1:1:2013/09/15(日)17:46:50.51ID:naaF0keR0


juon-aibo

相棒×呪怨のクロスSSです。
需要が無いかもしれませんが興味を持たれた方はよろしければ読んでやってください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379234810

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2:1:2013/09/15(日)17:49:07.14ID:naaF0keR0


呪怨

強い恨みを抱いて死んだモノの呪い。

それは、死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され、『業』となる。

その呪いに触れたモノは命を失い、新たな呪いが生まれる。

3:1:2013/09/15(日)17:49:40.12ID:naaF0keR0


第1話 剛雄

2008年

東京都練馬区某所にあるアパートで惨殺死体が発見された。

パシャッ  パシャッ

米沢たち鑑識が現場検証を行っている中、
現場に駆け付けた捜査一課の伊丹たちもこの光景に思わず吐き気を催すくらいであった。

芹沢「ウゲェ…酷い状態ですね、思わず吐きたくなりますよ。」

三浦「こんなところで吐くんじゃないぞ…刑事のゲロで現場荒らされたなんて話にも
ならないんだからな!」

伊丹「たくっ!何年刑事やってんだ!新米じゃねえだろ!」

三浦「だが確かにこいつぁ酷過ぎるな…なんだってんだ…」

芹沢「米沢さん…こんな状態の死体相手でも黙々と仕事してるんですね…」

米沢「まあプロですから、駅のホームで引かれた死体とかの方がもっと酷いですからな…」

5:1:2013/09/15(日)17:50:22.29ID:naaF0keR0


ベテランの刑事でさえ目を覆いたくなる光景、それほどまでにこの殺害現場は凄惨な
光景に包まれていた。

伊丹「まぁ…俺もこんな惨殺死体の殺人現場は仕事でなけりゃ絶対に来たくはないがな。」

米沢「同感ですな、ですがその惨殺死体の殺人現場に好き好んで来る方もいらっしゃる
ようですよ。」

伊丹「そんなヤツいるわけ…あぁ!?」

亀山「ここが殺害現場ですか。」

右京「失礼しますよ。」

三浦「呼んでもいないのにまた来たか…」

伊丹「コラー!亀山係の特命!!いつもいつも勝手に来るんじゃねえ!お呼びじゃねえんだよ!」

亀山「誰が亀山係だ!ちゃんとなぁ…特命係の亀山さまと呼べ!」

伊丹「何気にさま付してんじゃねえよ!?」

芹沢「先輩もう特命係である事に違和感を感じなくなっちゃいましたね。」

6:1:2013/09/15(日)17:52:42.53ID:naaF0keR0


三浦「たしかお宅ら先日瀬戸内米蔵先生を検挙して今日はその裏付けの調書を
取ってたんじゃないんですか?」

右京「えぇ、その調書の作業も終わって戻る最中にこちらで事件だと聞いたもので。」

亀山「大至急こっちに来てやったんだよ、感謝しろよこの野郎♪」

伊丹「うっせえ!早く帰れ!」

亀山と伊丹の毎度の漫才もようやく終わり右京は現場の状況について尋ねてみた。

右京「それで被害者の身元は?」

芹沢「殺されたのはこの家に住む『小林真奈美』さんですね、発見したのは近所の隣人です。
何か妙な音がしたのでこちらに来たら玄関から血だまりが溢れてたので通報したとの事です。
殺害方法は刃物による刺殺です、ちなみに妊娠中だったそうですよ…だからお腹の子も…」

伊丹「まったく胸糞悪くなる話だぜ!妊婦殺しただけじゃ飽き足らずお腹にいる
赤ん坊まで殺しやがって!!」

右京「お腹の中にいる赤ん坊まで?それは一体どういう意味ですか?」

7:1:2013/09/15(日)17:53:24.43ID:naaF0keR0


米沢「それは…こういう事ですよ…」

米沢は右京の疑問を解決させるべく『あるモノ』が入ったビニール袋に指を指した。
しかし中に入っているモノが何かとはあまり告げたくはなかったからだ。

亀山「あの…中に何が入っているんですか?」

米沢「私も鑑識の仕事やってそこそこ経ちますが…あんなモノを見るのは初めてでした…」

右京「どうやら中身はトンデモないモノのようですね、ちょっと我々も拝見してみましょうか。」

だが中身を見た瞬間右京たちは驚愕する、なんとそこに入っていたのは…

亀山「ウゲッ!なんですかこれは!?」

伊丹「おい吐くんじゃねえぞ!こんあところで吐いたら現場からしょっ引くぞ!」

8:1:2013/09/15(日)17:53:57.03ID:naaF0keR0


亀山「わかってらぁ!けどこいつは…」

右京「これは…胎児の死体ですね!しかもこの身体だとまだ出産時期ではありません。
まさか…」

米沢「ハイ、杉下警部のお察しの通り犯人は被害者のお腹の中にいる赤ん坊を
刃物で無理矢理切り開き取り出したのでしょうな…」

亀山「なんて酷い事を…犯人絶対に許せねえ!」

伊丹「お前に言われなくたってなぁ!俺たちが絶対に犯人捕まえてやらぁ!」

右京「ところで被害者は妊娠していたという事はご主人はどちらに?」

9:1:2013/09/15(日)17:54:39.68ID:naaF0keR0


三浦「ご主人は小林俊介、小学校の教師です。
さっきから連絡してるんですが音沙汰無しなんですよ。
まったく女房と子供がこんな目に合ったってのにどこで何やってんだか…」

伊丹「もしかしたら旦那が犯人かもしれねえな、よし!旦那を探すぞ!」

三浦、芹沢「「了解!」」

伊丹たち捜査一課が犯人を旦那であると決めつけていたが、そんな伊丹たちは無視して
右京と亀山は現場検証を行っていた。

10:1:2013/09/15(日)17:55:09.90ID:naaF0keR0


右京「おや、受話器が外れていますね。」

米沢「恐らく犯人と揉み合ってる最中に外れたのでは…」

右京「とりあえず通話記録を割り出してもらえますか。」

米沢「細かい事がなんとやらですな、わかりました!」

亀山「しかし被害者の女性を殺しただけじゃ飽き足らず、お腹の子供までこんな
惨たらしい目に合わすなんて…これは怨恨の線が濃いですね!」

右京「確かに僕も動機は怨恨だと思いますが…しかし問題は何故ここまで惨たらしく
殺したかですが…」

亀山「やはり伊丹たちが言うように旦那が殺したんでしょうか?」

右京「もしそうならわざわざ自宅に死体を残すと思いますか?
こんな家の中で殺せば一発で自分が犯人だと疑われてしまいますよ。」

亀山「それじゃあこれは他の第三者の犯行だと?けど誰が…」

右京「確かご主人は小学校の教師をなさってるとか、ちょっと職場に行ってみましょうか。」

11:1:2013/09/15(日)17:56:01.03ID:naaF0keR0


~小学校~

さっそく右京たちは小林俊介が勤める小学校へと向かった。

校長「さっきも刑事さんたちにお話ししましたけど…あの強面の刑事さんに。」

亀山「すいませんねぇ、ヤツらとは部署が違うんで…」

右京「申し訳ありませんがもう一度お話を聞かせてもらえますか。」

校長「わかりました、けど小林先生の勤務態度に問題なんてなかったですよ。
まあ問題があったといえば児童の方なんですけど…」

12:1:2013/09/15(日)17:56:43.60ID:naaF0keR0


右京「児童の方?」

校長「これはさっきの刑事さんたちには関係ないと思って話さなかった事なんですけど、
実は小林先生が受け持ったクラスにはひとりだけ不登校児がいましてね。
名前が『佐伯俊雄』という子なんですが…」

右京「佐伯俊雄くんですか、何故その少年は不登校を?」

校長「クラス内ではイジメの問題はなかったそうです、何か問題があったとするなら
恐らく…家庭の問題でしょうな。」

亀山「家庭の問題?」

校長「こんな事大きな声では言えませんがね…俊雄くん…虐待に合ってる可能性が
あるんですわ…」

右京「児童虐待…ですか。」

13:1:2013/09/15(日)17:57:20.61ID:naaF0keR0


亀山「そんな…大変じゃないですか!児童相談所には連絡したんですか!?」

校長「あんなところ…確たる証拠がなきゃろくに動いちゃくれませんよ…
それで先日小林先生が自宅訪問に行ったらしいんですが…」

右京「それでどうなりましたか?」

校長「実は…それ以来音沙汰が無いんですよ、まさか佐伯さんと何かトラブルがあったんじゃ…」

右京「なるほど、ところで…ひとつよろしいでしょうか?」

校長「何でしょうか?」

14:1:2013/09/15(日)17:58:24.97ID:naaF0keR0


帰り道、車の中で右京と亀山は先ほどの話について検証をしてみた。

右京「…」

亀山「右京さん、さっきの話気になっているようですね。」

右京「佐伯俊雄という少年の自宅を訪問した後に小林俊介は行方不明になった。
もし彼が母子を殺害したのであればその直前にわざわざ自宅訪問すると思いますか?」

亀山「けど教え子の親が担任の教師に虐待を注意されたからってあんな惨殺をしますかね?
そんな事で怒り狂っていたとなればそいつは常軌を逸してますよ。」

右京「とりあえず佐伯俊雄少年の自宅に行ってみましょうか。」

亀山「うっす!」

15:1:2013/09/15(日)17:58:57.43ID:naaF0keR0


~佐伯家~

右京と亀山は一応話を聞くために佐伯家にやって来ていたが…

亀山「佐伯さ~ん、いますか!警察ですよ!」

ドンドン  ドンドン

亀山は力強くドアをノックしたが誰も出る気配が無かった。

右京「亀山くん。」

亀山「何すか?今ドアをノックしてる最中なんですけど!」

右京「庭が荒れ放題ですねぇ…」

亀山「庭?…うわっ!雑草だらけッスね…」

16:1:2013/09/15(日)18:00:00.21ID:naaF0keR0


そう…右京が指摘した通り佐伯家の庭は手付かずの状態であり、
木が一本生えている以外は雑草などが無造作に生い茂っていた。

亀山「勿体ないッスね、都内の庭付き一軒持ちなのにこんな荒れ放題にしちゃって…」

右京「そうですねぇ、おや?あれは…」

亀山「どうかしたんですか?」

右京「庭にある木の根元…何か掘られた跡がありますね。」

亀山「あ…本当だ、何でしょうね?」

右京「確かめてみましょうか。」

亀山「ちょっ!?右京さん…ここ私有地なんですよ!」

右京「細かい事が気になるもので…僕の悪い癖♪」

亀山「いいのかなぁ…」

17:1:2013/09/15(日)18:01:09.06ID:naaF0keR0


亀山の心配を余所に右京はさっそくその木の根元を掘り返してみると…
そこには一冊のノートが埋められていた。
ノートには『川又伽椰子』という名前が書かれていてさっそくノートの中身を見たが
そこに書かれていたのは…

右京「この文章は…」

亀山「何が書かれていたんですか?」

右京「おやおや、キミも気になりますか?」

亀山「やっぱりこういうのはどうしてもねぇ、気になっちゃうじゃないですか!
それでなんて…」

右京「…これはどうやらその川又伽椰子さんの日記なんですけどねぇ…
彼女は我々が捜索中の小林俊介氏を愛していたようですよ。」

亀山「愛していた?どういう事ですか!」

右京は亀山にもその日記を見せるとそこには川又伽椰子の熱烈的な愛が綴られた
文章が載っていた。

18:1:2013/09/15(日)18:01:36.03ID:naaF0keR0


『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

19:1:2013/09/15(日)18:02:04.24ID:naaF0keR0


『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

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20:1:2013/09/15(日)18:02:31.85ID:naaF0keR0


『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

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『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』『小林君が好き!』

21:以下、新鯖からお送りいたします:2013/09/15(日)18:03:26.70ID:naaF0keR0


亀山「な…なんじゃこりゃ!?」

右京「どうやらこの川又伽椰子なる女性は小林俊介氏の事を熱愛していたようですよ。
これが相思相愛だったのか…それとも彼女の一方的な愛だったのかはわかりませんが…」

亀山「いや…こんな気持ち悪い文章書いてるんだから絶対後者に決まってますよ!」

右京と亀山が日記について言い合ってる直後であった、ある人物が二人に声を掛けてきた。

22:1:2013/09/15(日)18:04:22.07ID:naaF0keR0


―「おいアンタら!ウチで何をしている!?」

亀山「へ?ウチ?」

―「そうだ!ここは俺のウチだ!お前ら何をしている!?」

右京「ひょっとして佐伯さんですか?失礼しました、我々は警察の者です。」

剛雄「警察だと?」

右京「ハイ、警視庁特命係の杉下と言います。」

亀山「同じく亀山です。」

剛雄「警察が何しに来た?」

23:1:2013/09/15(日)18:05:07.53ID:naaF0keR0


右京は家主であるこの男に先日俊雄のクラスの担任である小林俊介が行方不明で
何か心当たりがないかと尋ねたが返ってきた返事はというと…

剛雄「フンッ!人さまの女房に手を出したヤツの事なんぞ知らん!」

亀山「手を出したってどういう事ですか?」

剛雄「アンタらもその日記を見たんだろ、ならわかるだろ!」

右京「ところで…ひとつお願いがあるのですが…俊雄くんと会わせてもらえますか?」

剛雄「俊雄は………病気だ!会う事は出来ない!」

亀山「あなたが虐待を行っているという話があるんですけどねぇ…」

24:1:2013/09/15(日)18:05:48.66ID:naaF0keR0


剛雄「うるさい!アンタらは殺人事件の捜査で来たんだろ、早く帰れ!!」

バタンッ

亀山「あの…まだ話は終わってないんですよ!開けてください!」

ドンドンドン  ドンドンドン

亀山は再び力強くドアをノックするもののそれ以降佐伯剛雄が出て来る事は無かった。

右京「どの道我々は令状を得ているわけではありません、今日のところは帰りましょう。」

亀山「け…けど、あの親父絶対子供を虐待してますよ!このままにしておいていいんですか?」

右京「だからですよ、このまま僕たちが彼にストレスを与え続けていればその矛先は
誰に向かうと思いますか?」

亀山「はい…」

結局その日は大人しく引き下がるしかなかったが帰り際、
亀山は再度佐伯家を覗くと窓の外で白いワンピースを着た髪の長い女性が自分たちを見送っていた。

25:1:2013/09/15(日)18:06:24.18ID:naaF0keR0


~花の里~

結局ろくな手掛かりも無しで二人はいつもの花の里で一息ついていた。

美和子「じゃあ何かね?虐待の可能性がありながらノコノコ帰ってきちゃったわけ?
情けないわねぇ…」

亀山「俺だってさぁ…踏み込みたいよ、けど無理なんだよしょうがねえだろ…」

右京「えぇ、令状もありませんからどうしようもありません。」

亀山「ところで話は戻しますけど小林俊介は何処へ行っちゃったんですかね?」

26:1:2013/09/15(日)18:06:56.77ID:naaF0keR0


右京「そうですねぇ、妻と子供が殺されたという事は彼の身にも何か異変があったとみて
間違いないと思います、もしかしたら彼も既に…」

たまき「それにしてもお腹の中の子供まで恨むだなんて…まるで嫉妬のような感じがしますね。」

右京「嫉妬…ですか?」

たまき「ほら、推理小説とかでもあるじゃないですか。
無理矢理別れさせられた女性が嫉妬に悩んで相手の子供を殺しちゃうとか。
そういう時って憎んでる相手本人じゃなく本人の親しい人を殺した方が
余計苦しむんじゃないかって。」

