1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/09(月)00:26:28.59ID:bkdVVGD30


misaki_shokuho

4月1日

きょうは道を歩いていたら、いじわるな男の子たちにかこまれてしまいました

わたしはすごくこわくて、からだがふるえて動けませんでした

わたしはこれからどうなっちゃうんだろうって思ったら、急に男の子のうちの一人がふっとんじゃいました

わたしはびっくりしちゃってめをぱちぱちしていたんだけど、そのあいだにほかの男の子たちもどんどんたおれていきました

男の子たちは覚えてろー、と言いのこしてすたこらさっさとにげていっちゃいました

わたしはしばらくぼーとしていました。すると、男の子がはなしかけてきました。その子はわたしをかこんだなかにはいなかった男の子だって気づきました

だいじょうぶ?けがはない?と聞いてきたので、だいじょうぶよぉありがとぉっていいました

すると、その子はにっこり笑いました

わたしはどうしてかわからないけどとてもどぎまぎしてしまって、とても熱かったです

でも、せめて、なまえは聞きたいなって思って、がんばってなまえをききました

あなたはだあれ?ってきくと、その男の子は、おれは、かみじょうとうまっていうんだって言いました

その子のなまえはかみじょうとうまっていうんだ、とわたしはおもいました

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/06/09(月)00:27:34.84ID:bkdVVGD30


とうまさんってよんでもいい?と聞くと、いいよ、とうまさんは言いました

わたしはなんだかとてもうれしくて、すごくよろこびました

とうまさんは言いました

おまえのことはなんてよべばいいって言いました

わたしはなまえを言いました

わたしはしょくほうみさきっていうのよぉって言いました

とうまさんは言いました

じゃあみさきってよぶ!よろしくなみさき!って言って、笑いました

わたしはとってもとってもうれしくって、うれしくってにこにこ笑ってました

とうまさんはばいばいしながら、また明日、っていって走って行きました

わたしもばいばいしながら、また明日、って言いました

4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/06/09(月)00:42:34.26ID:bkdVVGD30


4月2日

きょうは、とうまさんをさがしていました

とうまさんはきのう、また明日、って言っていたので、きっときょうも会えるんだろうなっておもってさがしました

でも、歩いても歩いても、とうまさんはみつかりませんでした

どうしていないんだろう

わたしはすこし、ほんのちょっぴりだけ泣きながら、とぼとぼ家に帰ろうとしていたら、おーいって、うしろから声をかけられました

わたしはふりかえりました。すると、わたしにむかってはしってくる男の子がいました

わたしはその子のかおを見たしゅんかん、とってもえがおになりました

その子は、とうまさんだったからです

とうまさんは、りゆうは分からないけど、とってもきずだらけでした

どうしていっぱいけがしてるのぉ?ってわたしは聞きました

5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/06/09(月)00:44:15.30ID:bkdVVGD30


