されていたら……倒せたって、言っているのよ」

46:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/12/27(日)00:47:11.09ID:fve4OYoA0


提督「霞、その話……どこで聞いた」

朝潮「し、司令官…………申し訳ありませんでした! 私が……私が……」

提督「朝潮か……。はぁ……そうか……まさかこんな形で、君たちに知られることになるとはな……」

朝潮「うっ……司令官……ぇぐ……ごめんなさい……私……私……」

提督「…………」

荒潮「朝潮…………泣かないで? ね?」

霰「ごめんなさい司令官……朝潮だけのせいじゃない。わたしも、共犯だから……」

大潮「そうだよ! だから朝潮だけを叱らないで! 悪いのは大潮も同じだから!」

提督「…………」

満潮「ちょっと待って。謝る必要なんて、無いんじゃないの?」

荒潮「満潮ちゃん……? それは、どういう……」

満潮「よく考えてもみなさいよ。そのケッコンカッコカリってのは、私たち艦娘に対するシステムなんでしょ?

それを司令官は、当の私たちに知らせず黙っていた。私たちにはそれを知る権利があるはずよ」

霞「そうよ……いつまでも待っていられないわ。さぁ、答えてよ……司令官」

提督「そうだな……。少し予定が狂ったが、この際だから話しておこう」

一同「…………」

提督「今、私の手元にはケッコンカッコカリの書類一式と、指輪がある。

そして、軍令部からこれが届いたのを確認した瞬間から……こいつの使い道は既に決めていた」

大和( 指輪を渡す相手は……最初から既に決めていた!?

てっきり、彼女たちの中で決めかねていたのだとばかり…… )

霞「いったい…………誰なの…………」

提督「…………朝潮」

朝潮「えっ」

提督「大潮」

大潮「な、なに?!」

提督「満潮」

満潮「…………え」

提督「荒潮」

荒潮「あら……?」

提督「霰」

霰「……?」

提督「霞」

霞「…………な、何よ」

提督「この指輪を渡す相手は………………————————————————」

(前編 おわり)

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元スレ:提督「朝潮型、結婚!」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451124063/