亀山「……なぁ…たまきさんってたまに凄く恐い事言うよな…」

美和子「そうだよ、だから絶対たまきさんを怒らせちゃダメなんだからね!」

右京「なるほど、本人ではなくその親しい相手ですか…」

27:1:2013/09/15(日)18:08:05.65ID:naaF0keR0


翌日…

~特命係~

翌日、亀山が特命係に出勤すると右京はある一冊のノートを読んでいた。

亀山「おはようございま~す!あれ?右京さん、今読んでるノートってもしかして…」

右京「えぇ、昨日佐伯家の木の根元に埋めてあったノートを持ってきたのですが。」

亀山「あのノート持ってきちゃったんですか!警察官がそんな事しちゃダメでしょ!」

右京「それはともかくこのノートを読んでみましたがとても興味深い事がわかりました。」

亀山「一体何がわかったんですか?」

28:1:2013/09/15(日)18:09:30.33ID:naaF0keR0


右京「昨日、佐伯俊雄くんの小学校へ行った時に校長先生にお願いして
俊雄くんの家族構成の資料をお借りしたのですが
そのノートの持ち主である川又伽椰子なる女性は旧姓で現在は『佐伯伽椰子』という
名前だそうですよ。」

亀山「佐伯?…まさか昨日俺がベランダ越しで見た女性が…」

右京「そう、昨日お会いした佐伯剛雄の奥さんですよ。」

亀山「あの強面の…ていうかあの人薄幸そうな美人だったよな…
あんなおっさんに美人の奥さんは羨ましいわ…
ってそんな事じゃないですよね、その佐伯伽椰子がどうしたというんですか?」

右京「実は彼女、大学時代に小林俊介と同期だったようですよ。」

亀山「動機ってそれじゃあ二人は知り合いだったんですか!?」

右京「いえ、知っているのは佐伯伽椰子だけだったみたいですよ。
どうやら昨日キミの言った通り彼女の一方的な愛情のようみたいですねぇ。」

29:1:2013/09/15(日)18:10:29.75ID:naaF0keR0


亀山「随分と二人の間柄に詳しいですけどそれってまさか全部ノートに載っている事
なんですか?」

右京「えぇ、このノートに事細かく載っています。
例えば見てください、ここです。」

亀山「え~と何々?」

98年 10月3日。
今日、小林クンと目があった♥♥♥♥
小林クンは又、いつもの本屋にきて、その時の事。私の予想した通りだ。 いつもの.…

亀山「何だこれ?書いてある事がほとんどストーキング行為じゃないですか!?
あんな美人な奥さんなのに性格がこんな残念だなんて…」

右京「彼女は引っ込み思案な性格だったようで学生時代は彼と一度も喋れなかったようですよ。」

亀山「ちょっと貸してみてもらえますか?うわっ!なんじゃこりゃ!?
小林俊介の詳細なプロフィール…ホクロの数…しかも数える時に天井裏に忍び込んでいた!?
…これは…なるほどこの事件全部謎が解けましたよ!」

30:1:2013/09/15(日)18:11:12.36ID:naaF0keR0


右京「では参考がてらキミの推理を聞かせてもらえますか?」

それから亀山は珍しく自分の推理を右京に語り始めた。

亀山「つまりこういう事ですよ!
当時の川又伽椰子はずっと小林俊介に一目惚れしていた!!
しかし想いは果たせず伽椰子は佐伯剛雄となし崩し的に結婚…
だが伽椰子はそんな小林俊介への想いは忘れられなかった!
そして伽椰子は小林俊介への想いを果たそうとした、けどそれにはある障害があった!
それこそが小林俊介の妻真奈美!伽椰子は真奈美とお腹の子を惨殺した!
どうですかね?」

右京「そうですねぇ、今の推理は…50点てところでしょうか。」

亀山「ご…50点!?今の推理ダメなんですか?」

右京「いえ、案外いいところまで突き詰めていると思いますよ。
まあそれはともかくとして僕は少し出かけます。」

31:1:2013/09/15(日)18:12:08.43ID:naaF0keR0


亀山「どこへ行くんですか?」

右京「俊雄くんが生まれた産婦人科の病院です、僕の勘が正しければ恐らく…」

亀山「すいません、俺もちょっと…いいですか?」

右京「おや?キミはどちらへ?」

亀山「あぁ…パスポートを取りに…」

右京「そういえば亡くなった兼高公一さんの報告をしに行くために申請していたのですよね。」

亀山「すんません、仕事中なのに…」

右京「いえ、構いませんよ。」

32:1:2013/09/15(日)18:13:14.84ID:naaF0keR0


それから数時間後…

亀山「すいません、待たせちゃって!そっちは何か収穫掴めましたか?」

右京「えぇ、恐らく確信に近付けたと思うのですが…」

亀山「へぇ…そうですか、しかし佐伯剛雄は女房の浮気を知ったから
子供を虐待してるんすかね?
まったく自分の子供をなんだと思っているんだか…生まれた時とか名前をちゃんと考えて
あげた時の事を忘れちゃうもんなのかな?」

右京「子供…名前…?『俊雄』、『俊介』『剛雄』…亀山くん!それですよ!!」

亀山「え…何がですか?」

右京「しかし困りましたね、現時点では証拠が何も無い…どうしたものだか…」

33:1:2013/09/15(日)18:14:18.91ID:naaF0keR0


犯人が分かっても証拠が無い、悩んでいた右京と亀山の前にいつものあの男がやってくる。

角田「よっ、暇か?コーヒー貰いにきたよん♥
プハァーッ!やっぱりここで飲むコーヒーが一番だねぇ♪」

亀山「いや…コーヒーなんてどこで飲んでも一緒でしょ…」

角田「何言ってんの!ここで飲むのがいい…うん…これは…」

亀山「どうかしたんですか?」

角田「いや…この名前…こいつって確か……」

課長の思わぬ発見により事件はこの後急展開を迎える事になる。

34:1:2013/09/15(日)18:14:47.79ID:naaF0keR0


~佐伯家~

ピンポ~ン

―「佐伯さん、業者の者ですけど開けてもらえますか?」

剛雄「業者だと?そんなモノは頼んでいないぞ!」

―「でもねぇ、ここだと言われてきたものでして…ちょっと玄関開けてもらえますか?」

佐伯剛雄は覚えのない業者の来訪に困惑したが、玄関越しでその連中が業者である事に
確認を取り玄関を開けようとした、だが…

35:1:2013/09/15(日)18:15:32.28ID:naaF0keR0


大木「ハイ警察!」

小松「佐伯剛雄!匿名のタレコミがあったので捜査させてもらうぞ!」

剛雄「なっ!警察だと?お前ら騙しやがったな!?」

そう、先ほど剛雄が玄関越しで見た業者とは組対5課の大木と小松が変装した姿だった。

右京「騙すような真似をしてすみませんねぇ、しかしこちらも人の命が掛かってますので…
亀山くん!急いで家の中を調べてください、俊雄くんの保護を最優先で!」

亀山「了解!!」ダッ

剛雄「ま…待て!令状も無しで家の中入っていいと思ってんのか!?」

36:1:2013/09/15(日)18:17:12.05ID:naaF0keR0


角田「匿名のタレコミがあるって言ったろ!
まあ匿名というよりも特命からのタレコミなんだけどな…
佐伯剛雄!城南金融の幹部で麻薬密売の噂のあるお前さんだ、簡単に捜査の令状が
降りたぞ!
おい、大木!小松!お前たちも亀ちゃんの手伝いに行ってやれ!」

大木、小松「「ウィーッス!!」」

剛雄「いい加減にしろ!こんなの不当捜査だ!何故俺がこんな目に合わなきゃ…」

自分は無罪だ、そう主張する剛雄だがそんな彼の主張に対し右京は怒りを露わにする。

右京「いい加減になさい!あなたは既にいくつもの罪を犯している!!
佐伯剛雄さん、率直に言います。
小林真奈美さんとそして体内にいる赤ん坊を殺害したのは…あなたですね!」

剛雄「な…何を下らん事を…何故俺がそんな女を殺さなければならない…」

37:1:2013/09/15(日)18:18:13.54ID:naaF0keR0


右京「最初に僕がここに来た時あなたはこう仰った。
『アンタらは殺人事件の捜査で来たんだろ』と、しかしあの段階ではまだ事件の報道は
伏せられていたんですよ!」

剛雄「そ…そんなの偶然だ!そんな事で俺を犯人と決め付ける気か!?」

角田「そうだ…確かに確たる証拠は…」

角田がそう言った時だった、2階を探している大木と小松が玄関口の右京と角田にあることを告げた。

大木「課長!2階の部屋なんですけど一室だけ鍵の掛かっている部屋があるんですけど…」

角田「鍵の掛かっている部屋だと?」

右京「恐らくその部屋です、構いません!ドアを壊してもいいからその部屋に入ってください!」

38:1:2013/09/15(日)18:18:43.10ID:naaF0keR0


小松「わかりました、行くぞ!」

大木「せーの!」

ドンッ!  ドンッ!

2階から力強い物音が聞こえてきた、最早2階の鍵の掛かった部屋が破れるのも時間の問題であった。
剛雄はこの行為は違法だと主張し始めた。

剛雄「やめろ!これ以上やるなら弁護士を呼ぶぞ!」

右京「呼ぶならどうぞご自由に、しかしあなたが弁護士を呼んでいる間に彼らがドアを
こじ開ける方が早いと思いますがね!」

剛雄「クソッ!」

39:1:2013/09/15(日)18:20:16.37ID:naaF0keR0


角田「なぁ…警部殿…一体2階に何があるんだい?」

右京「課長、このおウチですが車がありませんね。」

角田「車だと?」

右京「殺人が行われた場合、まず処置をしなければならないのは死体の始末です。
一人の人間の身体を処分するにしても安易に捨てるわけにもいかない…
まあこの場合一番無難なのは山奥の深くか、それとも海の中に捨てるのが一番でしょうが
それらを行えない場合どうするのでしょうかね?」

角田「そりゃ…自分の見える範囲に死体を…そうか!じゃあ2階には!?」

右京「えぇ、僕の考えが正しければ…」

そう右京が剛雄の前で推理を語っている最中に、2階で調べていた大木と小松が
あるモノを発見した。

40:1:2013/09/15(日)18:21:26.79ID:naaF0keR0


大木「ありましたー!死体です!」

小松「男の死体と…それと女性のバラバラ死体ですよ!?」

角田「バラバラ死体だと!」

右京「それでは2階に行ってみましょうか、勿論佐伯剛雄さん…あなたも一緒に!」

そして右京と角田は剛雄を連れ2階の鍵の掛かった部屋に入った。
そこにあったのは小林俊介の死体と女性のバラバラ死体…
それに黒猫の死体までが放置されていた。

角田「うっぷ!酷い臭いだ…こりゃ恐らく死後数日は放置してやがったな…
一課の連中に連絡しておけ、さすがに俺たちだけじゃ手に負えん!」

大木「わかりました!」

右京「こちらの男性の死体は恐らく小林俊介で間違いないでしょう。
さて…問題なのはこちらの女性の死体です。
この女性は…あなたの奥さんである佐伯伽椰子さん…そうですね!」

41:1:2013/09/15(日)18:21:58.63ID:naaF0keR0


剛雄は暫く沈黙した後にこう答えた。

剛雄「そうだ!俺が殺した!」

角田「な…何でだ!こんな美人な奥さんを殺す動機が何処にあるってんだ!?」

右京「それは…奥さんである伽椰子さんが愛した人がご主人である剛雄さんではなく、
こちらの小林俊介氏だからですよ!」

角田「じゃあ動機は…浮気か?」

右京「いえ、実際に小林氏と伽椰子さんはそんな関係ではなかったはずですよ。
それに浮気と言っても彼女の一方的なモノだったはずでしょうし。」

角田「それじゃ…何でこいつは殺したりなんか…」

42:1:2013/09/15(日)18:22:28.47ID:naaF0keR0


右京「実は病院に行ってきましてね、俊雄くんが生まれた産婦人科の病院です。
そこである事が判明しました。」

角田「一体何がわかったんだ?」

右京「佐伯剛雄は…精子欠乏症なのですよ!」

角田「精子欠乏症って確か男が子供作れないってヤツだろ?
けどこいつには子供が…まさか!?」

右京「そう、佐伯剛雄が小林真奈美を惨殺した理由は…あなたは自分の息子である
俊雄くんが自分と血縁関係にないと疑ったからですね!」

43:1:2013/09/15(日)18:23:26.13ID:naaF0keR0


剛雄「そうだ…俊雄が生まれてからその後も子供を作ろうとしたが…
ダメだったんだ…それで病院に行って検査してもらったら…俺は精子欠乏症だと診断された…
そしてアンタが昨日見つけた日記…アレを見て…俺は気付いたんだ!
小林って男と伽椰子が浮気をして出来たのが俊雄だってな!!」

角田「なるほど、自分の子供じゃないのに腹が立って相手の女房とその子供を殺したって訳か…」

剛雄「それに伽椰子は子供に『俊雄』なんてふざけた名前を付けやがって…」

角田「何で『俊雄』って名前がふざけた名前なんだよ?普通の名前じゃねえか!」

44:1:2013/09/15(日)18:25:04.72ID:naaF0keR0


右京「なるほど、あなたもその事に気付いたようですね。
そうです、伽椰子さんは愛する人の名前を子供に付けたのですよ。
だからこそ小林俊介の『俊』の字を『俊雄』くんの『俊』の字として名付けたのでしょう。」

剛雄「そうさ…俺はそんな事も知らずに9年も俊雄を育てた…許せなかった!
あの女!俺がこんなにも愛していたのに!!」

右京「なるほど、伽椰子さんが異常なまでに小林俊介を愛していたようにあなたもまた、
伽椰子さんを異常なまでに愛していた…あなた方夫婦はある意味で似た者夫婦だったのですね。」

そして剛雄は泣き崩れる。
右京たち周囲の目も気にせず…それはまるで悔し涙を浮かべるように…

45:1:2013/09/15(日)18:25:59.56ID:naaF0keR0


角田「そういえば亀山は何処にいったんだ?」

大木「確か1階の方を探してるはずですけど…」

右京「佐伯さん、まだあなたに聞かなければならない事があります!
俊雄くんはどうしましたか?僕の考えが正しければ恐らく俊雄くんは…」

剛雄「俊雄…俊雄は…いなくなった…」

角田「ハァ!?ふざけた事言ってんじゃねえぞ!小学生の子供がいなくなるわけねえだろ!
もしかして…お前もう殺しちまったんじゃねえのか?」

46:1:2013/09/15(日)18:26:40.19ID:naaF0keR0


剛雄「本当なんだ…俺は伽椰子を殺した後に俊雄も殺そうとした。
その前に飼い猫のマーが邪魔で殺しちまったが…あいつは1階の押し入れにいると思って
開けてみた…だが…姿は見えなかった…
それから俺は家の中を隈なく探したが俊雄の姿は見つからなかった…
何処へ行ったのかなんて俺が訊きたいくらいだ!」