とうまさんはこまったように目をきょろきょろさせながら、ころんだんだよって言いました

わたしはふうせんみたいにぷくーってほっぺたをふくらませました

とうまさんがうそをついているなっておもったからです

わたしはうそをついたらだめなのよぉってとうまさんにぷんぷんです

とうまさんはまたまた目をきょろきょろさせて、ごめんな、でも、だいじょうぶだから、って言いました

とうまさんがだいじょうぶって言うのなら、きっとだいじょうぶなんだろうなぁっておもって、わたしはそれいじょうなにも言いませんでした

でも、それでも、とうまさんに会えてよかったです

きょうは少ししか話せなかったけれど、とうまさんはきょうも、また明日、って言ってばいばいしました

だから私も、また明日、ってばいばいしました

また明日もとうまさんとおはなししたいなぁ

19:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)20:51:40.29ID:bkdVVGD30


4月3日

とうまさんはとってもやさしいです

わたしがこうえんのすなばでひとりであそんでいると、とうまさんがやってきたのです

とうまさんは、おれもいっしょにあそんでもいい?ってにこにこでたずねてきました

わたしはなんどもうなずきました。うれしくてしかたありませんでした

とうまさんは意外と器用で、おっきなおしろができあがりました

わたしは、こんなにおっきなおしろを作ったのははじめてだったので、とっても笑顔になりました

あんまりうれしかったので、ついとうまさんにだきついてしまいました

でもとうまさんはしっかり受け止めてくれて、よろこんでくれてよかったって言いました

とうまさんに出会ってからまいにちがたのしいです

20:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)20:58:04.74ID:bkdVVGD30


4月5日

きょうもこうえんにあそびに行ったけど、とうまさんはいませんでした

しょんぼりしていたら、ぽつぽつ雨がふってきました

ぬれるとかぜをひいてしまうので、わたしは急いでちかくの大きな木の下に行ってあまやどりをしていました

わたしはそのときはひとあんしんしていたけれど、このままだとかえれないなぁって思いました

そうしたら、小さなかさを持った男の子がとおりがかりました。わたしはあっ!ってこえを出しました

とうまさんだったのです

とうまさんはここから少しはなれたところだったけど、すぐにわたしに気付いてくれました

そうしたら、急いではしってきて、わたしにかさをくれました

かぜ引くなよ、って笑いかけて、そのまま雨の中をはしっていってしまいました

とうまさんはとってもやさしいです。でも、こういうのはあまりすきじゃないです

わたしといっしょに帰ればよかったのになぁ

21:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)21:08:40.36ID:bkdVVGD30


4月7日

きょうはこうえんでとうまさんと待ち合わせしました

とうまさんを待っていたけれど、なかなか来ませんでした

わたしはまだかなーって思ってずっと待っていたら、気が付いたらおひさまが沈んでしまっていました

そしたらとうまさんがとてもつかれたような顔ではしってきました

ごめんな、って言いながら、すごく汗だくでした

わたしは、どうしておくれたのぉ?って聞きました

とうまさんはすこし考えたあとに、うちゅうじんにおそわれちまったんだ、って笑いながら言いました

しばらくの間、とうまさんといっしょにいてわかったことがあります

とうまさんは、うそをつくのがとってもへたです

22:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)21:09:36.54ID:bkdVVGD30


とうまさんにはあまりうそをついてほしくないと思いました

どうしてかというと、うそをつくのはいけないことだからです

それに、とうまさんのうそはあんまりおもしろくないからです

あと、気になることがもうひとつあります

とうまさんは会うたびにきずがふえてるなぁとわたしは思います

でもわたしのかんちがいかもしれないので、それいじょうはなにも聞きませんでした

23:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)21:15:08.72ID:bkdVVGD30


4月11日

きょうもとうまさんい会いたくてしかたがなかったので、わたしは出かけようとしました

でも、止められてしまいました

かみじょうとうまとあそんじゃいけませんって言われました

とうぜん、急にそんなことを言われたわたしはぷんぷんです

どうして?って聞きました。とうまさんはとってもやさしいのよぉ?って言いました

せいかくのもんだいじゃない、と言われました

しんぱいしてるんだ、きけんな目に合うかもしれないんだよと言われました

あの子は『やくびょうがみ』なんだ、と言われました

24:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)21:16:23.15ID:bkdVVGD30


わたしにはそれがどういう意味なのかよくわかりませんでした

だけど、とにかく、とうまさんは良いひとなのです

それはぜったいまちがいなんかじゃないってわたしは思います

わたしはこっそりぬけだしてお外へ出かけました

もちろん、とうまさんと会うためです

とうまさんと会えると思うと、わたしはうれしくってるんるんです

25:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)21:20:57.36ID:bkdVVGD30


4月18日

きょうはとうまさんといっしょにあそびました

いつものようにたのしくおはなししていると、わたしはふと思い出しました

とうまさんはこんなにやさしくておもしろいのに、どうしておとなは近付いちゃだめ、なんて言うのでしょう

どうしてもなっとくがいかなくて、とうまさんにそのことを伝えました

わたしの家の人が、とうまさんに近付いちゃだめ!って言ってたのよぉ、と言いました

そしたら、とうまさんは、とってもとっても悲しそうな顔をして、そうなんだ、って言いました

26:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)21:31:19.73ID:bkdVVGD30


かまわずに、わたしは、笑いながら言いました

わたしは、とうまさんとずっといっしょにいるからね

そう言いました

とうまさんといっしょにいると、わたしはとっても楽しいのよぉ

そう言いました

だから、そんな顔しないで、笑っていて

そう言いました

28:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/09(月)21:32:04.40ID:bkdVVGD30


とうまさんはとつぜん顔をくしゃくしゃにして、わんわん泣き始めてしまいました

かなしいのかな、と思ったけど、そうじゃありませんでした

とうまさんは、泣いていたけれど、ありがとう、って言っていました

なんどもなんども、ありがとう、って言っていました

わたしはちょっぴりおどろいたけれど、とてもぽかぽかしたきもちになりました

わたしでもとうまさんのことをよろこばせられるんだなぁとうれしくなりました

47:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/10(火)22:24:45.31ID:xiLpDicG0


5月1日

もうとうまさんと出会ってからひとつきがたちました

まいにちのように会っているけれど、わたしはぜんぜんあきません

さいきんとうまさんは、前よりもよく笑うようになりました

とうまさんが笑うとわたしも笑います

わたしが笑うととうまさんも笑います

なんだかとってもしあわせなきもちになります

でも、とうまさんはとっても『ねがてぃぶ』だなぁとわたしはおもいました

とうまさんのことはだいすきだけど、それは直さないとだめだなぁとおもいました

48:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/10(火)22:33:57.54ID:xiLpDicG0


5月10日

きょうはとうまさんのおうちにあそびにいきました

とうまさんはあまりわたしをおうちにつれていきたくなさそうでした

でもわたしは、とうまさんの住んでるおうちにとてもいってみたかったのです

わたしはとうまさんに、どうしてもお願い、と言いました

とうまさんはあきらめたように、わかったよ、と言いました

49:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/10(火)22:39:22.38ID:xiLpDicG0


とうまさんのおうちにおじゃましました

とうまさんのおとうさんとおかあさんがいました

とうまさんのおとうさんとおかあさんは、わたしをみてとってもよろこんでいました

とうまとなかよくしてくれてありがとう、と言われました

わたしは言いました

とうまさんはとってもやさしくておもしろいのよぉ、と言いました

とうまさんのおとうさんは、すごくうれしそうなかおをして

そうだろう?とうまはじまんのむすこなんだ、と言いました

とうまさんはすこしうれしそうなかおでした

50:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/10(火)22:51:06.48ID:xiLpDicG0


とうまさんのおうちにはへんなおきものがたくさんありました

とうまさんのへやで、へんなおきものはなんなのぉ?とわたしは聞いてみました

そしたらとうまさんはあんまりおもしろくなさそうなかおをして

とうさんがいろいろなところからグッズをあつめてるんだ、と言いました

どうして?って聞いたら、とうまさんは目をそらしながら

おれが『ふこうたいしつ』だから、と言いました

おれのまわりではふこうなことばかりおきるんだよ、と言いました

おれの『ふこうたいしつ』をすこしでも良くしようって思ってるんだろうけど、おれはきっとずっとふこうなままだよ、と言いました

51:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/10(火)23:02:44.22ID:xiLpDicG0


わたしはそれを聞いてとってもかなしくなりました

かなしくてかなしくて大声で泣きました

とうまさんはすっごくあわてて、どうした、だいじょうぶか?、と言ってせなかをさすってくれました

だけど、わたしはとってもとっても泣いていたので答えられませんでした

しばらくして、すこしだけおちついたけれど、まだまだなみだは止まりそうにありませんでした

とうまさんは心配そうにわたしを見つめてきました

52:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/10(火)23:04:07.46ID:xiLpDicG0


わたしはしゃっくりしながらゆっくり言いました

とうまさんにとってはわたしもふこうのひとつなのぉ?って聞きました

とうまさんはびっくりしたように目をぱちくりしました

とうまさんは言いました

みさきは、まいにちがふこうだったおれの中で、たったひとつのしあわせなんだ

そう言いました

どうやらわたしのかんちがいだったようです

わたしはまちがえたのがはずかしくて顔がまっかになってしまいました

でもとうまさんが、ありがとう、って言ってあたまをなでてくれたのでけっかおーらいだとおもいました

74:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)21:53:41.53ID:x5Nh9tJY0


月 日

さいきんとうまさんと会うことができません

もう5日は会えてないです

とうまさんをおとといも、きのうも、きょうもさがしたけどぜんぜんみつかりません

わたしはかなしくてかなしくてどうしようもないです

とうまさんと会えないとぜんぜんおもしろくないです

75:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)21:57:43.44ID:x5Nh9tJY0


月 日

きょうも会えませんでした

とうまさんに会えなさすぎてさいきん手がふるえます

このにっきをかくのもめんどうになってきました

とうまさんに会えないとなにもかくことがないのです

76:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)22:04:26.06ID:x5Nh9tJY0


月 日

きょうはおとなのひとのないしょ話を聞きました

すると、とんでもないことがわかりました

とうまさんはほうちょうで刺されたらしいのです!!

刺されたらきっとぜったいいたいです!!

どうしてそんなひどいことをするんだろうとわたしはおもいました

とうまさんはきっといたいおもいをしているんだろうなってかんがえたら、なみだがとまりませんでした

78:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)22:15:03.53ID:x5Nh9tJY0


月 日

きょうはとてもひさしぶりにとうまさんに会いました

とうまさんはとうまさんのおとうさんとおかあさんにつれられていました

どうやらきょうが『たいいん』のひだったようです

わたしがかけよっていくと、とうまさんはうれしそうに、でも、ちょっぴりさびしそうに笑いました

とうまさんは言いました

会いにいけなくてごめん、と言いました

とうまさんらしいことばだなぁとおもったけれど、もっとほかに言うことはなかったのかなっておもいます

こういうところはきらいです

80:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)22:16:57.78ID:x5Nh9tJY0


わたしは聞きました

からだはもうへいき?もういたくない?、と聞きました

とうまさんは言いました

うん、もうだいじょうぶだ、しんぱいしてくれてありがとう、と言いました

わたしはとってもほっとしたのでこしをぬかしてしまいました

でもとうまさんがさっとかけよって手をにぎっておこしてくれました

ひさしぶりにとうまさんと手をつなぐことができてすごくうれしかったです

だけどとうまさんは、どうしてかわからないけど、すこしさびしそうなかおでした

82:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)22:24:31.79ID:x5Nh9tJY0


月 日

さいあく

ほんとさいあく

ほんとにほんとにさいあく

きょうとうまさんにはっきり言われました

おれは『がくえんとし』に行くことになったんだって言われました

わたしととうまさんはもうきがるに会いにいけないらしいのです

わたしはあたまのなかがまっしろになりました

83:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)22:25:55.72ID:x5Nh9tJY0


月 日

きょうもとうまさんとあそびました

だけど、わたしはいちども笑えませんでした

とうまさんがそう遠くないうちに『がくえんとし』にいってしまうことがあたまからはなれないからです

そうおもったら、とても笑うことなんてできないとおもいました

とうまさんはそんなわたしをみて、すこしさびしそうなかおをしたけれど、どうしてもわたしは笑えませんでした

84:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)22:38:39.07ID:x5Nh9tJY0


月 日

きょうはとうまさんと会いませんでした

そのせいでとてもいちにちじゅう心がまっくらだったけど会いませんでした

わたしはいろいろかんがえました

ひとりで、いろいろ、かんがえました

85:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)22:42:03.88ID:x5Nh9tJY0


わたしはおもいました

どうしてもとうまさんとはなれたくない、とおもいました

だから、わたしはおもいました

わたしも『がくえんとし』にいこう

そうおもいました

そうすれば、またとうまさんといつでもあそべます

そうすれば、またとうまさんといつでも笑い合えます

88:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/11(水)23:03:00.71ID:x5Nh9tJY0