角田「まさか家から脱出したってのか?」

右京「しかし近隣の警察には家出少年の通報はありませんでした。
まだどこかに隠れているかもしれませんね、急いで手配をしま…」

ガタゴト  ガタゴト

右京が俊雄の捜索手配をしようとした時2階の屋根裏が騒がしくなってきた。
気になって屋根裏を覗いて調べるとそこにいたのは…

47:1:2013/09/15(日)18:28:12.03ID:naaF0keR0


右京「亀山くん!何故1階の屋根裏を調べていたキミが2階の屋根裏にいるのですか?」

亀山「右京さん!よかった…まだ無事だったんですね!急いでここから逃げましょう!」

角田「な…何言ってんだよ?まだ現場検証とかちゃんとやらなきゃいけないんだぜ!」

亀山「そんな事してる暇は…あれ?その袋に入ってるのはもしかして佐伯伽椰子ですか?」

右京「えぇ、そうですがよくわかりましたねこちらの人物が佐伯伽椰子だと…」

亀山「なんてこった…じゃあ…クソッタレ!佐伯剛雄!お前の所為でなぁ…
大変な事になっちまったんだぞ!!」

角田「おいおい亀ちゃんなんだってんだよ?ちゃんとわかるように説明してくれよ!」

亀山「説明してる暇がありません!とにかく今すぐここから出るんです!
右京さん、俺の事信じてください!お願いします!!」

48:1:2013/09/15(日)18:29:24.15ID:naaF0keR0


亀山はまるで切迫した事態かの如く右京たちに詰め寄り、右京は亀山の態度に只ならぬ
予感を感じていた。

右京「わかりました、キミの言う事を信じましょう。
課長、申し訳ありませんが亀山くんの言う通りここからすぐに出ましょう!」

角田「なんだかよくわからんが…わ…わかったよ!」

こうして全員亀山の言う事を信じて佐伯家を後にした。

何故かこの時亀山は佐伯伽椰子、それに小林俊介の死体をそのままにしろと言い、

その時点では遺体の回収は行われなかった。

49:1:2013/09/15(日)18:31:22.51ID:naaF0keR0


それから本庁に戻った特命係は本部長に烈火の如く怒られ散々な目に合った。

彼らが怒られるのはいつもの事であるが、その理由が実は連絡を受けた捜査一課が改めて佐伯家を

現場検証に訪れた際に、小林俊介の死体しか見つからず佐伯伽椰子の死体は何処にも見当たらなかった。

それに捜索中の佐伯俊雄も…

その後捜査一課が血眼で家中を捜索したが結局俊雄少年と伽椰子の死体は発見する事が出来なかった…

50:1:2013/09/15(日)18:31:56.80ID:naaF0keR0


~特命係~

二人は内村部長に散々絞られ部屋に戻ってきた、右京は再度亀山に佐伯家で何があったのか
尋ねたが亀山は何故かその事を言わなかった。

亀山「すみません…どうしても言えないんです…」

右京「そうですか、わかりました。どうしても言えない、つまり言えない事情があるなら
僕はこれ以上キミを言及する気はありません。」

亀山「…」

51:1:2013/09/15(日)18:33:02.24ID:naaF0keR0


右京「ですが俊雄くんと伽椰子さんの死体行方以外にもひとつ不可解な事があります。
それは電話です。」

亀山「電話?」

右京「捕まった佐伯剛雄は小林真奈美を殺害直後に小林家の電話から
小林俊介の携帯に連絡をしていたそうですよ。
しかしここでひとつ疑問があります、小林俊介の死亡推定時刻はどうやら
その佐伯剛雄の連絡があった直後だそうです。
つまり佐伯剛雄が小林俊介を殺害するのは不可能、誰か他の人間に殺された
可能性があるのですが…」

亀山「たぶん…いや間違いなく佐伯伽椰子でしょうね。」

右京「なるほど佐伯伽椰子ですか。
確かに彼女には動機があるかもしれませんがそれもおかしい。
何故なら彼女は……佐伯剛雄が小林真奈美を殺す前に既に惨殺してたんですよ!」

亀山「…」

52:1:2013/09/15(日)18:34:02.90ID:naaF0keR0


この時亀山は驚かなかった、それどころか『ああ、やっぱり』という表情を浮かべていた。
そんな亀山に対して右京は再度尋ねる。

右京「つまりキミが昨日見た佐伯伽椰子は既に死んでいたはず…なのですが…
本当に彼女は佐伯伽椰子だったのですか?」

亀山「それは…間違いないはずですよ…恐らくね…右京さんまた佐伯家に行く気ですよね…
行くのやめてもらえますか…」

右京「はぃ?」

―「あら、なんだか亀山さんにしては随分と消極的な発言ですね。」

亀山「あなたは…小野田官房長!」

右京「どうしてこちらへ?」

小野田「お前たちのためにわざわざ来たんですよ、まったく犯人逮捕出来たとはいえ
死体の消失、おまけに少年の行方不明、内村さんがクビだと言っても仕方ありませんね。」

53:1:2013/09/15(日)18:34:47.08ID:naaF0keR0


亀山「迷惑かけてすんません…」

小野田「そう思うなら事情くらい聞きたいのですがね、亀山さん。」

亀山「本当に言えないんです、けど右京さん…あの家に行くのは本当にやめてください。
恐らく何年か後でまたあの家で何か事件が起こるはずです、それまで絶対にあの家には
近付かないでください!」

亀山は何故か佐伯家に近付くなという警告を右京に伝える。
しかしさすがの右京もいくら亀山の言う事とはいえその理由もわからず仕舞いでは
安易に従う事が出来なかった。

右京「キミの話はどうも肝心な部分が抜けています、それでは従う事は出来ませんね。」

小野田「せめて理由を言ってほしいですね。まだ佐伯俊雄少年が生存している可能性も
ありますから捜索を止めるわけにはいかないんですよ。」

54:1:2013/09/15(日)18:35:27.24ID:naaF0keR0


亀山「危険…だからです、これから先あの家は恐らく近付いただけでやばい事が起こるはずです!
俺も詳しい事は言えないんです!いえ…言っちゃいけないんです。
それに俊雄くんはもう『この世にはいません、あの子はあの世の住人になったんですから!』」

亀山の話はどうも支離滅裂な話でさすがの右京と小野田も付いていけなかった。
しかしあの亀山がここまで言うのなら何かあると思い右京はそれ以上の事を聞かなかった。

右京「わかりました、キミがそこまで言うのなら僕はもう何も言いません。
僕はもう帰ります。」

亀山「本当にすいません!けど右京さん、これだけは絶対に覚えててください。
今、佐伯家に行ってもどうしようもありません…
けど数年後…事件が起きた時…その時は…必ずなんとかなるはずですから!」

小野田「なんとも的を得ない話ですね、お偉方は納得出来ませんよ…」

亀山「あ、小野田さん。ちょっとお話があるんですけど…」

小野田「?」

55:1:2013/09/15(日)18:36:10.04ID:naaF0keR0


その夜、とある回転寿司屋で…

右京「亀山くんと何を話していたのですか?」

小野田「実は亀山くんから口止めされてるんですけど…まあいいでしょう。
なんかね…僕あと少ししたら死ぬかもって話らしいの、さすがに何の話だか
わからないから本気に出来ないんだけどね。」

右京「死んでしまうとはまた物騒な話ですね、どういう訳で死ぬのですか?」

小野田「さてね、それ以上の事は教えてくれませんでしたから。
それと亀山さん…近々ねぇ…いや僕から言うのはやめておきます、この事は亀山さんが
直接言った方が良いのでしょうね。」

右京「そうですか、ところで…お皿は戻さないでください。」

56:1:2013/09/15(日)18:37:39.59ID:naaF0keR0


その夜、警視庁の拘置所にて…
剛雄は身柄を拘束されてこの拘置所の独房に入っていた、そんな時であった。

ガサガサ      ガサガサ

ゴソゴソ      ゴソゴソ

剛雄「何だ?この物音は?」

57:1:2013/09/15(日)18:38:36.07ID:naaF0keR0


気になった剛雄は音のした方を見るとそこには白いビニール袋があった。
鉄格子の隙間からそのビニールを取ろうとした剛雄だったが…

剛雄「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」」

その後駆けつけた係の者たちが剛雄の独房を見るとそこにあったのは…

ポタッ      

ポタッ

ポタッ

血だまりと化した佐伯剛雄の死体があった、状況から察するにこの死は事故死として警察は判断。

結局この事件は犯人の佐伯剛雄の死亡という形で幕を閉じた。

58:1:2013/09/15(日)18:39:40.99ID:naaF0keR0


この事件から暫くして都内で小菅彬によるウイルス騒動の事件が発生し、

その事件を解決した直後亀山薫は警視庁を辞職、亡き友人の志を受け継ぐためにサルウィンへと渡った。

2年後、亀山の言う通り小野田公顕は警視庁の幹部職員に逆恨みの形で刺されて死亡。

尚、現在でも佐伯俊雄の捜索は続けられているが………未だに発見されてはいない。

それから時は流れる…

98:1:2013/09/17(火)17:27:44.20ID:GoIyQwV+0


第2話 呪怨

2011年 8月

~とある墓地~

右京と神戸は仮釈放された元国会議員の瀬戸内米蔵と共に小野田公顕の墓参りに来ていた。

瀬戸内「小野田くんが亡くなって早一年か、俺よりも若いくせに先におっ死んじまうとは…」

神戸「人間の生き死に年齢は関係ないのでしょうね、こればかりは運命としか
言いようがありませんよ。」

右京「運命…ですか、もしかしたらそうだったのかもしれませんね…」

瀬戸内「どうしたんだい杉下くん?何か知っているような顔をしてるが。」

右京「実は…亀山くんが警察を辞める前に妙な事を言ってたのを思い出しまして…」

瀬戸内「妙な事?」

99:1:2013/09/17(火)17:28:31.22ID:GoIyQwV+0


それから右京は神戸と瀬戸内の二人に以前佐伯家で起きた事件の事を説明した。
その直後、亀山が言っていた奇妙な事と小野田の死の予言についても…

神戸「佐伯…確か練馬区で起きた惨殺事件の犯人ですよね。
犯人は捕まったけどその日の夜に警視庁の拘留所で死んだっていう…」

右京「そうです、それに佐伯俊雄…事件当時9歳の少年も未だ行方不明…
当時警察は少年の行きそうな場所を徹底的に調べたのですがねぇ…」

瀬戸内「なるほど、亀山くんはその俊雄少年の事について、
『この世にはいません、あの子はあの世の住人になったんですから!』と言ったのかい。」

右京「えぇ、僕には皆目見当も付かないので。
よろしければ仏法に御詳しい瀬戸内先生ならご存知ではないかと思うのですが…」

瀬戸内「そりゃアレだな、『亡者』の事じゃねえのかな。」

右京「亡者?」

瀬戸内「生臭坊主の説法になるがね、亡者ってのは何らかの理由で死んでしまい
成仏できずに彷徨う魂のこった。そんな連中が何を思っていると思う?」

100:1:2013/09/17(火)17:29:02.58ID:GoIyQwV+0


右京「さぁ、何でしょうかね。」

瀬戸内「恨みだよ、連中は生前何か強い想いを現世に残しちまった哀れな連中なわけだ。
そしてそれが…やがて呪いを生む。」

神戸「呪い…ですか?この近代科学が発達した21世紀の時代に呪いだなんて…
前時代的過ぎますよ!」

瀬戸内「呪いに時代なんて関係ねえさ、ただ深い業があればそれでいい。
だからこそ殺人事件なんて血生臭い行為が未だに行われているわけじゃねえか!」

右京「仰る通りです、しかしそうなると俊雄くんは…」

101:1:2013/09/17(火)17:29:46.16ID:GoIyQwV+0


瀬戸内「仏法ではな、親より早く死んだ子供は三途の川へ連れて行かれて、
石を積まなきゃならんと言われている。だが…もしも…もしもだ。
俊雄くんが生きて亡者となっていたとしたらだ…
恐らくそいつは現世に留まり…より強力な呪い、つまり『呪怨』を生むんじゃねえのかな。」

右京、神戸「「呪怨?」」

右京「初めて聞く言葉ですねぇ。」

神戸「どういった意味なんですか?」

瀬戸内「こりゃ俺が作った造語だからな、辞典になんか載ってねえんだがね。
意味は…強い恨みを抱いて死んだモノの呪い。
死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され、『業』となる。
その呪いに触れたモノは命を失い、新たな呪いが生まれる。
つまりだ、呪いの連鎖ってモンは簡単に断ち切れないって事さ。」

神戸「ハハ、もし瀬戸内先生の仰る通りなら殺人現場が呪いの呪いだらけになっちゃいますよ。」

瀬戸内「まぁ…そうかもしれんがね、年寄りの戯言だと思って聞き流してくれや。」

102:1:2013/09/17(火)17:31:31.35ID:GoIyQwV+0


瀬戸内の参考になるのか微妙な説法も終わり、右京と神戸は警視庁に戻ってきた。
しかし戻って来て早々、何故か内村部長に呼び出された、その訳は…

~警視庁~

神戸「引き篭り少年の更生!?」

中園「そうだ。」

内村「先日練馬署の少年課が奇妙な行動をする少年を補導してな。
親御さんに聞いたところ少年は引き篭りがちらしい、そこで…お前らも一応大人だ。
いいか!その少年を学校に通わせるようにしておけ!!」

神戸「これも僕らの仕事なんですかね…」

右京「頼まれたら何でもするのが特命係ですからね。それでその少年の名前は何と言うのですか?」

中園「確か……鈴木…鈴木信之という中学生の少年だ。」

103:1:2013/09/17(火)17:32:04.59ID:GoIyQwV+0


それから右京と神戸はその少年の父親が経営する不動産屋に来ていた。
鈴木信之は母親を亡くしており、現在は父親の達也と二人暮らしという事情があったからだ。

達也「いやぁ、すみませんねえ。わざわざ職場の方に来て頂いて…
母親がいればこんな事にはならなかったんですがね。
しかしまさか警視庁の刑事さんが来てくれるとは思いませんでしたよ。」

右京「いえいえ、警察は市民の味方ですから。」

神戸「単に面倒事を押し付けられたとも言いますが…」

右京「それでですが、息子さんの奇行というのはどういった感じに行われているのでしょうか?」

達也「それが…」

104:1:2013/09/17(火)17:33:17.52ID:GoIyQwV+0


達也は右京たちに息子の信之の家出の奇行について説明した。
信之はここ最近誰とも喋らず、毎日部屋に閉じ籠って何も映らないTVをジッと眺めている、
その光景はまるで何かこの世のモノではないモノを眺めているかのようだと達也は語った。

達也「…という訳なんですが…」

神戸「そう言われましても…僕たちはその手の専門家じゃないので…」

右京「まぁ…まずは信之くんと会ってみましょう、話はそれからという事で…
ところでひとつ聞きたい事が、これは僕の個人的な興味なのですが、
確かこの近所に三年前に佐伯という一軒家で殺人事件がありましたね。
あの物件…売れたのですか?」