3月20日

きょうでとうまさんは『がくえんとし』にいってしまいます

わたしはとうまさんをみおくりに行きました

とうまさんはわたしをみてとってもとってもうれしおうなかおをしました

とうまさんは言いました

みおくりありがとう、来てくれてほんとにうれしいよ、と言いました

わたしは言いました

来るにきまってるじゃない、あたりまえよぉ、って笑いながら言いました

そして、わたしは言いました

笑いながら、言いました

わたしも『がくえんとし』に行くから、だから、待っていて

そう言いました

とうまさんはえがおで言いました

ああ、待ってる

そう言いました

そう言って、去っていきました

107:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:09:53.26ID:NrP3ad7p0


4月1日

きょうははじめてとうまさんと会った日です

だけど、とうまさんはもうここにはいません

とってもさびしくてしょうがないです

でもわたしはきめたのです

ぜったいに『がくえんとし』にいくんだって

そうきめたのです

108:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:13:12.71ID:NrP3ad7p0


月8日

わたしが『がくえんとし』にいって、とうまさんと会えたときはなにをしてあそぼうかなぁ

はやくとうまさんに会いたいです

やっぱりとうまさんがいないとなにもかくことがないです

109:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:16:48.85ID:NrP3ad7p0


4月8日

わたしが『がくえんとし』にいって、とうまさんと会えたときはなにをしてあそぼうかなぁ

はやくとうまさんに会いたいです

やっぱりとうまさんがいないとなにもかくことがないです

110:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:20:49.20ID:NrP3ad7p0


5月1日

とうまさんにむねをはって会えるように、べんきょうをがんばろうとおもいます

とうまさんはきっと『がくえんとし』でがんばってるはずなのでわたしもがんばります

はやくとうまさんに会いたいです

112:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:25:20.51ID:NrP3ad7p0


10月20日

私はすごく勉強しました

漢字もずいぶん書けるようになりました

これならとうまさんに胸を張って会うことができます

周りの大人からは、「君はとても頭が良い、天才だ」と口々に言われるようになりました

でも別に、大人たちから言われても嬉しくも何ともありません

とうまさんに褒めてもらえたら嬉しかったと思います

早くとうまさんに会いたいです

114:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:29:51.00ID:NrP3ad7p0








115:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:31:58.62ID:NrP3ad7p0


3月20日

月日は流れ、ついに私も学園都市に行く日になりました

どうしてこの日を選んだか、というと、それはもちろん、とうまさんが3月20日にここを去っていったからです

だから、私もとうまさんと同じ日である3月20日に、ここを去りたいと思ったのです

私の胸は高鳴っていました

学園都市に行けば、またとうまさんと会えます

もうすぐなのです

116:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:34:13.47ID:NrP3ad7p0


3月21日

学園都市に着いてからはすぐに色々なことをされました

少し怖かったけれど、きっととうまさんもこれを乗り越えたに違いありません

そう考えれば不思議と大丈夫な気がしました

一通り終わった後、白衣を着た男の人は、私に向かって言いました

「君は非常に素晴らしい!素晴らしい力だよ、食蜂操祈さん!」

一体何が凄いのか私にはよく分かりませんでしたが、どうやら私は『素晴らしい力』を持っているようです

117:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:41:51.81ID:NrP3ad7p0


3月27日

私は学園都市に来てからずっと研究所に連れて行かれてばかりです

私は研究所の人達に言いました

「私は一刻も早く会いたい人がいるのよねえ」

「こんなんじゃ、何のために学園都市に来たのか分からないわよぉ」

研究所の人達は

「その人に会いたいならまずは課題をクリアすることです。そうすればきっとその人に会えますよ」

そう言いました

118:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/12(木)23:43:51.87ID:NrP3ad7p0


3月31日

私はこの学園都市に来て特別な力を手に入れていました

他人の精神に干渉する力です

でも今はまだ不安定で、うまく扱えない時もありました

研究所の人達は演算の補助としてリモコンをくれました

リモコンのおかげでかなり演算が楽になりました

私は疑問に思ったことをぶつけてみました

「私は本当に凄い力を持っているのぉ?」と聞いたら、

「ええ、断言します。あなたの力は非常に素晴らしい。あなたはこれから人の上に立つ存在となるのです」と言いました

人の上だとか、そんなのは私はどうでもいいのです

私がもしこの人の言うとおりに凄い力を手に入れて、とうまさんに伝えたら、きっととうまさんは私の頭を撫でながら

「すごいぞみさき!よくやったな!」って自分のことのように喜んでくれるはずです

それが楽しみで楽しみで仕方ありません

早くとうまさんに会いたいです

132:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/14(土)20:38:06.83ID:FhmDeNOq0


4月1日

今日はついに自由時間が貰えました

私はうれしくて飛びあがって喜びました

とうまさんがどこにいるのかは、もう知っています

私が学園都市に行くとき、とうまさんの両親から既に学校の場所を聞いていたのです

私は軽やかな足取りでとうまさんの通う学校を目指しました

133:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/14(土)20:40:08.20ID:FhmDeNOq0


とうまさんが通っているという学校に着きました

校門の近くで暫くの間うろうろしていましたが、埒が明かないので学校に入ろうとしたら、チャイムが鳴り響きました

私はびっくりして反射的に隠れてしまいました

時間的に考えればきっと昼休みのチャイムだと思います

暫くしたら次々とグラウンドに人が出てきて、楽しそうに遊び始めました

そして、私は、見つけました

たくさんの人達と一緒に、楽しそうにサッカーをしているとうまさんを、私は見つけたのです

135:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/14(土)20:56:16.76ID:FhmDeNOq0


久しぶりにとうまさんを見て、思わず私は息が止まりました

私が最後に見たときよりも身長は高くなり、顔つきも凛々しくなっているように感じました

でも、私が一番注目したのはそこではありませんでした

とうまさんは笑っていました

たくさんの人達と遊びながら、とても楽しそうに笑っていたのです

とうまさんと同じくらいの年齢で、私以外ととうまさんが遊んでいるところは今まで見たことがありませんでした

私は無性にイライラして仕方ありませんでした。とうまさんに友達ができたことを無邪気に喜ぶことなどできませんでした

体の中が焼けるような思いで、食い入るようにその光景を見つめていました

138:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/14(土)21:06:17.01ID:FhmDeNOq0


私の知らない人たちと、楽しそうに笑顔でサッカーをするとうまさんから、どうしても目を背けることができずにいました

すると、とうまさんがチームメイトからパスを受け取り、そのままゴールを決めました

「よっしゃあ!よくやった上条!」

チームメイトの人達が一斉に歓声を上げました。とうまさんを褒め称え、中には勢い余って抱き着く人もいました

とうまさんは本当に嬉しそうでした

とうまさんは本当に楽しそうでした

140:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/14(土)21:08:22.30ID:FhmDeNOq0


その時、私は激しい焦りを感じました

今までは、とうまさんから真の笑顔を向けられるのは私だけだと思っていました

しかし、それが、今目の前の光景を見て、揺らいできたのです

とうまさんは周りの人達に笑顔を振りまき、心底幸せそうに笑っていました

私は、何なんでしょうか

141:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/14(土)21:17:07.99ID:FhmDeNOq0