達也「えぇ、おかげさまで。しかし何でそんな事を?」

105:1:2013/09/17(火)17:34:37.56ID:GoIyQwV+0


右京「先ほど表に貼られている中古物件の一覧を見ましたら佐伯家の物件が
売買済になってましたので、どなたが購入されたのか気になりましてね。
ちなみにあの事件に僕も関わっていましたのでその後の状況を聞いてみたくて…」

神戸「すみませんね、細かい事が気になる人でして。
けどそれって事故物件ですよね、中古とはいえよく売れましたね?」

達也「まぁ…そこはどうにかしてといった感じで…けどその後が問題でして。
実は…あまり大きな声では言えませんが…あの物件ですが…あの後入った
家族が…自殺しましてね…
それで売る前に霊能力のある妹の響子にその物件を見てもらったんですよ。」

神戸「妹さん…霊能力者なんですか?」

達也「妹は昔から変なモノが見えるって言ってましたので、それで見てもらったんですけど…
その時妹が変な事を言ったんですよ。
『購入する人間に清酒を飲ませろ、もし吐いたりしたら絶対に売るな!』と…」

神戸「清酒ってどうしてそんな事を?」

106:1:2013/09/17(火)17:35:05.01ID:GoIyQwV+0


右京「なるほど、清酒には古来から霊的な作用があると伝えられています。
その清酒に霊を移り、その清酒が一瞬にして腐る作用があるとか。」

達也「まぁ……そんな心配はありませんでした!無事に物件も売れましたし♪
それじゃちょっとウチの方へ行きましょうか!」

右京「…」

こうして達也の案内で彼の自宅に案内されたが、右京は彼が案内した場所を見て
驚きを隠せなかった。
何故ならそこは…かつて小林真奈美とお腹の赤ん坊が惨殺されたアパートだったのだから…

124:1:2013/09/19(木)21:24:55.54ID:HkcRUVai0


神戸「それじゃここって…あの小林一家の元住居なんですか!?」

右京「えぇ、間違いありません。
それにしてもまさか…同じ部屋に住まわれていたとは…」

右京は神戸にこのアパートがかつて小林真奈美の殺害現場である事を知らせた。
その事について達也に尋ねてみたところ返事はというと…

達也「いやぁ、こんな事故物件…誰も入りたがる人間なんかいませんからね…
それなら自分で使おうかなっと思って!まぁ私は幽霊とか信じてませんから大丈夫ですって!」

神戸「そんなモンなんですかね…」

右京「普通の人はこの手の事には敏感なのですが…」

達也「ちなみにウチ引っ越したばかりでしてね、そういえば信之が変になったのも
その頃からだったかな?」

125:1:2013/09/19(木)21:25:24.12ID:HkcRUVai0


その時だった。

ドンドン  ドンドン

おばさん「ちょっと!いるんだろ!開けとくれよ!!」

達也「あれはお隣さんだ、ウチに何の用事だ?」

中年の女性が鈴木宅の玄関をノックしていた、気になり尋ねてみると…

達也「ちょっとちょっと!何してんですか?」

おばさん「あら鈴木さん!実はねえ今お宅で若い女の悲鳴と赤ん坊の泣き声がしたのがしたのよ!!」

126:1:2013/09/19(木)21:26:12.51ID:HkcRUVai0


右京「それは本当ですか!神戸くん行きますよ!」

神戸「ハイ!鈴木さんすぐにドアを開けて!」

達也「わ…わかりました!」

達也は神戸の指示通りにドアを開けて家の中に入るが家の中は引っ越し作業の途中なのか、
段ボールやビール缶があちこちに散乱していた。
右京と神戸は急ぎ居間の方に行くが…そこには…

127:1:2013/09/19(木)21:26:45.43ID:HkcRUVai0


達也「響子!?おい!どうしたんだ!しっかりしろ!?」

達也の妹である響子が白目を向いて気絶していた、その気絶している響子の隣には件の人物である、
達也の息子信之の姿があった。
右京は彼にここで何があったのか尋ねてみた。

右京「キミが鈴木信之くんですね、ここで一体何があったのですか?」

信之「男…男の人が…隣の部屋で…女の人を…包丁で刺し殺していた…」

神戸「なんだって!?」

信之の言葉を聞いた右京と神戸は隣の部屋を確認するが…

128:1:2013/09/19(木)21:27:42.00ID:HkcRUVai0


神戸「え…何もないですよ?」

右京「そうですね、死体どころか血痕の跡すらありません。とてもじゃありませんが
殺人の現場では…おや、そういえば…」

神戸「どうしました?」

右京「この部屋、小林真奈美が殺害されたのも確かこの部屋でしたね。
まさか二人が見た光景は…」

神戸「ねぇ信之くん、他に何を見たんだい?」

信之「その男の人…女の人のお腹から…赤ちゃんを取り出していた…」

右京「佐伯剛雄も小林真奈美を殺害後に…お腹の中の赤ん坊を取り出していました。
信之くん…まさかキミが見た光景は…」

神戸「とりあえず響子さんを寝かしておきましょう、話はその後で!」

129:1:2013/09/19(木)21:28:48.26ID:HkcRUVai0


神戸と達也が響子を寝かしつけている間、右京は家の中をいくつか物色してみたがその中で
幾つか気になるモノを発見した。
それは玄関に捨てられていたお札、それに台所に置いてあった一本の清酒であった。

神戸「お札に清酒?こんな物がなんだというんですか?」

右京「このお札…僕は専門家ではないのでわかりませんがこれ…恐らく悪霊退散の
お札じゃないのでしょうかね。
考えてみればこの物件は事故物件です、このようなお札が一枚貼られていてもおかしくはないでしょう。」

神戸「それじゃその清酒は…」

右京「そう!問題はこの清酒ですよ、神戸くんちょっと飲んでみてください。」

神戸「あの…今一応勤務中なんですけどね…まぁ上司の命令って事ならいいですよね。」

達也「ていうかこれウチの酒なんですけど…」

130:1:2013/09/19(木)21:29:55.45ID:HkcRUVai0


神戸「ゴクゴク………ブッ!!!!オゲェ!ゲホッ!ゲホッ!何ですかこのお酒!?
まるで腐ってるじゃないですか!!」

達也「腐ってるってバカな!?数日前に買った酒ですよ!
その証拠に賞味期限だってまだ日数があるんですから!」

神戸「けどこれ…とてもじゃありませんが…飲めたモンじゃないですよ…
しかしこの腐った清酒がどうしたというんですか?」

右京「この家にはビール缶が散乱していました、少し変だと思いませんか?
ビール派の人間が清酒を飲もうとするのは少し引っかかりますよね。」

神戸「お言葉ですが…ビール派の人間だって清酒くらいは飲みますから!」

131:1:2013/09/19(木)21:30:25.99ID:HkcRUVai0


右京「勿論その可能性はあります、しかし問題は何故この清酒が数日前から台所に
放置されているのかです!
ビール缶の散乱っぷりからして達也さんは酒豪だと思います。
では何故、数日前に買った清酒を飲みもせずに台所に放置したのか…
もしかしたらこの清酒は本来飲むために買った物では無いのではありませんか!」

神戸「しかし…飲むためじゃないとしたら…そうか!さっき不動産屋で言ってた…」

右京「えぇ、妹の響子さんから言われていた…
『購入する人間に清酒を飲ませろ、もし吐いたりしたら絶対に売るな!』の言葉通り
達也さんは清酒を用意したんですよ!」

神戸「でも…それだと…やっぱりおかしいですよ!
何でその清酒が使われないでこの家にあるんですか?
確かその佐伯家はとっくに売買済にされたって言われてたじゃないですか!」

132:1:2013/09/19(木)21:30:58.13ID:HkcRUVai0


右京「それは恐らく…達也さん、あなた…響子さんの忠告を無視してあの物件を
売ってしまったのでしょう。」

達也「ハイ…幽霊なんて迷信だと思って…けどこっちだって商売なんですよ!
いくら事故物件だからって都内にある物件を遊ばせとくなんて出来るわけがないでしょ!
それに…一応先方の方には前もって事故物件だと知らせてありますし…」

神戸「そうですね、確かにあなたの行為に違法性はありませんが…」

神戸が言い掛けたその時、先ほど寝かしつけていた響子が起き上がってきた。
だが響子は意識を取り戻したと同時に未だかつてないほどの叫び声を上げた…

響子「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!??」」

達也「おい響子!どうしたんだ!?落ち着いてくれ!」

133:1:2013/09/19(木)21:31:58.65ID:HkcRUVai0


響子「う゛がぁぁぁぁぁ!もうダメ!みんな…みんな殺される!?」

神戸「落ち着いて!どうしますか杉下さん?」

右京「響子さん!僕たちの事がわかりますか?この家で何があったのか教えてください!」

右京は錯乱する響子を抑えつけながら尋ねてみるが彼女の口からそれ以上の言葉は出なかった…

達也「刑事さん…俺どうしたら…」

右京「とりあえずこの家を出る事をお勧めします、息子の信之くんと妹の響子さんを連れて
暫くご実家の方へ預けておいた方が良いと思います。
神戸くん、僕らは明日旧佐伯家に行きましょう。」

134:1:2013/09/19(木)21:32:50.61ID:HkcRUVai0


神戸「まさか杉下さんは旧佐伯家にも何かあると疑っているんですか?」

右京「そう考えるべきだと思いますよ、この状態の響子さんを見ればね…」

神戸「わかりました、それで現在佐伯家に入居している方は何というお名前ですか?」

達也「き…北田…北田さんという夫婦が住んでます!けど刑事さん…私は今朝お伺いしましたが
その時の北田さんは至って普通でしたよ?」

右京「一応念のためにですよ、まあ何事も無ければ良いのですが…」

こうして右京と神戸に見送られながら達也は急ぎ車で家から響子と信之を連れ出したが…
先ほど発狂した響子はコクリ…コクリ…と頷き続け、まるで何かに憑りつかれたかのように
奇怪な行動を取っていた…

135:1:2013/09/19(木)21:36:34.96ID:HkcRUVai0


翌日、右京はさっそく旧佐伯家に現在住んでいる北田夫妻を尋ねるため家の前にいた。
それから少し遅れて神戸もGT-Rに乗って到着した。

神戸「すみません、お待たせしちゃって!」

右京「大丈夫ですよ、ところで何で遅れたんですか?」

神戸「実は免許書の更新に行ってましてね、ゴールド免許ですよ♪」

右京「はて?キミは以前スピード違反になったのでは?」

神戸「あれは顔認識システムの誤作動だと蒙抗議しましてね…
その甲斐あってゴールドになった訳ですよ!!
ちなみにパンチ穴の開いた前の免許証も記念に貰ったんですけど見ます?」

右京「ドヤ顔は結構、行きますよ。」

136:1:2013/09/19(木)21:37:04.01ID:HkcRUVai0


~旧佐伯家~

ピンポ~ン

―「はーい!あら?どちらさまで?」

右京「失礼、警視庁特命係の杉下という者です。奥様の良美さんですね。」

神戸「同じく神戸です。実はちょっとお話があるのですが…」

良美「わかりました、どうぞ中へ入ってください。」

137:1:2013/09/19(木)21:37:51.46ID:HkcRUVai0


右京と神戸は良美に招かれるまま家に入ろうとしたが、右京は家に入る前に庭である物を発見する。

右京「おや、これは?」

神戸「どうしたんですか?先に入っちゃいますよ。」

右京「お先にどうぞ、僕はちょっと気になる事があるので…」

神戸「ハイハイ、わかりました。」

138:1:2013/09/19(木)21:38:23.42ID:HkcRUVai0


こうして神戸だけが先に家の中に入っていった。
残った右京は先ほど発見した物を調べていた、それは小包の入っていた紙袋であった。
当然ながら中身は入っていなかった、しかし宛先の名前蘭には気になる名前が記入されていた…

そう…名前には……佐伯伽椰子という名前が記入されていたのだから…

右京「佐伯伽椰子!まさか…神戸くん!?」

右京は急いで先ほど家の中に入った神戸の後を追おうとしたが後ろから近付いてきた
人間に肩を叩かれた。

振り返ってみるとその人物は…

139:1:2013/09/19(木)21:39:16.42ID:HkcRUVai0


神戸「ハァ…ハァ…なんとか間に合ったようですね!」

右京「神戸くん…先ほど家の中に入ったキミがどうしてここに?」

神戸「杉下さん!ここはもう危険です!早く逃げましょう!」

右京「はぃ?」

家の中に入って行った神戸が急に背後から現れた、それだけでも奇妙なのにそれだけでなく
家から逃げろという発言、いつもの右京ならそんな言葉には従えなかったろうが
この時何故かかつて亀山が言ったこの家に絶対に入るなという忠告を思い出し、そのまま立ち去った。

140:1:2013/09/19(木)21:40:03.09ID:HkcRUVai0


そんな右京と神戸が立ち去る姿を窓越しから良美は不気味な目つきでジッと見つめていた。

神戸「あの…奥さん、どうかなされたんですか?」

良美「いいえ、それよりもお連れの刑事さん遅いですね。」

なんとそこには奇妙な事に、先ほど右京と一緒に出て行ったはずの神戸が、何故か良美と一緒に
居間で彼女に勧められるままお茶を飲んでいた。

141:1:2013/09/19(木)21:40:40.81ID:HkcRUVai0


神戸「まああの人の事ですから、きっと気になる事でもあるんじゃないのですかね。
あれ?この画用紙…子供の絵ですね?
けどおかしいな?お宅はお子さんいないんじゃ…それにこの絵に描かれている名前…
佐伯俊雄?この名前確か…行方不明になっている少年の名前じゃ!?」

良美「…」

神戸はこの絵について良美に尋ねるが良美は顔を俯かせたまま一言も喋らずにいた。
仕方なく右京を呼びに行こうとしたその時だった。

神戸「台所で…誰か倒れている?」

駆けつけてみるとそこに倒れていたのは一人の男性、上着のポケットから身分証を確認すると
名前は北田洋、この家に住む良美の旦那であった。

142:1:2013/09/19(木)21:41:53.73ID:HkcRUVai0


神戸「ご主人!しっかりしてください!…ダメだ…もう死んでる…けど何で?」

良美「鬱陶しかったんです…コーヒーの豆がブルーマウンテンじゃないとダメだとか、
卵の黄身を半熟にしろとか…誰と勘違いしたのやら…私はもう良美じゃないのに…」

その時神戸の背後に先ほどまで居間で顔を俯いていた良美が急にやって来ていた。

神戸「そ…そんな事で殺したっていうんですか!?奥さんあなた正気じゃない!」

良美「えぇ…殺しました…このフライパンで頭を叩いて…」

ブンッ

神戸「ぐはっ!?」

ドサッ

143:1:2013/09/19(木)21:42:31.01ID:HkcRUVai0


神戸は頭を殴られてそのまま床に倒れた。

その良美の背後には白塗りのゾンビのような姿をした少年が現れ、

良美は手を繋ぎ先ほどの居間の方へと戻っていった。

倒れた神戸の手には先ほど居間で見つけた俊雄の絵が固く握りしめられていた…

144:1:2013/09/19(木)21:43:04.39ID:HkcRUVai0


その頃、先ほどGT-Rに乗り急いで佐伯家を後にした右京と神戸だが
右京は何故あの家から立ち去らなければいけないのかを神戸に尋ねたが返答は…

神戸「すみません…今は言えません…」

右京「やはりキミも同じ事を言うのですね、かつての亀山くんもそうでした。
1階の屋根裏を調べていたと思ったらいきなり2階の屋根裏から現れて、
何の説明もなくあの家から避難しろとの一点張り、一体キミたちは何を見た…
いえ、何を知ったのですか?」