私は急に怖くなりました

私が今まで築いていた居場所が失われた気がしました

とうまさんは私なんかがいなくても十分笑顔に溢れていました

とうまさんは私以外の大勢の人達に真の笑顔を振りまいていました

私は、その事実に、どうしようもなく震えました

私という存在が揺らいでしまいそうで

私と言う存在が否定されている気がして

居ても立っても入れられなくなり、思わずグラウンドのとうまさん目掛けて飛び出しました

そして、呼びました

大声で、その名前を、呼びました

「とうまさんっっ!!!」

142:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/14(土)21:32:11.82ID:FhmDeNOq0


私が名前を呼ぶと、とうまさんはゆっくり、ゆっくりと振り返りました

その間私は、自分で呼んだにもかかわらず激しいめまいに襲われていました

もしもとうまさんが私を必要としていなかったら……

そうだとしたら、私はこれまでの全ての努力を否定されることになってしまうのです

あれだけ頑張って勉強したのも、あれだけ頑張って能力を磨いたことも、全部、全部……

そうして、とうまさんが振り返って、私と目が合いました

その瞬間、全身に緊張が走りました

しかしそれは杞憂に終わりました。とうまさんは眩しさすら感じるほどの笑顔で、こう言ったのです

「みさき!?みさきか!?久しぶりだなぁほんと!!」

159:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)22:52:43.17ID:iguyxQt40


「誰だよ上条」

「知り合い?」

「俺の幼馴染なんだ!学園都市に来る前からの!」

他の人達に向けて嬉しそうに言ったとうまさんは、私に向かって駆け寄ってきました

「みさき!」

私の名前を呼びながら全力で駆け寄ってくるとうまさんを見つめたまま、しばらく私は呆けていました

その間にもとうまさんは駆け寄ってきていて、私が気が付いた時にはもう目の前にいました

「みさ……どわっ!」

私の目の前でとうまさんは私を押し倒す形でずっこけました

「いたた……」

私を押し倒しながらとうまさんは打ち付けた額をさすっていました

一方の私は、ようやくとうまさんに会えたという実感が湧いてきたところでした

160:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)22:54:57.72ID:iguyxQt40


「ご、ごめんみさき。今どくから……」

私はどうしようもないほど嬉しくて、立ち上がろうとしたとうまさんを力一杯抱きしめました

驚いたとうまさんはのけぞって、そのまま立とうとしたので、両足を当麻さんの腰に回して、全身を使って抱きしめました

「ちょ、苦しい!みさき、苦しいって!」

外野ではさっきまで一緒にサッカーをしていた男の子たちが口笛を吹いたり拍手をしたりして騒ぎ立てていましたが、私にはそんなのどうでも良い事でした

とにかく嬉しくて、精一杯とうまさんを抱きしめ続けました

その時のとうまさんの体はすごく熱かった気がします

161:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)23:01:27.12ID:iguyxQt40


しばらくしたらとうまさんが苦しそうに呻き声を上げ始めたので解放しました

とうまさんは顔を真っ赤にして、苦しそうに呼吸していました

周りではなおも男の子たちが囃し立てていましたが、小学生の男の子なんてとうまさんを除けば皆こんなものなのでしょう。私は無視してとうまさんに改めて話掛けました。

「ずっと会いたかったわぁ……とうまさん」

「うん、待ってたぞ」

とうまさんはそう言って満面の笑みを向けてくれました

とうまさんの笑顔を久しぶりに、しかも間近で見て、私は体中が沸騰しそうなほど興奮しました

162:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)23:09:31.79ID:iguyxQt40


私はとうまさんに褒めてもらうために、必死で磨いた能力の話をしようと思いました

「あのね、とうまさん!私、学園都市に来てすごい能力を手に入れたのよぉ!」

「ほんとか!?すげえじゃねえかみさき!」

とうまさんは私の想像通り、本当に嬉しそうな顔でそう言いました

私はとても嬉しくて、私の能力を実際に見せてあげようと思いました

178:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/17(火)00:05:19.08ID:iXE2lXft0


「みさきの能力って何なんだ?」

とうまさんが目を輝かせて私を見つめてきました

私は嬉しくて天にも昇りそうな気持ちでした

とうまさんのために磨いてきた力を、とうまさんのために使えるこの幸せは、何物にも代えがたいと思います

私は自分の中で何かが湧きあがるのを感じていました

今なら何でもできると―――何でも操れると、そう思いました

私は興奮気味に言いました

「私の力、とうまさんに見せてあげるわぁ」

そしてリモコンのボタンを押しました

163:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)23:20:06.47ID:iguyxQt40


―――――――――――

―――――

とうまさんは目を大きく見開いて私の顔を見つめていました

きっと私の力の凄さに驚いているんだろう、その時は思っていました

何たってサッカーをしていた男の子達全員を私に跪かせたのですから

これほど人を操れたのは私も初めてでした。とうまさんのおかげでまた一つ成長したようです

しかし、とうまさんは褒めてなどくれませんでした

「お前……」

今まで見たことのないような鬼の形相で、とうまさんが叫びました

「お前何してんだぁッッッ!!!」

164:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)23:22:05.61ID:iguyxQt40


とうまさんがこんなに怒っているのを私は初めて見ました。しかもその怒りの矛先は私です

「わ、私は……あなたに……とうまさんに…褒めてほしくて……」

しどろもどろになりながらぼそぼそ喋る私を余所に、とうまさんは跪いたままの男の子たちに何故か右手で体のあちこちを触りました

すると不思議なことに、とうまさんの右手が男の子の頭に触れた瞬間、私の管理下から抜け出したのです

私は身動き一つできないまま、とうまさんが一人ずつ解放していくのを茫然と眺めていることしかできませんでした

165:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)23:27:59.40ID:iguyxQt40


とうまさんの不思議な右手で全員が解放されたあと、とうまさんは男の子たちに向かって言いました

「俺、ちょっとこいつと話があるから。みんな先に行っててくれ」

「え……お、おう。気を付けてな……」

私を怯えたような目で見ながら、男の子たちはぞろぞろと帰って行きました

さっきの騒ぎを見ていた周りの人たちも、一斉に帰って行きました

広いグラウンドには、私ととうまさんの二人だけになってしまったのです

「あ……その「お前さ」

私の言葉を、とうまさんが鋭く遮りました

「お前さ……そんなんじゃなかっただろ…………」

先程の怒りに満ちた顔とは打って変わって、ひどく悲しそうな顔をして、そう言いました

166:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)23:33:24.88ID:iguyxQt40


その瞬間、私は悟ってしまいました

もう、私は、取り返しのつかない程に

とうまさんから失望されてしまったのだと

「ああ…………」

こんなはずじゃなかったのに

こんなはずじゃなかった

こんなはずじゃ……

170:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/16(月)23:43:43.69ID:iguyxQt40


私は今までとうまさんに褒めてもらうためだけに努力を積み重ねてきました

今回のことも、研究所で教えてもらった『この能力の使い方』をそのまま実践して見せただけだったのです

でも、どうやったって時間は戻りません

私は

私はもう、とうまさんに嫌われてしまったのです

頭がパニック状態になった私は、学校の外へと急いで走り出しました

「おい待てよ!みさき!」

一刻も早くこの場から立ち去りたくて、そこら辺に止まっていた車の運転手を能力で操り、その車に転がるようにして乗り込みました

「行って!早く!早くここから消えさせて!」

そうして、半狂乱状態の私は、とうまさんから逃げ出しました

私は、もう、どうやって生きていけばいいのか分からなくなってしまいました

205:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:24:21.85ID:Lioo3S270


5月9日

あの日以来、抜け殻のようになってしまった私に女の研究員が話しかけてきました

「そろそろ何があったのか話してくれてもいいんじゃない?」

私は何も言いませんでした。研究員は肩をすくめると、

「上から通達があってね。あなた、上がるそうよ」

そう言いました。上がる、というのはきっとレベルのことでしょう

あの一件で、私の力は強まりました

それと引き換えに何よりも大切なものを失っってしまったけれど

206:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:25:38.43ID:Lioo3S270


5月10日

私はレベル4になることが決定しました

しかし、そんなの全然嬉しくありませんでした

私はただ、とうまさんの隣で歩いていることができれば、それで良かったのに

どうしてこうなってしまったんだろう

もう一度、あの頃に戻れたのなら……

そこまで考えて、やめました

207:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:33:23.20ID:Lioo3S270


6月3日

研究員の一人が私に話しかけてきました

「4月の後半くらいから、あなたの居場所を聞きまわっている子供がいるそうだけど」

私は目を大きく見開きました

心臓が爆発しそうでした

「…………男?女?」

正直、聞くまでもありませんでした

それが誰なのか、もう分かっていたからです

「ツンツン頭の男の子よ」

208:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:35:06.43ID:Lioo3S270


「会ってあげないの?」

「…………会えないわぁ」

「…………会えるわけないもの」

私はそう呟きました。そう、会えるわけがないのです

私はもう失望されていて、嫌われていて、顔も見たくはないでしょう

これ以上失望されたくない……

209:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:39:22.17ID:Lioo3S270


6月15日

とうまさんは今もまだ私を探し続けているという話を聞きます

でも、私は、無理です

とうまさんに会いたいのに

恐くて、怖くて、足がすくんでしまうのです

このままずっと逃げて、逃げて、逃げて、それから……

私はどうすればいのでしょうか

210:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:48:15.34ID:Lioo3S270


7月1日

どうして

どうしてとうまさんは私を探し続けているのでしょうか

あれからもう三ヶ月……どうして……?

私を探し当てて、何を言いたいのでしょう

少し考えて、すぐに答えが分かりました

きっと私への怒りが収まらないのでしょう

それで、直接絶交を言い渡したいのでしょう

今でさえ私の心は壊れそうなのに、とうまさんから直接そんなことを言われたらきっとショックで死んでしまいます

だから私は逃げ続けます

とうまさんが諦めるその時まで

私は私を守ることで思い出を守り通すのだと

そう決めました

211:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:49:03.29ID:Lioo3S270








212:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/22(日)23:49:46.26ID:Lioo3S270


――――――――――――――

―――――


ガバッ

食蜂「……まだ深夜の2時…」

食蜂「最近、あの頃のことをよく夢に見るわねぇ……」

食蜂「……とうまさんと過ごした日々のことを…」

食蜂「あの頃の私はまだ幼くて、無邪気で……」

食蜂「そして、とうまさんと幸せそうに笑って過ごしていたわぁ……」

食蜂「あぁ…………」

食蜂「……少し、気分転換に風に当たって来ようかしらぁ」

213:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/23(月)00:39:28.17ID:UyA/hXKR0


食蜂「…………」スタスタ

食蜂(あの日から……とうまさんと学園都市で出会ってから、もう8年……)

食蜂(すっかりとうまさんが私を探し回っているなんて噂は聞かなくなったわねぇ)

食蜂(学園都市第五位……『心理掌握』…)

食蜂(こんな地位よりも、私は……)

食蜂(ただ……あなたのそばで笑っていたかった…………)ポロッ

食蜂「………………あらぁ?最近……あの頃の夢を見続けていたせいかしらぁ?」

食蜂「…もう枯れ果ててしまったとばかり思っていたのに………まだ、流せたのねぇ…」ポロポロ

食蜂「本当に…………参っちゃうわねぇ…」

「何に参るって?」

食蜂「っ!?」クルッ

上条「よぉ、みさき」

上条「やっと……見つけたよ。ずっとずっと探してたんだ。8年の間、ずっと…………」

214:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/23(月)00:53:16.91ID:UyA/hXKR0


食蜂(どうして……あなたが……ここにいるの……?ここは、男の人は入っちゃいけないのに……)

上条「最近常盤台のビリビリ中学生と知り合ってさ。そんでお前がここに居るって分かったんだ」

声が出ない。あまりに驚きすぎて、これが夢なのか現実なのかの区別がつかない

そんな私に、とうまさんが語りかけてきた

上条「ここのセキュリティはビリビリに頼んで一時停止してもらったんだ。しばらくすれば復旧するだろうから、長くは話せないけど」

上条「ビリビリからは『何でも私の言うことを聞く』って条件でやってもらったから、この後が大変そうだけどな。……でも」

上条「これで、もう一度お前と話せる」

私は思わず後ずさりした

これが現実だとすれば、とうまさんが私に何の用で来たのか分かっているからだ

食蜂(言われる……!!とうまさんの口から、直接……!!)