神戸「本当にすみません…今は言えないんです!」

右京「そうですか、ところでキミ…頭から血が出てますが怪我しているのですね。
どこでそんな怪我を負ったのですか?」

神戸「そうか…さっき思い切り殴られたからな…痛たた…」

神戸は手で血を拭おうとした時だった、拭おうとした手には自分があの家で見つけた絵を
握り締めていた事にようやく気付いたのだ。

145:1:2013/09/19(木)21:43:53.18ID:HkcRUVai0


右京「この絵…佐伯俊雄…あの事件で未だ行方不明の少年が描いた絵ですね。
……恐らく僕がまた北田さんのところに戻ると言ってもキミは反対するのでしょうね。」

神戸「えぇ、断固として阻止させていただきます!」

右京「…では鈴木さんの実家に行ってもらえますか。僕の考えが正しければ恐らく…」

神戸「わかりました、けど期待はしないでください。誰か一人でも生き残ってれば御の字なんですから…」

右京「…」

こうして右京と神戸は鈴木達也の実家に急行した、だが既に手遅れだった…

146:1:2013/09/19(木)21:44:34.33ID:HkcRUVai0


~鈴木達也の実家~

コンコン コンコン

右京「夜分にすみません、警視庁の杉下という者ですが…」

神戸「ノックしても誰も出ない、かといって車や自転車があるから遠出したとは思えないし…」

右京「止むをえませんね、ベランダから様子を見ましょうか。」

神戸「わかりました!」

しかしその必要はなかった、急に玄関が開いたのだ。
玄関からその出てきた人物は…

147:1:2013/09/19(木)21:45:05.90ID:HkcRUVai0


右京「信之くん!」

神戸「キミ…まだ無事だったんだね!この家の人はどうなったの!?」

信之「みんな…みんな…死んだ…あの女の人と…子供が…」

神戸「女の人と子供…やっぱりか!」

右京「神戸くん!僕は中に入ります!キミは周辺の警察と達也さんに連絡を!」

神戸「ちょ…ちょっと待ってください!あぁもう!」

神戸の制止も聞かずに家の中に入った右京がそこで見たモノは…

148:1:2013/09/19(木)21:45:48.10ID:HkcRUVai0


それは…この家の主である鈴木泰二とその妻ふみの死体であった。
二人のの死に顔はまるで何か得体の知れないモノに恐怖し…それから逃げようとした態勢で死んでいた。

右京「鈴木さん!…死んでいる…おや?…そこにいるのは誰ですか!?」

右京は部屋の奥で誰かが動いている気配を感じた、部屋を覗いてみるとそこにいたのは…

響子「…フフフ…ハハハ…」

右京「あなたは…響子さん!大丈夫ですか!響子さん!?」

そう、部屋の奥にいた人物は響子であった。
達也のアパートで発狂した彼女は最早正気ではなく赤ん坊の人形を抱えて狂ったように
あやしていた…

149:1:2013/09/19(木)21:46:45.73ID:HkcRUVai0


その後、神戸の通報を受けた地元警察が到着。

二人の死因は心臓麻痺によるショック死と診断され事件性は無いと判断された。

生き残った響子と信之だが響子は精神病院に入院させられ、信之も…

父親である達也は何故か行方不明になったために遠縁の親戚に預けられる事になった。

こうしてこの事件は一応の幕が閉じられようとした。

だが…

150:1:2013/09/19(木)21:47:23.81ID:HkcRUVai0


~特命係~

右京「納得いきません、どうもあの家では佐伯家の事件以来奇妙な事ばかりが起きています。
これは最早事件性があると僕は判断します!」

神戸「杉下さん…いくら僕らが叫んでも上は鈴木一家の事件を事故死と判断して
捜査を打ち切ってますから。
それに…いくら探したって証拠なんか出やしませんよ…」

右京「そして僕が最も気になるのはキミの捜査に対する態度です。
以前の亀山くんもそうでした!あの家で何かがあった直後、キミと同じく
この事件に消極的になってしまった。
彼は警察を辞めるまであの事件について何も語ろうとしなかった、恐らくキミと
動揺の何かを体験したのではないのですか?」

152:1:2013/09/19(木)21:48:30.00ID:HkcRUVai0


神戸「やっぱり…何か気付いちゃいましたか…」

右京「僕はあの家に入る直前ある小包が入っていた紙袋を発見しました。
そこに書いてあった宛名は佐伯伽椰子、かつてあの家で死んだ女性の名前です。
何故彼女の名前が書かれていたのかはこの際置いておきましょう。
問題は何が入っていたかです、この紙袋…キミが持っていた俊雄くんが画用紙で描いた
絵を入れられるくらいの大きさじゃありませんかね。」

神戸「杉下さん…何が言いたいんですか?」

右京「かつて僕もあの家で彼女の佐伯伽椰子の日記を手に入れました。
その日記は今でも僕の手元にあります、内容は小林俊介へのストーキング行為に
関する記載でした。
佐伯伽椰子、それに彼女の息子俊雄、僕にはまるでこの二人があの家に近付く者たちを
拒んでいるように思えてなりません!」

153:1:2013/09/19(木)21:49:32.73ID:HkcRUVai0


神戸「杉下さん…あの家に行く気ですね!」

右京「行きます!恐らく…北田さん夫婦にも何か危険が迫っている…いえ…もう何か
起きてしまっていると考えるべきではないでしょうかね。
キミのその頭の怪我…それ、北田さんの奥さんにやられたモノですね。」

神戸「そこまでわかりますか!」

右京「あの家には妻の良美さんしかいませんでしたからね、その怪我の具合からして
彼女はキミを殺す気で襲ったのでしょう。
しかしキミは運よく生き延びた、違いますか?」

神戸「フフ、そこまでわかってしまうとは…けどそれでもあの家に近づけさせませんよ!
それにもう…北田さんたちは手遅れでしょうね。
あの夫婦もきっと…今頃は…」

154:1:2013/09/19(木)21:50:22.95ID:HkcRUVai0


右京「手遅れ…ですか?」

神戸「えぇ、間違いなく。だからあの家には絶対に近付かないでください!
それとこれから僕の言う事を絶対に守ってください!
もしこれから先に白塗りの少年や女性が現れても絶対に近付いたり話しかけたりしないで!
あと数年…いや2年以内に今よりももっと悲惨な事態が起きます!
それまで絶対にあの家には近付かないで…ください!
そして…これはあまり関係ないかもしれませんがその頃には僕は特命係を辞めているかもしれません…」

右京「いきなり話が変わりましたね、それは何故ですか?」

神戸「実はその辺の事情が僕にもわからないんですよ、おかしいですよね…自分事なのに…
とにかく…絶対にあの家には近付かないで!特にこの2年以内は必ず…」

右京「わかりました、キミの…いえ、キミや亀山くんが言った言葉を信じましょう。」

こうして右京はこの時点での佐伯家の捜査を断念した。
いつもの右京なら構わず捜査をするだろうが、以前亀山が鬼気迫る表情で右京に対して
同様の警告がそうさせたからだ。

155:1:2013/09/19(木)21:51:18.51ID:HkcRUVai0


それから数か月後…

神戸「大河内さんが僕を呼び出すなんて珍しいですね、どういった風の吹き回しですか?」

大河内「実は先週、城戸充という男が自殺してな…
その男がこんな遺書を残していたんだ。
内容は自分が無実である事、そして神戸…お前の事を絶対に許せないというモノだった。」

神戸「僕を許さないって…まさか…」

156:1:2013/09/19(木)21:52:20.46ID:HkcRUVai0


大河内「それともうひとつ、これは関係ない話だが遺体があった現場には…奇妙な少年がいたらしい。
その少年は肌に生気が無く…尋ねると妙な奇声を上げていったそうだ。
まるで猫が鳴くような声をしてな…」

神戸「…」

その後特命係が捜査した結果、城戸充の冤罪が判明。
当時その裁判で神戸は嘘の証言をしてしまった事を悔やみ、この事が後々尾を引く結果となった。
その後元警視庁副総監の長谷川宗男により神戸は否応無しに特命係を去る形となった。

更に時は流れ…2年後…

176:1:2013/09/23(月)19:46:59.03ID:nIe1z0+F0


第3話 伽椰子と俊雄

2013年3月

その日、右京の指名により新しく特命係に配属された甲斐亨は恋人の悦子から
ある相談事を受けていた。

カイト「介護士の友達と連絡が付かない?」

悦子「そうなのよ!その子仁科理佳っていうんだけど仕事先に連絡したらもう三日も
無断欠勤しててこっちが行方を知りたいくらいだって言われて…」

カイト「わかったよ、それじゃ俺もちょっと探してみるから!」

悦子「お願いね、私仕事あるから行けなくてゴメン!」

177:1:2013/09/23(月)19:47:52.18ID:nIe1z0+F0


~特命係~

カイト「…という訳でこれから悦子の友達を探しに行きますんで。」

右京「悦子さんの友達ですか、どういう状況で行方不明になったのか詳細は聞きましたか?」

カイト「なんでもその介護士の友達はホームヘルパーやっているそうで、
仕事先の同僚が言うにはその家に行った直後に連絡が付かなくなったとか…」

右京「なるほど、恐らくその訪問先の家で何かあった可能性が高いですね。
そのお宅とは連絡をしたのですか?」

カイト「それが…彼女の職場の人が訪問先に連絡してみたんですけどその家の人が
言うには『何も知らない』の一点張りで…」

右京「気になりますね、僕も一緒に行きます。
とりあえずその御友人の訪問先に行ってみましょう、その訪問先はわかりますか?」

カイト「確か仁科さんの訪問先が徳永さんという家で住所が東京都練馬区寿町4-8-5です。」

右京「東京都練馬区寿町4-8-5…カイトくん、急ぎますよ!」

カイト「ちょ…杉下さん!いきなりどうしたんですか?」

右京はもしやと思いカイトを連れその住所にやって来た、そこは…

178:1:2013/09/23(月)19:48:34.48ID:nIe1z0+F0


~旧佐伯家~

右京「やはりこの家でしたか…」

カイト「杉下さんから聞いたけどまさか仁科さんの訪問先が…あの旧佐伯家だなんて…」

右京「それで仁科さんは本当にこちらでホームヘルパーをしていたのですか?」

カイト「え~と表札にも徳永って書いてあるからたぶんそうですね。
ごめんくださ~い、警察です、誰かいませんか?」

『………』

返答は無かった、留守かと思いカイトは諦めて帰ろうと促すが右京は構わずドアノブを回してみた。

ギィー

するとどうだろうか、鍵が掛かっているかと思ったドアは開き右京とカイトは家の中に入った。

180:1:2013/09/23(月)19:49:27.10ID:nIe1z0+F0


カイト「ちょっと杉下さん!いくらなんでもダメですよ!
他人の家に無断で入ろうとするなんて!!」

右京「嫌なら結構、キミは帰ってもいいですよ。」

カイト「…ったく、それにしても気味の悪い家だな、しかもこの荒れ様は一体…」

カイトが指摘するように家の中は何故かゴミが散乱していた。
右京とカイトは一1階の部屋に人気を感じ行ってみるとそこには布団が敷いてあり誰かが寝ているようだった。

カイト「なんだ、人がいたんだ。お婆ちゃん起きてください!お婆ちゃん?」

右京「カイトくん…無駄です、既に死んでいます。」

カイト「死んでるって…何だこの顔!?」

そう、部屋にいた老婆の死に顔は恐怖に引きつった顔をしていた。
しかし誰かと争った形跡は無く

カイト「これってつまり病死なんですかね?」

右京「…さぁ、検死しないとなんともわかりませんが目立った外傷はありませんね。」

カイト「とにかく俺本部に連絡を…うん?…ギャァァァァァ!?」

右京「どうしましたか!」

181:1:2013/09/23(月)19:49:53.80ID:nIe1z0+F0


カイト「へ…部屋の隅で何か動いたような…あれ?よく見ると…この人は…」

この部屋にいたもう一人の人物、それはカイトが悦子に頼まれて探しに来た仁科理佳であった。

右京「あなたが仁科理佳さんですね!この部屋で…いえ…この家で何があったのですか!?」

理佳「…」

理佳からこの状況を聞き出そうと彼女は放心状態でまともに喋れなかった。
仕方なく彼女を近隣の病院に運び右京とカイトは警視庁本部にこの事を連絡した。

182:1:2013/09/23(月)19:51:07.53ID:nIe1z0+F0


それから1時間後、通報を受け駆けつけた伊丹たち捜査一課が現場検証を行っていた。

伊丹「ここが現場か…待てよ?確かここって…」

芹沢「以前旦那が奥さん殺した家ですよ、それで子供も未だに見つかってないとか…」

三浦「その後もこの家の入居者は立て続けに行方不明になってるっていう曰く付きの家だ。」

伊丹「まったく…よくもまあこんな家に住みたがるモンだ、それで仏の身元は?」

芹沢「徳永幸枝、この家の住人です。ただ数年前から高齢の所為で痴呆症が酷いようで
週に何度かホームヘルパーが訪問しに来る事になってるそうですよ。」

三浦「それで仏の状態は?」

米沢「心臓麻痺ですな、まあ仏さんも高齢でしたし死因は大して問題ではないのですが…」

芹沢「どうかしたんですか?」

米沢「…仏さんの死に顔ですな、何を見たらあんな顔になるのやら…おっと失敬。
これはただの私の私見ですので…」

伊丹「それで同じくこの部屋に居たっていうホームヘルパーは?」

三浦「現在病院で見てもらっている、医者の話だと軽いショック状態に陥っていて暫く
話は聞けそうにないぞ。」

183:1:2013/09/23(月)19:51:40.66ID:nIe1z0+F0


伊丹「…つまりこういう事か、被害者の婆さんがショック死しちまって
それにショックを受けたホームヘルパーがそのまま放心状態になってたという訳か?」

米沢「ショック死でショック状態…お後がよろしいようで…すみません、不謹慎でしたな。」

芹沢「けどひとつ問題があるんですよ、どうも被害者はこの家で息子夫婦と同居しているんですが
その息子夫婦の徳永勝也さんと妻の和美さんに現在連絡が取れないんですよ。」

伊丹「なんだと?」

184:1:2013/09/23(月)19:52:11.73ID:nIe1z0+F0


右京「…となると息子さん夫婦の身にも何か起きているかもしれませんね。」

カイト「いや…いくらなんでもそれは飛躍し過ぎじゃ…」

伊丹「また出たよ…相変わらず神出鬼没ですなぁ警部殿!」

芹沢「あ、今回二人が第一発見者なんで…」

三浦「まったくお宅らの行くところ死体の山じゃないんですか?」

右京「皮肉は結構、ところで芹沢さん。
息子の勝也さんの携帯番号がわかるなら家の中に掛けてもらえますか。」

185:1:2013/09/23(月)19:52:44.58ID:nIe1z0+F0


芹沢「家の中で…ですか?わかりました、掛けますよ。」

トゥルルルルル  トゥルルルルル

右京の指示通り芹沢は家の中で電話を掛けてみた、するとどうだろうか。
何処からかコール音が鳴り響いた、その音の鳴る方へ向かうとそこは2階の屋根裏であった。
しかしこの屋根裏に続く押し入れは何故かガムテープで周りを巻かれていて、
誰も近づけさせないようにしている感じであった。