私は、あまりの恐怖で逃げ出した

絶交の言葉なんて聞きたくない

私は本当に生きていけなくなってしまう

上条「みさき!待てよおい!話がしたいんだ!」ダッ

215:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/23(月)01:07:17.77ID:UyA/hXKR0


食蜂「げほっ!はぁっ……はぁっ!」

私は必死で逃げた

なりふりかまわず逃げた

会いたかった。本当に、会いたかった。それでも逃げなくてはいけなかった

食蜂「はぁ……はぁ……!」

私は『学舎の園』を抜け、外へと抜け出した

正直もう身体は限界だった。走りつかれた私は道路の真ん中にもかかわらず膝をついてしまった

食蜂「げほげほ……はっ……はっ……」

上条「逃げんなよな……はぁ……はぁ……」

上条「みさき、お前、相変わらず体力ないんだなぁ」ハハハ

食蜂「…………私は……もう、あなたの知ってる『みさき』じゃないわぁ」

食蜂「学園都市第五位……心理掌握………食蜂操祈よぉ……」

上条「それが何だよ。俺は、お前という一人の女の子と話すために8年間ずっと探してたんだ」

249:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:12:16.98ID:wbxEeNos0


食蜂「………………」

上条「ずっと話したかった。ずっとだ」

私はきつく瞼を閉じた。ついにこの時が来てしまったのだと、そう思った

8年もの間逃げ続けてきた現実を、ついに突きつけられてしまう

私は道路の真ん中で惨めに体育座りし、膝に顔をうずめた。しかしとうまさんはかまわず話し始める

上条「お前のしたことはどう転んだって絶対に良い事じゃない。正直言ってあれは人としてやっちゃいけない行為だ」

もう終わりだ。とうまさんから完全に拒絶される時が来てしまったのだ

しかし、とうまさんは次に驚きの言葉を口にした

上条「でも、俺も悪かった。頭に血が上って、お前の事情も聞かずに、お前を一方的に拒絶しちまった……」

上条「みさき、ごめん!」ガバッ

一瞬、とうまさんが何を言ったのか理解できなかった

どうして……あなたが謝っているの……?

食蜂「どうして……私を探し続けていたの……」

上条「………………」

250:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:16:52.84ID:wbxEeNos0


上条「…………お前は気付いてないかもしれないけどさ」

上条「お前は、不幸のどん底に居た俺を救ってくれた恩人なんだ。お前の笑顔に一体どれだけ救われたか……」

上条「そのお前が俺の友達を能力で支配しているところを見て、どうしても納得がいかなかったし、失望した」

上条「でもそれは、俺の勝手な独りよがりだったんだ。それまで『食蜂操祈』って人間の本質を見てなかった」

上条「だから8年間ずっと探してたんだ。もう一度、お前と話すために」

………………、

私は……この8年間、一体何をしていたんだろう

とうまさんが私を探していたのは、直接絶交を言い渡すことだとばかり思っていた

でも、まるで違う

私とは、考え方も器も違う

これが、『上条当麻』という人間なんだ

私の想像の範疇に収まるような代物じゃなかった

もっと優しくて、温かい……

そんなあなただから……私は……

251:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:19:58.28ID:wbxEeNos0


膝にうずめていた顔を上げて、目の前のとうまさんを見上げた

その顔は、とても優しい

食蜂「私……あなたに褒めてほしくて……ただ、それだけで……」

食蜂「とうまさんを喜ばせようって……それで……研究所で教わった通りに……あなたの友達を……」

震える声でそう言う私の顔を、とうまさんはじっと見つめていた

私は思わず言葉に詰まった。今から言おうとしている言葉は、8年間逃げ続けてきた全てを否定し、正反対の道へ進もうとする言葉だ

言わなくちゃならない。言わなくちゃ、先へは進めない

食蜂「ごめん…なさい……とうまさん…………」

今まで逃げ続けてきたものと向き合って

逃げることしかできなかった弱い自分と向き合って

私は、とうまさんに頭を下げた

253:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:22:08.08ID:wbxEeNos0


とうまさんは、道路に座り込んでいる私の目線に合わせるようにしゃがみ込み、私の頭にポン、と手を置いて、にっこり笑った

上条「よし、許す!」

私は、一瞬、耳を疑った

とうまさんは今、許すと言った?

こんなにもあっさりと?こんなにも笑顔で?