186:1:2013/09/23(月)19:53:16.81ID:nIe1z0+F0


右京「屋根裏を覗いてみましょう、僕の予想が正しければ恐らく…」

伊丹「ちょっと警部!我々を差し置いて何をやって…うわぁぁぁっ!?」

カイト「伊丹さんどうしたんですか?…なっ!?」

芹沢「ちょっとちょっとみんなどうしたんですか?俺にも見せて…あ…あぁ…
し…死体だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

彼らが2階の屋根裏で発見したのはコール音の鳴る携帯を持った男とその隣に寄り添う
女の死体であった。

後に身元確認を行ったところこの家に住む徳永勝也と妻の和美である事が判明した。
捜査一課は事件性があると判断、さっそく捜査を行うが…

187:1:2013/09/23(月)19:53:44.83ID:nIe1z0+F0


伊丹「とりあえず怨恨の線から調べる、旦那の職場に行くぞ!」

芹沢「ちょっとちょっと…待ってください先輩!」

三浦「それじゃ我々はこれで失礼しますので。」

伊丹たち捜査一課はまず怨恨から調べる事になり事件現場を後にする。
残った右京とカイトは現場を捜索するが…

右京「つまり彼らが亡くなったのは三日前という訳ですか?」

米沢「えぇ、間違いありませんな。
屋根裏で見つかった息子夫婦の死体は検死の結果からして死後四日以上は経過していると思います。」

188:1:2013/09/23(月)19:55:29.08ID:nIe1z0+F0


カイト「ちょっと待ってください、それっておかしくないですか?」

右京「そうですね、息子さん夫婦が既に四日以上前に死亡しているとなると、
仁科さんの職場の方がこの家に連絡した時一体誰が電話に出たのかという事になるわけですが…」

カイト「つまりその時代わりで出た誰かが犯人である可能性が高いって事ですね。
けど問題はそれが誰かって事なんですけど…」

米沢「ちなみにこの家の固定電話に留守番メッセージが入っていました。
これがその内容です。」

カチッ

―『もしもーし!仁美です、誰かいませんか?もしもーし、和美さんいませんか?
母さんの具合どうなんでしょうか?心配しているのでとりあえず一度連絡をください。』

米沢「メッセージは以上です、ちなみにこのメッセージは三日前に入れられてます。」

カイト「この仁美さんっていうのは誰なんですかね?」

右京「先ほど発見された徳永勝也さんの妹さんの事でしょうね、彼女はどうやら
他の家で暮らしているようですよ。」

カイト「なるほど、妹さんからか。けど何でそんな事わかるんですか?」

189:1:2013/09/23(月)19:57:13.28ID:nIe1z0+F0


右京「実は亡くなった勝也さんの携帯を調べたのですが…おやおやこれは…
日時を見ると仁美さんは家の固定電話に掛けた直後に勝也さんの携帯にも掛けて
いるようですね。」

カイト「それがどうかしたんですか?」

右京「三日前といえば平日です、休日でもない日に二度も掛け直すというのは
ひょっとしたらこの妹さんは恐らく以前からこの家で何らかの事態が起きる事を予感して
いたのではないでしょうかね。」

カイト「けどそれなら三日以降も頻繁に掛かるはずじゃないんですかね?
三日前を最後に妹さんの電話は携帯も固定電話の方にも全然ありませんよ。
これっておかしいですよね…あれ?何だこれ?」

右京「どうしましたか?」

カイト「いや…写真を見つけたんですけど…何だこれボロボロだな…けどこれって…
親子の写真…」

190:1:2013/09/23(月)19:58:17.60ID:nIe1z0+F0


カイトが見つけた写真は所々ボロボロで、特に母親の顔は穴が開いていて
判別する事すら出来なかった。
カイトはその写真を右京に見せてみるが右京はその写真に写っている男に見覚えがあった。

右京「これは…佐伯剛雄!?」

カイト「まさかそれって…」

右京「えぇ、5年前この家で事件を起こした男とその家族の写真ですよ!」

カイト「何でこんな物が…」

191:1:2013/09/23(月)19:59:51.94ID:nIe1z0+F0


警官「あ、本庁の方々よろしいですか。実は先ほど病院から連絡があって
仁科理佳さんの意識が戻ったそうなんですけど…」

カイト「本当ですか!けど伊丹さんたちいなくなっちゃったしな…」

右京「彼らも忙しい身ですからね、仕方ないので我々がお手伝いしておきましょうか。」

カイト「うわぁ…また伊丹さんや内村部長に怒られそう…」

こうして右京とカイトは伊丹たち捜査一課に代わり仁科理佳の事情聴取を行うために病院に向かった。

194:1:2013/09/23(月)20:36:19.43ID:nIe1z0+F0


~病院~

病室では既に意識を取り戻した理佳と駆けつけた悦子がいた。

右京「仁科理佳さんですね、もうお身体は大丈夫ですか?」

理佳「ハイ、おかげさまで…」

悦子「亨から連絡もらってすぐに病院に来たけど理佳…あれからすぐに意識が
回復して良かったわ。」

カイト「悦子…仕事大丈夫なの?」

悦子「親友が大変な時に呑気に仕事してられないでしょ!」

195:1:2013/09/23(月)20:36:46.92ID:nIe1z0+F0


右京「さっそくですがお話聞かせてもらえますか?」

理佳「ハイ…わかりました。
三日前、私はホームヘルパーとして徳永さんの家に派遣されました。
そこは何故かゴミが散らかって荒れ放題で…鍵が掛かってなかったので家の中に入ったんですけど
そしたら…幸枝さんが倒れていて…その時はまだ生きていたんです。
それから私は幸枝さんの介護をしたり散らかった部屋を片付けたりして、2階の部屋も掃除
しようとしたら…
変な鳴き声が聞こえてきたんです!」

右京「その鳴き声とは?」

理佳「猫の鳴き声でした、『ミャー』って声が聞こえて…それで2階の部屋の押し入れを開けたら
黒い猫を見つけて…私…その猫を抱こうとしたんです…そしたら…そしたら…」

カイト「何があったんですか?」

196:1:2013/09/23(月)20:37:26.42ID:nIe1z0+F0


理佳「その猫の居た場所に急に男の子が現れたんです!
私ビックリして…センターからもそんな連絡を受けてなかったものだから…
それでその子の名前が確か…」

右京「俊雄…その少年はそう名乗ってませんでしたか?」

理佳「そうです!そんな名前の年齢が小学生くらいの男の子です!
けどその後…幸枝さんが急にブツブツ独り言を始めて…アレ?なんでだろ…
その後の事が全然思い出せない…確か大事な事があったはずなのに…」

右京「どうかご無理をなさらないでください、とても参考になるお話でした。」

カイト「けど杉下さん、よく子供の名前がわかりましたね。
ていうか…あれ?あの家に子供なんかいないはずじゃ…」

理佳「そんな…確かに私はあの家で子供を見ました!」

カイト「けど徳永さんの家は全部で三人家族ですよ、幸枝さんに勝也さんに和美さん…
子供なんかいませんけど?」

理佳「それじゃ私が見た子供は…」

197:1:2013/09/23(月)20:39:08.97ID:nIe1z0+F0


右京「あなたが見た子供というのはこの少年の事ではありませんか?」

右京は先ほど事件現場でカイトが発見したボロボロの写真を理佳に見せた。
理佳は自分が見た少年は確かにこの少年だと答えた、だが…

右京「それはあり得ません。」

理佳「な…何故ですか?」

右京「この写真に写っている少年の名前は佐伯俊雄、5年前父親である佐伯剛雄が起こした
殺人事件以来行方不明になっています。
それにこの写真が撮られたのも5年前、既に5年も月日が流れているのに俊雄くんが
成長せずにこの姿のままというのは少々辻褄が合わないと思いませんか。」

198:1:2013/09/23(月)20:39:47.42ID:nIe1z0+F0


理佳「じゃあ私が見たのって…イヤァァァァァァ!?」

悦子「理佳!落ち着いて!?」

カイト「ちょっと杉下さん!何驚かしているんですか!!?」

右京「すみませんねぇ、どうも僕はこう言った配慮に欠けてしまいがちで…」

カイト「本当デリカシー無いんだから…
けど今の話が本当なら佐伯俊雄くんは生きていたって事になるんじゃ?」

右京「それはどうでしょうかね、ところでここは悦子さんにお任せして僕らは他を当りましょう。」

カイト「他って誰を当たる気ですか?」

右京「勿論、徳永家のもう一人の家族である徳永仁美さんですよ。
少々気になる事もありましてね、それと仁科さん。何か思い出した事があったらすぐに
我々に連絡ください。」

理佳「ハ…ハイ…」

こうして心身衰弱気味な理佳を悦子に託し右京とカイトは徳永仁美の住むマンションへと向かった。

199:1:2013/09/23(月)21:43:04.76ID:nIe1z0+F0


~仁美のマンション~

さっそく仁美の部屋を訪ねてみたが何故か彼女は来客者が来たというのにシーツに顔を包み
窓には新聞紙を敷いてまるで何かに見つからないようにしているようであった。

カイト「あの…徳永仁美さんですよね?」

仁美「そうですけど…どちらさまですか?」

右京「警察の者です、少しお話があるのですがよろしいですか?」

仁美「ハ…ハイ。」

200:1:2013/09/23(月)21:43:32.16ID:nIe1z0+F0


カイト「ところで部屋の中真っ暗ですけど窓開けなくて大丈夫ですか?」

カイトは昼間だというのに薄暗い部屋を明るくしようと窓を開けようとしたその時だった。

仁美「「やめてぇぇぇぇぇ!絶対に窓を開けないで!あいつが…あいつが来る!?」」

突然仁美が血相を変えてカイトの行動を妨げた、これにはさすがに驚く右京とカイトであったが
平静を取り戻した仁美に再度尋ねてみた。

カイト「あ…あいつ?」

仁美「あいつが…あいつが…」

カイト「あの…会社の方に問い合わせたらもう三日近く無断欠勤してると聞いたんですけど…」

仁美「そ…そんな事より…お話って何ですか?」

201:1:2013/09/23(月)21:44:16.28ID:nIe1z0+F0


右京「実はあなたのお母さんと兄夫婦が亡くなられました。
電話の最後の着信があなたの番号でしたので何かご存じなことがあればお伺いしたいのですが…」

仁美「…」

仁美は暫く沈黙をした後何かに怯えながら話を始める、それは今から5日前の話であった。

仁美「四日前の事でした、私はいつものように兄の家に行ったら…
和美さんはいなくてお母さんだけしか見当たらなくて…それで私はお夕飯を作ってたら…
お兄ちゃんが現れて…和美さんはどうしたのか聞いたら買い物に行っただとか…
都合が悪いとか言って…それから突然変な事をブツブツ言い始めたんです…」

右京「一体何を言っていたのかわかりますか?」

202:1:2013/09/23(月)21:45:12.91ID:nIe1z0+F0


仁美「確か…『俺はあの女に騙されていた』とか『俺の子じゃない』とか…
それで私はすぐに追い出されてしまったんです…
その事が気になった私は翌日家に電話してみたんです、けど誰も出なくて…
次に兄の携帯にも掛けみたんですけどそしたら…変な声が聞こえたんです…」

右京「変な声?」

仁美「そうです…確か…」

『ア゛…アアアア…ア゛アアアアア…』

仁美「こんな声が…え?嘘…何で聞こえてくるのよ…イヤァァァァァァ!?」

カイト「ちょっと仁美さん!落ち着いて!」

203:1:2013/09/23(月)21:45:50.40ID:nIe1z0+F0


右京「とりあえずこの部屋を出ましょう、どうにもこの部屋はあなたに悪影響を
与えているようですよ。」

仁美「あ…あぁ…」

それからカイトは仁美を連れてマンションから出て行った。
残った右京は見えざる相手に敢えて挑発とも…宣戦布告とも取れる言葉を送った。

右京「聞こえますか!あなた方の正体は見当がついています。
5年前から続くこの事件の因縁を今度こそ断ち切らせてもらいます!!!!」

そう言い残し右京は仁美のマンションを立ち去った、その時窓に貼られてあった新聞紙の
一部が剥がれ落ちそこから不気味な目が部屋から出て行った右京をジッと見つめていた。

212:1:2013/09/26(木)23:40:07.95ID:xu+aQxk+0


~鑑識係~

右京とカイトは仁美を警視庁で保護してもらい、そのついでに鑑識の米沢のところへ来ていた。

米沢「固定電話の指紋の検出ですか?」

右京「えぇ、仁科さんの勤めていたセンターの方が徳永家に連絡した際必ず出た人間がいるはずです。
その指紋の採取は出来たのでしょうか?」

米沢「一応出来たのですが…前科者のいない正体不明の指紋が検出されただけですね。
この指紋の主が誰なのかが問題ですが…」

カイト「そっか、指紋が検出できてもそれが誰なのか特定しないとダメだもんな…」

213:1:2013/09/26(木)23:41:01.64ID:xu+aQxk+0


右京「でしたらこのノートを使ってください。」

米沢「そのノートは?」

右京が取り出したノートはかつて佐伯剛雄が起こした事件の際に、右京が佐伯家から持ち出した
佐伯伽椰子の日記であった。

米沢「こりゃまた随分とまあ…エキセントリックな文章が並べられていますなぁ…
わかりました、このノートの指紋と徳永家の固定電話機の指紋を照合しましょう。
それまでノートはこちらでお借りしますのでよろしいですか?」

右京「えぇ、どうぞお願いします。」

214:1:2013/09/26(木)23:41:30.32ID:xu+aQxk+0


~内村部長の部屋~

その頃伊丹、三浦、芹沢の三人は内村部長に呼び出されていた、その理由は…

内村「どうだ、この新しく作った歴代刑事部長の写真立ては!見事なモノだろう!」

中園「全くその通りですなぁ!ほら!お前たちも早く感想を言え!」

伊丹「ハ…ハァ…えぇ…見事ですよ…」(棒読み)

伊丹(大至急来いと呼び出されて来てみりゃ自慢話かよ…)(本音)

三浦「本当に圧巻ですなぁ…」(棒読み)

三浦(まさに税金の無駄遣いだ…)(本音)

芹沢「いやー、凄いなぁ…」(棒読み)

芹沢(落書きしてやりたい…)(本音)

215:1:2013/09/26(木)23:42:20.79ID:xu+aQxk+0


内村「うむ、いずれこの中に私の写真もデカデカと立てる予定だからな!
フフフ、将来は警視総監となる私だ!歴代の先輩方よりももっと派手に…
おっと、まだ自慢をしてやりたいところだがお前らを呼んだのはそれだけではない。」