上条「俺ともっと話をしよう。上辺だけじゃない、本当のお前を知りたいんだ」

上条「あの時、お前をもっとちゃんと分かっていりゃこんなことにはならなかった」

上条「だから、もうすれ違わないように、きちんと話そう」

上条「今まで出来なかった分も含めて、な」ニコリ

いつの間にか、自分でも気付かないうちに涙がこぼれていた

言葉では言い表せないような温かなものが、心の中を満たしていく……

食蜂「私も……」

食蜂「私も、とうまさんと…………ずっと、話したかった……!!」

254:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:26:28.03ID:wbxEeNos0


私はぴょん、と勢いよくとうまさんの胸に飛びこんだ

そして、小さな子供のようにわんわん泣いた

とうまさんは最初こそ硬直していたけれど、すぐに優しく抱きしめてくれた

とても、とても温かい………

この温もりは、私が世界の何よりも欲しかったものなんだ

もう二度と手放したくないと……手放すものか、と

強く、強く、想った

255:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:28:39.55ID:wbxEeNos0


―――――――――――

―――――

上条「あの……腕、痛いんですけど……」

食蜂「……」ギュー

上条「お前、力強くなったのな……ま、当たり前だよな。あの頃とは全然違うに決まってるもんなぁ」

上条「昔はあんなに小さかったのに、今ではこんなに大きくなっちまって……」

食蜂「……小さい方が、とうまさんは好き?」

上条「ん?いや、俺は身長とかあんまり気にしないけど」

食蜂「え?なぁんだ!身長の話だったのぉ?」

上条「何だと思ってたんだ……?」

256:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:37:57.25ID:wbxEeNos0


上条「うーん……それにしても、今頃ビリビリのヤツすっげえ怒ってんだろうなぁ……」

上条「後始末も全部アイツ任せだし、悪いことしたな……」

食蜂「とうまさん、さっきから言ってたけど、ビリビリってだぁれ?」

上条「んーと、みさきは多分知ってると思うけど。御坂美琴って名前だ」

食蜂「はぁ?御坂美琴ですってぇ?」

上条「何だよ、そんな怖い顔して……」

食蜂(私のせいでとうまさんが御坂さんに弱みを握られてしまうなんて……)

食蜂(でも……この状況は、あの人のおかげでもあるのよねぇ……むぅ……)

食蜂「御坂さん一人じゃ大変だろうしぃ……私も手伝ってあげようかしらねぇ」

上条「おお!ありがとなみさき。俺にもできることあれば言ってくれよ」

食蜂「いいのよぉとうまさんは」

上条「そういうわけにはいかないんだよ」

食蜂「おせっかいなのは相変わらずなのねぇ……安心したわぁ」ニッコリ

257:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:44:44.82ID:wbxEeNos0


上条「さて、そろそろ着くぞ」

食蜂「…………ねぇ、とうまさん」

上条「ん?何だよ」

食蜂「私達は……私は、またあの頃みたいに笑えるかしら……」

食蜂「私は……もうあの頃のような純粋無垢な子供じゃないわぁ。色々と世の中の汚いところも知っているし、汚いこともやってきた」

食蜂「それでも、また、あの頃のように笑えるかしらぁ……」

上条「歳を取りゃそんなの当たり前だろ。笑えるはずだ。あの頃よりも、もっと」

食蜂「……そうよねぇ。とうまさんが笑わせてくれるものねぇ」クスッ

上条「はは、お手柔らかに……」

258:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:48:15.32ID:wbxEeNos0


上条「お、着いたな」

食蜂「さて、後始末しなきゃねぇ。私の改竄力の見せ所かしらぁ」

食蜂(あっ……とうまさんの前で、まずかったかしらぁ……)

上条「あんまりやりすぎんなよ?」

食蜂「!」

食蜂「…………怒らないのぉ?」

上条「怒らねえよ。お前が頑張って身に付けた立派な能力を、俺なんかが批判していいわけねえんだ。あの頃はそれすら考えられなかったけどさ」

食蜂「とうまさん……!!わ、私、張り切って後始末してくるわぁ!!」

上条「あまり相手に害が無いようにしてくれよ?」

食蜂「うんっ!」

259:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)20:56:50.98ID:wbxEeNos0


――――――――――――

―――――

食蜂「もう終わったわよぉとうまさん」

上条「お疲れ様。ごめんな、迷惑かけて」

食蜂「いいのよぉ、これくらい。大した手間じゃないしぃ」

上条「そういえばビリビリは?」

食蜂「知らないわよぉ?」

上条「あれ?おっかしいなー……探さないと」

食蜂「…………」チッ

上条「さて、今日はもうこんな時間だし、ビリビリも探さなきゃだし、また今度改めて話をしような。お前と話したいことがまだまだたくさんあるんだ」

食蜂「ええ。私もいっぱいあるのよぉ。ずっとずっと話したかったことが、いっぱいあるんだから」

260:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)21:02:47.42ID:wbxEeNos0


上条「…………みさき」

食蜂「なあにとうまさん」

上条「今更だけどさ」

上条「俺と出会ってくれてありがとう」

上条「俺は……お前と出会えたことが、何よりの幸せだよ」

上条「8年ぶりに会えた今だからこそ、伝えたかったんだ」

上条「本当にありがとう」

食蜂(…………なによぉ……それぇ…)ポロッ

食蜂「と、とうまさんのばかぁ……!!私を……私を嬉し泣きさせて、どうしようって言うのよぉ……!!」ビエーン

上条「えっ、いや、そんなつもりじゃ……」

食蜂「うえええん……わあああん……」

―――私は、本当に幸せな気持ちに包まれていた

何度も何度も思い描いていた、幸せのカタチを

私はやっと手に入れることができたんだと

私は世界で一番の幸せ者だと

心から、そう思った

261:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)21:03:20.58ID:wbxEeNos0








262:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)21:06:42.32ID:wbxEeNos0


7月19日

この日記を書くのも実に8年ぶりだ

8年前の7月1日からこの日記は白紙のままだった

しかし、今日はどうしても書きたいことがあったのだ

まだ日が変わって間もない、午前2時に

とうまさんと再会した

とうまさんはあの頃と変わらず優しくて、温かい人だった

そして、私ともっと話したいと言ってくれた

こんな私に、出会ってくれてありがとう、と言ってくれた

私と出会えたことが何よりの幸せだと言ってくれた

私は、今日という日を一生忘れることはないだろう

たとえ明日世界が終わってしまっても、私は絶対にとうまさんのそばを離れない

もう絶対にあの手を離さない

とうまさんのそばでずっと生きていきたい

それだけが、私の生きる道だ

263:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)21:07:14.14ID:wbxEeNos0





7月20日




264:◆SoZEW6Fbg2:2014/06/28(土)21:07:40.46ID:wbxEeNos0


END

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