中園「例の徳永家の事件だがその後何か進展はあったのか?」

伊丹「現在我々は被害者たちへの怨恨の線で調べています、ですが…」

三浦「被害者全員がショック死のような症状ですので犯人を特定出来る物証が中々発見出来なくて…」

芹沢「あの家…以前にも事件があったり転居してきた人間が失踪したりと曰くつきですからね…
もしかしたら犯人は幽霊じゃないかと…」

216:1:2013/09/26(木)23:43:12.47ID:xu+aQxk+0


内村「馬鹿者!犯人を見つけるのがお前たちの仕事だろ!
いいか、マスコミの馬鹿どもがこの事件を幽霊だオカルトの仕業だなんぞと騒ぎ始めている!
我々警察がそのような戯言を真に受けてみろ!警察の威信丸潰れだぞ!!」

中園「内村部長の仰る通りだ、いいか絶対に犯人を挙げるんだぞ!
人間の犯人をだぞ、間違っても幽霊の犯人なんぞを挙げるな!」

伊丹、三浦、芹沢「「ハッ!」」

三人は理不尽だとも思う命令を聞き部屋から去って行った、しかし内村部長はこの時一瞬
奇妙モノを目撃してしまった。

217:1:2013/09/26(木)23:44:02.26ID:xu+aQxk+0


内村「おい…」

中園「ハッ!何でしょうか?」

内村「さっきあいつらがこの部屋を出て行く時白い肌をした小学生くらいの子供がいなかったか?」

中園「ハハハ、何を仰いますか。ここは警視庁ですよ!何故子供がいるのですか?」

内村「あぁ…そうだな…」

この時誰も想像していなかった、佐伯家に出向いた者たちがあの忌まわしき呪いを
警視庁内にも降り撒いていた事に、そしてこれが後に大惨事を招くとも知らず…

223:1:2013/09/29(日)16:00:48.59ID:ANjExmKa0


~特命係~

鑑識から戻ってきた右京は旧佐伯家の見取り図を何度も見直していた、そしてもうひとつ
以前神戸があの家で見つけた佐伯俊雄の描いた絵も手元に持っていた。

カイト「へぇー、これが行方不明になった俊雄くんが描いたっていう絵ですか。
それで杉下さんは…まだあの家の見取り図と睨めっこですか?」

右京「えぇ、何故徳永夫妻は2階の屋根裏にいたのか。僕には何かヒントがあるように
思えてならないのですが…」

カイト「俺が見た感じだとあの夫婦の遺体は…何かに逃げてたって感じがするんですよね。
ほらあの2階の屋根裏に続く襖にガムテープが貼られてたじゃないですか。
あれって自分たちで閉じ籠ってたんじゃないですかね?」

右京「それとも…或いは…何かを閉じ込めようとしたのかも…」

224:1:2013/09/29(日)16:01:26.43ID:ANjExmKa0


カイト「何かって?」

右京「思い出してください、仁科さんの言葉を。
彼女はあの襖で黒猫と少年を目撃したと言っていました、もしもそれが本当なら
勝也さんが閉じ込めようとしてたのは…」

カイト「その少年と黒猫…けど俺たちが行った時そんなのがいた痕跡すらなかったですよ。」

右京「それを仁科さんが解いてしまったとしたら…どうでしょうか。」

カイト「まさか杉下さんはその黒猫と少年が徳永一家を皆殺しにしたとでも言う気ですか?
そんな事あり得ないでしょ!」

右京「あの家ではそんなあり得ない事が頻繁に起こっているのですがねぇ…」

225:1:2013/09/29(日)16:01:55.67ID:ANjExmKa0


カイト「ハァ…そうなんですか、ところでこの絵なんですけど…
子供って正直な部分があるじゃないですか、それで思ったんですけどこの親の絵はなんだか
親の残虐性を表しているように思えるんですよね、まぁ俺の気の所為かもしれませんけど。」

右京「なるほど、その解釈もあながち間違いでもないかもしれませんよ。」

カイト「まったく…事件が全然進展しないですね…」

捜査に四苦八苦しているそんな中いつもの如くあの男が…

226:1:2013/09/29(日)16:02:22.17ID:ANjExmKa0


角田「よ、暇か?」

カイト「暇じゃないですよ、見りゃわかるでしょ!」

角田「いや暇だろ…そんな子供の絵とにらめっこしてんだからよ。」

右京「課長いいところへ来てくれましたね、実はお聞きしたい事があるのですが…」

角田「え?何よ?」

右京「5年前に逮捕した佐伯剛雄の事です、実は僕は彼の事を良く知りませんでしたので。
課長は彼について何かご存じな事はありませんか?」

角田「佐伯剛雄か、ヤツは結婚する前までは結構無茶な事ばかりする男だったよ。
それが…たぶん結婚して子供が生まれてからかな、ヤツは麻薬関連からは手を引いたんだ。
それなのに…佐伯剛雄は死ぬ直前になり再び麻薬に手を出した。
現にヤツを逮捕した際薬物検査したらしっかり反応が出たんだぜ。」

227:1:2013/09/29(日)16:02:53.93ID:ANjExmKa0


右京「なるほど、つまり俊雄くんの出生の秘密が彼の…いえ佐伯家の人生全てを狂わせてしまったのですね。」

角田「まぁ…当時アンタの推理を聞いて俺も思ったがさ…自分が汗水流して働いてたのに
実は他人の子供を育ててましたなんて知ったら…そりゃ麻薬に手を出したくもなるわな…
そういう面じゃ男として個人的に奴さんへ同情出来なくもないんだけどさ。」

カイト「なるほど、だからあんな殺人をしでかしたって訳ですか。」

右京「つまり事件当時佐伯剛雄は、麻薬を常用して事件を起こしていた可能性があった訳ですか。」

カイト「まぁまともな神経じゃあんな事件は起こせませんよ。」

右京「…」

角田「それであの家でも麻薬の品を押収してな、そういえばあの家で捜査した所轄の刑事たちが
退職したり失踪したりしたな。」

カイト「そりゃますます曰くつきですね。」

右京「…」

カイト「どうしました?」

右京「刑事の失踪に退職者続出…少し気になりますね。行ってみましょうか。
課長、その退職者の方の現在の所在をお聞きしたいのですが。」

課長「あぁ、わかった。ちょっと待ってろ。」

228:1:2013/09/29(日)16:03:22.69ID:ANjExmKa0


~老人養護センター~

翌日、右京とカイトは角田課長から教えてもらい、ある退職した刑事の下へやって来ていた。

カイト「ここですか。」

右京「えぇ、課長が言うにはこちらに元練馬署勤務の吉川さんという人物が入居している
そうなのですが…」

理佳「あれ?杉下さんと甲斐さんじゃないですか!」

カイト「あぁ!理佳さん!もう仕事に復帰してるんですか?」

理佳「ハイ、家で寝込んでるより外で働いてる方が気が休まるので。
ところで今日は何の御用ですか?事件の事ならまだ思い出せないのですが…」

右京「いえ、今日我々が伺いに来たのはあなたではなく…」

カイト「ここに入居している吉川さんって人とお会いしたいんですけど。」

229:1:2013/09/29(日)16:03:51.39ID:ANjExmKa0


理佳「吉川さん?それならこの人がそうですけど。」

カイト「え!この人が!?」

右京「おやおや…」

右京とカイトが驚くのも無理はなかった、何故なら吉川は痴呆の気があるようで先ほどから
なにやら奇妙な行動を取っていた。
しかしこのまま何も聞かないという訳にはいかないのでとりあえず尋ねてみるが…

230:1:2013/09/29(日)16:04:21.92ID:ANjExmKa0


右京「吉川さんですね?我々は警察の者ですが…」

吉川「いないいない…バァ~!」

カイト「あの!警察です!わかりますか?」

吉川「いないいない…バァ~!」

カイト「ダメだこりゃ、全然話にならない。」

右京「失礼ですが吉川さんはずっとこの状態なのですか?」

理佳「ハイ、けどこれでも落ち着いている方なんですよ。
ここに入居した当時はいつも何かに怯えていたらしくて表に出ようともせずに部屋に籠りっきりで…
奥さんもいらっしゃるんですけど匙を投げたというか…それでウチに入居してるんです。」

231:1:2013/09/29(日)16:04:54.91ID:ANjExmKa0


カイト「まぁ…この状態じゃ無理もないか。」

吉川「いないいない…バァ~!」

右京「ひとつお聞きしたいのですが…吉川さんの身内に幼いお子様はいますか?」

理佳「いえ…私が知る限りじゃいないと思いますけどそれが何か?」

右京「先ほどから吉川さんを見ているとまるで子供をあやしているように思えましてね。
もしかして身内にお子様でもいるのかと思ったのですがねぇ…」

理佳「子供…そういえば…」

カイト「どうしましたか?」

232:1:2013/09/29(日)16:05:34.42ID:ANjExmKa0


理佳「そうだ…思い出した…私は…あの時…」

右京「思い出したというのはまさか…事件の事ですか!」

理佳「私は…あの目…忘れられない…影が動いたんです…」

右京「影?」

理佳「私の影です…それが不気味な形に変化して髪の長い女になって…それが幸枝さんを
襲ったんです!」

カイト「そんなバカな…」

理佳「その後私はショックで気絶して…その気絶する前に私の事を見ていたんです!
そう…あの俊雄っていう男の子が…」

右京「髪の長い女…それに俊雄と名乗る少年…」

理佳「うぅ…イヤだ…気持ち悪い…ウゲェ…」

カイト「ちょ…ちょっと大丈夫ですか理佳さん!?」

理佳は事件の事を思い出したが、それと同時に嘔吐してしまいその場で倒れてしまった。

233:1:2013/09/29(日)16:06:14.10ID:ANjExmKa0


その頃警視庁では…

~鑑識係~

角田課長は城南金融の事件で鑑識係に頼んだ結果を受け取りに来ていた。

角田「よ、暇…な訳ないよな。」

米沢「これはこれは角田課長が直々にこちらにいらっしゃるとは、どういったご用件で?」

角田「ちょっと城南金融の事件についてな、ところでお前さんは何してんだい?」

米沢「実は…杉下警部から頼まれた作業がようやく終わったところでして。
しかし何なんでしょうかねこの日記は…」

角田「日記?うわっ!何じゃこの内容は?」

234:1:2013/09/29(日)16:06:47.00ID:ANjExmKa0


米沢「どうもこの日記の主である佐伯伽椰子なる女性は、ストーカーの気があったらしく
小林俊介なる人物を必要以上にストーキングしていたらしいですな。
そしてその事柄を全てその日記に記入していたようです。」

角田「女のストーカーねぇ、男なら理解出来るが女のストーカーってのは俺にはどうにも
理解出来んわな…」

米沢「私もですよ、しかしこの日記で一番不気味なページがあるのですが…ここです。」

日記をペラペラと捲り米沢はあるページに指を指す、そのページはまるで黒魔術のような
目を催して描いたページ、恐らく伽椰子は自分の目を描いたのであろう。
米沢は好奇心で角田課長にそのページを見せた。

米沢「これなんてオカルトマニアに見せたらたまらないでしょうな、不謹慎ながら
私が警察官でなければネットに公開したいところですよ!」

角田「コラコラ、警察官が何を言ってんだか…しかし俺にもよく見せてくれねーか。」

米沢「ハハハ、好奇心には忠実ですな。ではご一緒に!」

二人は改めて目が描かれたページを見た、すると…

235:1:2013/09/29(日)16:07:26.99ID:ANjExmKa0


ギロリッ!!

236:1:2013/09/29(日)16:08:24.86ID:ANjExmKa0


米沢「なっ!?」

角田「ひぃっ!?」

描かれた目から本物の人間の目が出てきてそして…二人の姿は消えた…

237:1:2013/09/29(日)16:08:54.80ID:ANjExmKa0


~内村部長の部屋~

内村「フフフ、やはりこの位置に私の写真を貼ってだな…」

中園「えぇ、そうですな!あれ?写真が何かおかしくないですか?」

内村「何を言って…う゛わ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

そう、歴任の刑事部長たちの写真が全て髪の長い不気味な女の写真に変わっていた。
そしてその写真から髪の毛が溢れ出てきた。

238:1:2013/09/29(日)16:09:20.86ID:ANjExmKa0


内村「な…何なんだこれは!?」

中園「誰か来てくれー!!」

『ア゛…アアアア…ア゛アアアアア…』

それから数分後…

芹沢「あれ?今さっき刑事部長の部屋から声がしたんだけど?」

気になった芹沢が部屋を確かめに来たがそこには誰の姿も無かった…

239:1:2013/09/29(日)16:09:47.73ID:ANjExmKa0


~捜査一課~

伊丹「おいさっきはどうしたんだ?」

芹沢「いえね、さっき部長の部屋に行ったんですけど誰もいなかったんですよ。
おっかしいよな、絶対声がしたはずなのに…」

三浦「それよりも事件だがどうする、怨恨の線は薄いんじゃないか?」

伊丹「あぁ…被害者家族に殺すほど恨みのあった人間はいないしおまけにアリバイまである…
だからと言って金銭を盗まれた訳でもないから物取りの犯行って訳でもねえ。
まったく捜査線上に犯人が浮かび上がらないってのも珍しいな。」

240:1:2013/09/29(日)16:10:15.81ID:ANjExmKa0


芹沢「ここはひとつ、杉下警部に聞いてみるってのはどうですかね?
何かのヒントになるかもしれませんよ!」

伊丹「いつもいつも言うが捜査一課としてプライドを…!」

三浦「だが芹沢の言う通りだ、このまま何の進展も無いままという方が不味いだろ。」

伊丹「しょうがねえな…ここは恥を忍んで…」

伊丹たちがそう思い立った時である、彼らの下へトラブルメーカーのあの男がやって来た。

241:1:2013/09/29(日)16:10:57.11ID:ANjExmKa0


陣川「お~い!みなさん!大発見!大発見ですよ~!」

芹沢「あれ…陣川さん、どうしたんですか?」

伊丹「またどっかの一般人を指名手配犯と間違えて誤認逮捕しましたか?」

陣川「ムッ!そういう意地悪な事を言う人たちには教えてあげられないな!」

伊丹「じゃあ結構です、それじゃ行くか。」

三浦「あぁ、油売ってる暇は無いしな。」

陣川「ちょ…ちょっと待ってください!しょうがないなぁ…教えちゃおうかな!」

伊丹「おい…芹沢、お前聞いてやれ!」

芹沢「えっ!俺が!?しょうがないな…え~と陣川さんは何を発見したんですか?」

242:1:2013/09/29(日)16:11:37.33ID:ANjExmKa0


陣川「フフフ!実は!例の徳永家の事件について気になる情報を持っている参考人の
女性を連れて来ました!!」

伊丹「なんだと!?」

三浦「そんな人間がいたのか!」

芹沢「その人何処に?何て名前なんですか?」

陣川「何処って…すぐそこの部屋の前にお連れしてますよ。」

伊丹「よっしゃ!さっそく聞き込みだ!」

三浦「これで事件が進展するぞ!」

芹沢「もしかしたら今回は俺たちだけで解決出来ちゃいますねぇ♪」

そう言って伊丹たちは急ぎその女性が待つ捜査一課の部屋の前まで行った。

しかし彼らは最後まで陣川の話を聞くべきであった、何故ならその女性の名前は…

243:1:2013/09/29(日)16:12:06.04ID:ANjExmKa0


陣川「まったく…みんな話も聞かずに行くんだから、そちらの参考人の女性の名前は
佐伯伽椰子さんという名前ですから!」

『ア゛…アアアア…ア゛アアアアア…』

陣川「いやぁこんな事言うのもアレなんですけど初対面でちょっと美人かなと思ったり
もしかしたら伽椰子さんが僕の運命の人なんじゃないかと思ったり…あれ?誰もいない?」

そう、陣川が駆けつけた時には誰もいなかった。
伽椰子も…それに先ほど急いで伽椰子の下へと駆けつけた伊丹、三浦、芹沢、三人の姿も…

244:1:2013/09/29(日)16:12:57.22ID:ANjExmKa0


それから暫くして右京とカイトは警視庁に戻ってきたが…

カイト「あぁ、悪かったって!あとで悦子の方からもフォロー入れといてくれよ、それじゃ!」

ガチャッ

右京「今の連絡は悦子さんからですか?」

カイト「ハイ、悦子に理佳さんが倒れた事伝えたら怒られちゃって。
なんでも悦子さんは少し前に恋人に別れ話を告げられて傷ついているから少しは労われって…
まぁ女ってそういう面がありますからね、恋愛事には男は敏感ですから。」

右京「ところでカイトくん…気になりませんか?」

カイト「気になるって…さっきからこの不気味なまでに静かな警視庁がですか?」

245:1:2013/09/29(日)16:13:26.82ID:ANjExmKa0


右京「えぇ、ここは東京都の治安の要とも言える場所ですよ。
それなのに僕たちは先ほどから誰とも遭遇していない、門番にいるはずの制服警官すら
いないのはどう考えてもおかしい事じゃありませんか!」

カイト「まさか俺たちに内緒でみんなで避難訓練をしているわけじゃ…ないですよね。
さすがにそこまで特命係ハブられてませんし…」

右京「とにかくキミは特命係の部屋に戻っていてください、僕は鑑識の方へ行きます。
米沢さんからの結果を聞かなければいけませんからね。」

カイト「わかりました、杉下さん気を付けて!」

246:1:2013/09/29(日)16:13:57.06ID:ANjExmKa0


~特命係~

カイトは特命係の部屋まで戻って来れたがここにも誰もいなかった。

カイト「まぁ…ここは俺と杉下さんしかいないから当然だけどさ…隣の組対5課の人たちまで
いないとかおかしいだろ…」

ガタッ  ガタガタ

その時部屋の隅っこから物音がした、気になったカイトが覗いて見るとそこにいたのは…

247:1:2013/09/29(日)16:14:23.88ID:ANjExmKa0


カイト「あの…陣川さん?こんなとこで何してんですか?」

陣川「おぉ!甲斐くん!よかったぁ~、ようやく人に会えた!」

カイト「それよりも何でこんなに人がいないんですか?」

陣川「知らないよぉ!気付いたらみんないなくなってたんだよ!?」

カイト「えぇ!?」

248:1:2013/09/29(日)16:15:46.26ID:ANjExmKa0


ガサッ

陣川「あれ?誰か部屋に入って来たぞ!」

カイト「あれは…角田課長!それに大木さん、小松さんも!」

角田『…』

大木『…』

小松『…』

部屋に入ってきた人物、それは確かに角田たち組対5課の刑事たちだった。
しかし明らかに様子がおかしい、まるで生気を取られた抜け殻のようであった。

249:1:2013/09/29(日)16:16:17.61ID:ANjExmKa0


~鑑識係~

一方右京は米山に鑑識の結果を聞きにきていたがこちらも無人であった。
米沢の机にあるのは右京が依頼した調査結果の報告書、それにその際に右京が貸した
伽椰子の日記のみであった。

右京「米沢さんの報告書…やはり採取された指紋は佐伯伽椰子のモノでしたか。
しかし既に死亡した彼女が何故徳永家の固定電話に指紋を残したのか…」

その時であった。

250:1:2013/09/29(日)16:16:49.16ID:ANjExmKa0


ヴィー、ヴィー、ヴィー、

右京の携帯が鳴った、右京に連絡してきた相手は…

右京「もしもし、神戸くんですか、お久しぶりですね。約一年ぶりでしょうか?」

神戸『お言葉ですが…挨拶は省きます、杉下さん…今すぐ警視庁から逃げてください!』

右京「それは…どういう事なのですか?」

神戸の不気味な連絡を受けたと同時に右京の周りには…

251:1:2013/09/29(日)16:17:18.72ID:ANjExmKa0


伊丹『…』

三浦『…』

芹沢『…』

米沢『…』

内村『…』

中園『…』

大河内『…』

普段右京と接する警察官全てが伽椰子に呪われてしまい亡者と化していた姿で溢れていた。

神戸『警視庁は佐伯伽椰子によって呪われてしまいました!すぐに逃げてください!!』

270:1:2013/09/30(月)19:02:31.33ID:EI8GyOvI0


~特命係~

亡者と化した角田、大木、小松は部屋に居るカイトと陣川に襲い掛かろうとしていた。

カイト「あの…角田課長?その…大丈夫ですか?」

陣川「か…甲斐くん…その人たち…おかしくないか…」

角田『あ゛…ああああ…あ゛…あああ…』

角田はカイトの首を絞め殺そうとしてきた、その時…

ドガッ

右京「どうやら間に合いましたね!」

カイト、陣川「「杉下さん!?」」

角田たちを押しのけ右京がカイトと陣川のピンチを救いに来た。

271:1:2013/09/30(月)19:06:06.36ID:EI8GyOvI0


右京「カイトくん!大丈夫でしたか?おや…陣川くん…キミまでいるとは…ここはもう危険です!
脱出しますよ!」

カイト「けど杉下さん!これはどういう事なんですか!?」

右京「わかりやすく説明すると特命係が本当に警視庁の陸の孤島になってしまったのですよ!」

カイト、陣川「「えぇ!?」」

特命係の部屋を抜け出し地下の駐車場まで向かうがその道中…

岩月『あ゛…あああ…』

小田切『あ゛ああああ…』

カイト「嘘だろ…サイバー犯罪対策課の岩月さんと小田切さんまで…」

右京「どうやら彼らだけではありませんよ、あちらを見てください。」

陣川「別方向にも人が…けどあれって!?」

カイト「そんな…いや…まさか…冗談じゃないぞ…」

272:1:2013/09/30(月)19:07:49.35ID:EI8GyOvI0


カイトが目にしたのは警視庁警視総監である田丸寿三郎、それに警察庁長官である金子文郎。
そして…

甲斐『あ゛あ゛ああああ…』

カイト「アレは…親父…俺の親父が…」

カイトの父であり警察庁次長でもある甲斐峯秋、警察を代表する官僚が亡者と化した姿がそこにあった。

陣川「バカな!警察の幹部が何でこんな…」

右京「そういえば今日は警視庁で幹部職員の定例会議がありましたね、それに警察庁の
金子長官や甲斐次長までが参加してたとは予想外でしたが…」

カイト「なんなんだよクソ親父が!アンタこんなとこで何をしてんだよ!?」

右京「彼らに何を言っても無駄です、既に彼らはこの世のモノではないのですからね。」

273:1:2013/09/30(月)19:08:20.10ID:EI8GyOvI0


カイト「チックショー!!」

カイトの叫びも虚しく亡者と化した幹部職員たちが襲ってきようとした。

甲斐『あ゛…あああ…』

田丸『あ゛あああ…』

金子『あ゛ああああ…』

そんな時だった…

274:1:2013/09/30(月)19:08:55.64ID:EI8GyOvI0


ブロロロロロロンッ!

駐車場に黒のGT-Rが現れ右京たちを襲ってきた甲斐次長たちを跳ね除けた。

神戸「杉下さん!乗って!」

右京「神戸くん!?」

陣川「ソンくん!グッドタイミングだよ!」

カイト「え?誰?」

右京たちは神戸のGT-Rに乗り込み亡者の巣と化した警視庁を後にした。

275:1:2013/09/30(月)19:10:33.61ID:EI8GyOvI0


カイト「親父…チクショウ…何でこんな事に…」

陣川「甲斐くん!今は堪えるんだ!」

右京「神戸くん、先ほどは助かりました。どうもありがとう。」

神戸「本当はもっと早く駆けつけたかったんですけど…警察庁に移動になってしまったので
旧佐伯家で起きた事件を知ったのが今日の報道で知ったばかりだから…」

右京「既に伊丹さんたちもヤラれてしまいました、そちらの警察庁はどうですか?」

神戸「駄目ですね、既に警視庁と同じで無人の状態ですよ…」

陣川「そんな…警視庁と警察庁が壊滅の被害を受けたらこの東京はお終いですよ…
犯罪者たちによる無法地帯になってしまうじゃないですか!?」

神戸「その心配はないと思いますよ。」

カイト「それってどういう事ですか?」

神戸「こういう事だよ!」

276:1:2013/09/30(月)19:11:35.30ID:EI8GyOvI0


神戸は車に搭載されているカーTV、それにラジオを付けた。

だがどのチャンネルを回しても放送中止になっているという異例の事態であった。

それどころかまともに車を走らせているのは神戸の運転している車のみで、

他の車はガードレールにぶつけていたりあるいは無人のまま放置されていたりと、

まるで右京たち以外の東京都民はみんないなくなってしまったかのようであった。

神戸「実は杉下さんたちと合流する前に…鈴木響子さんと信之くんの消息を探ったんですけど…」

右京「どうでしたか?」

277:1:2013/09/30(月)19:12:15.05ID:EI8GyOvI0


神戸「響子さんは精神病院を抜け出し行方不明で、信之くんは…とりあえず保護者の親戚の方に
携帯番号を聞き出したんですけど通じなくて…」

右京「わかりました、僕が掛けてみましょう。」

トゥルルルル  トゥルルルル

右京「おや、繋がりましたね。もしもし、鈴木信之くんですか?お久しぶりです。
警視庁の杉下ですが…」

278:1:2013/09/30(月)19:12:47.83ID:EI8GyOvI0


信之『『助けて!!!!』』

右京「信之くん!?」

信之『あの女の人が…襲ってきた…それも一人なんかじゃない!たくさん…あぁ…そんな…
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?』

右京「信之くん!信之くん!?」

それっきり信之からの連絡は途絶えた、だがすぐに返事が返ってきた、しかしそれは信之からの返答ではなかった。

279:1:2013/09/30(月)19:13:29.48ID:EI8GyOvI0


『あ゛…あ゛…ああああああ…』

ガチャッ

右京「ダメです!信之くんも手遅れでしょうね…」

神戸「クッ!それともうひとつ杉下さんに知らせたい事が…ですがこれは後でお伝えします。」

右京「?」

280:1:2013/09/30(月)19:14:21.15ID:EI8GyOvI0


カイト「杉下さん!この事態は一体何なんですか!?」

陣川「そうですよ!説明してください!」

右京「そうですね、この事件の犯人は…佐伯伽椰子!」

神戸「佐伯伽椰子は5年前から人々を呪い殺し…それを糧に力を付けてきた、そういう事でしょうね。」

カイト「ちょ…ちょっと待ってください!佐伯伽椰子って5年前に殺された女性の事でしょ!
一体どういう事なんですか!?」

右京「全ては…旧佐伯家に行けば判明する事ですよ!」

神戸「…」

281:1:2013/09/30(月)19:14:50.51ID:EI8GyOvI0


こうして右京たちは一路旧佐伯家へと向かったがその道中で…

陣川「なるほど、伽椰子さんは失恋してしまいおまけに旦那さんにも暴力を振るわれていた訳か…」

カイト「いや…暴力というか殺されてますから…」

陣川「キミにはわからないのか!彼女はずっと苦しんでいたんだよ…だから僕は…
彼女の事を理解できるんだよ!」

陣川に事件の詳細を説明していた矢先の事であった、後ろから猛スピードでやってくる車が現れた。
その車に右京は見覚えがあった。

282:1:2013/09/30(月)19:15:42.87ID:EI8GyOvI0


カイト「何だあの車?」

陣川「きっと僕たち以外にも生存者がいたんですよ!」

右京「待ってください!あの車は…捜査一課の…伊丹さんたちの車ですよ!?」

伊丹『あ゛ああああ…』

芹沢『あ゛あ゛ああああ…』

ドンッ!!

神戸「うわっ!追突させてきたなんて!?」

カイト「ちょっ!伊丹さんやめてください!」

283:1:2013/09/30(月)19:16:43.13ID:EI8GyOvI0


カイトは伊丹にやめるよう訴えるが既に亡者と化した伊丹にその言葉は届かない。
それどころか…

ドンッ!  ドンッ!!

神戸「まずい…あっちは加減無しですよ…」

カイト「なんとか振り払えないんですか!」

神戸「わかった…うん?」

神戸はアクセルを踏もうとしたが足に何か違和感を感じてしまい踏めなかった。
それどころか伊丹の車がまたもや追突してきて神戸のGT-Rは横転してしまった。

ドン!ガラ ガッシャーン!!

カイト「痛てて…」

284:1:2013/09/30(月)19:17:26.18ID:EI8GyOvI0


右京「全員大丈夫ですか?」

陣川「ぼ…僕は大丈夫です!」

カイト「は…早く車から降りましょう…ここまで来ればあの家は目と鼻の先ですよ!」

陣川「それじゃあ早く降りましょう!」

右京、カイト、陣川の三人はすぐに横転したGT-Rから降りたが神戸だけが降りれなかった。

右京「神戸くん!キミも早く降りてください!」

神戸「いえ…僕は後から行きます…杉下さんたちは一足先に旧佐伯家に向かってください!」

カイト「けど…こんなとこに置いていけないですよ!」

神戸「いや…僕は足を捻ってしまったらしくてね、いいから急いで!早く!」

285:1:2013/09/30(月)19:18:14.18ID:EI8GyOvI0


神戸の言う通りここでグズグズしている暇は無かった、既に先ほど車をぶつけてきた伊丹たちが
車から降りてきて右京たちのところへ向かってきたのだから。

右京「わかりました、絶対に来てくださいよ。」

カイト「ちょ…杉下さん!?」

右京「伊丹さん!僕たちはこっちです!こっちに来なさい!!」

陣川「そうか!僕たちに注意を向けさせるために…!」

カイト「ほら!伊丹さん!こっち来てくださいよ!ほらほら!」

こうして右京、カイト、陣川の三人は伊丹たちの注意を引くために敢えて目立つように
行動した。

しかし…

286:1:2013/09/30(月)19:19:47.29ID:EI8GyOvI0


神戸「杉下さん、行ってくれたか…実は言いそびれてしまいましたがさっき話そうと
したのは亀山さんの事なんですよ。
以前杉下さんから亀山さんもあの家に入った事を聞いたので調べたら昨日亀山さんは…
サルウィンで…変死体で発見されたって…すみません…言えなくて…」

それから神戸は先ほど踏めなかったアクセルペダルに視線を送る、そこにいたのは…

『ア゛…アアアア…ア゛アアアアア…』

亡者と化した男がずっと神戸の足を掴んでいた、その男の正体は…

287:1:2013/09/30(月)19:20:38.25ID:EI8GyOvI0


神戸「あなたは城戸充…まさかこんな形で再会するなんて…
これも因果応報ってヤツかな…杉下さん…この未来を絶対に変えてください…」

城戸『ア゛…アアアア…ア゛アアアアア…』

亡者の城戸が神戸に奇声を発する、悍ましい声が上げられた次の瞬間、GT-Rの運転席に神戸の姿は無かった…


つづく

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