モバマスSSです
メインは市原仁奈とウサミンロボ
仁奈ちゃん家族構成、女子寮システムは勝手に作りました。公式と違いがあったらごめんなさい
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……ある日の事務所にて
ちひろ「はい、シンデレラガールズプロダクションです……」
ちひろ「あ、いつもお世話になっております。はい、Pですか? 少々お待ち下さい」
ちひろ「Pさん、お電話ですよ?」
モバP「ああ、すいません。どこからですか?」
ちひろ「市原さんからです」
モバP「市原……え? 仁奈?」
ちひろ「仁奈ちゃんのお母さんからですよ」
モバP「なんだろ……」
モバP「はい、もしもし、お電話替わりました。ああ、市原さん、いつもお世話になってます」
モバP「いえいえ、仁奈ちゃんの人気も相当なもので……」
モバP「はい。はい、は……えええ?」
モバP「そうですね……個人的には承諾できそうですが……ちょっとお待ち下さい」
モバP「ちひろさん、ちひろさん」
ちひろ「どうしました?」
モバP「寮の空き部屋、まだまだありますよね?」
ちひろ「ええ、地方から皆の両親や関係者がいらっしゃったときのために、数部屋は空けてありますよ」
モバP「一つ、キープしてください。すぐに連絡お願いできますか?」
ちひろ「それは構いませんけれど……市原さんがいらっしゃるんですか? 実家はすぐ近くだし、仁奈ちゃんは通いですけど」
モバP「それがですね……」
モバP「仁奈ちゃんのお父さん、知ってましたっけ?」
ちひろ「確か、海外を飛び回っているサラリーマン金太……エリート商社マンで、仁奈ちゃんにも滅多に会えないって」
モバP「今も商談中だったんですが、現地で事故にあって、命に別状はないものの、意識が戻らないそうなんです」
ちひろ「え」
モバP「お母さんは現地へ一刻も早く向かいたいそうで、その間、ウチの寮に仁奈を置いておくことが出来ないかって」
ちひろ「仁奈ちゃん、一人っ子ですものね……うちなら、知り合いも多いし慣れてるし」
モバP「こんな時に頼れる親戚もいないそうなんです」
ちひろ「仁奈ちゃんは事情を?」
モバP「いえ、とりあえずはお父さんの仕事の事情でお母さんも行くことになりそうだ、とだけ伝えているそうです」
モバP「その間だけでも、寮に住まわせたいと」
ちひろ「何人かには、事情を伝えておいた方がいいですね」
モバP「寮長のあいさんと、それから、持田さんにも」
モバP「前職のプライドを利用するようで心苦しいですが」
ちひろ「そこは、有効活用、と言い直しましょうよ」
モバP「早速、仁奈を迎えに行ってきますよ」
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仁奈「お泊まりでごぜーますか?」
仁奈「お母さんがお泊まりセットを持たせてくれやがりましたよ」
あい「やあ、いらっしゃい。仁奈くん」
仁奈「こんばんわでごぜーます」
仁奈「……Pは何処に行きやがりましたか?」
あい「ここは女子寮だからね、残念ながらPくんは入れない」
仁奈「そうでごぜーますか」
あい「代わりと言ってはなんだが、私を含めて、ここには必ず何人かのアイドルがいるよ」
亜理沙「仁奈ちゃん、こんばんわ」
仁奈「亜理沙せんせー、こんばんわでごぜーます。ウサコちゃんもこんばんわですよ」
亜理沙「ウサコちゃんにもちゃんとご挨拶できて、仁奈ちゃんはえらいですね」
あい「それじゃあ、仁奈くんの荷物を運んでおこうか」
仁奈「仁奈は自分のものは自分で持てるです」
あい「その意気や良し。だが、私たちにもお姉さんらしいことをさせてくれないか。さ、荷物を」
仁奈「うう、荷物は……あれ?」
亜理沙「まあ」
あい「ん?」
ウサウサ
仁奈「ウサミンロボが、仁奈の荷物を運んでやがります、えらいです」
あい「……確かに、寮の仕事補助のウサミンロボが何機か常備されてはいるが」
亜理沙「仁奈ちゃんのお手伝いですか?」
あい「晶葉くんからも菜々くんからも、Pくんからも何も聞いていないぞ?」
亜理沙「お手伝いしてくれるみたいですね」
仁奈「ロボはすげえです」
ウサウサ
あい「仁奈くんが喜んでいるのなら……いいのか?」
仁奈「ロボ、着いてくるですよ。こっちの部屋でごぜーます」
ウサウサ
きゅらきゅら
仁奈「違うですよ、ロボ、こっちですよ」
ウサ!?
ウサウサ
あい「大丈夫なんだろうか?」
亜理沙「ロボちゃんも、良い子ですよ?」
亜理沙「晶葉ちゃんと菜々ちゃんの子ですから」
あい「……その言い方は少々問題があるな」
あい「とりあえず、晶葉くんに連絡するか」
亜理沙「?」
あい「ウサミンロボに妙な挙動があったらどんな些細なことでも教えて欲しいと頼まれているんでね」
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晶葉「と言う訳なんだが」
菜々「さすがにウサミンの博愛精神はロボにまで行き届いていますね」
晶葉「それはそれとして、二十七号が行方不明になってる」
菜々「え」
晶葉「どうも、寮長の話を聞く限り、仁奈くんの世話をしているのが二十七号のような気がする」
晶葉「元々、寮に配置されているタイプのウサミンロボには高度なAIは積んでないからな、命令は聞くが、自己判断は出来ない」
菜々「二十七号はいつから行方不明なんですか?」
晶葉「ついさっきだ。だからこうやって電話しているんだ」
菜々「?」
晶葉「ウサミンの所に二十七号は行ってないか?」
菜々「里帰りはしてませんよ? 家……ウサミン星にいるのはいつも通り七号だけです」
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駆けつけた晶葉が手早くウサミンロボをチェックしたけれど、異常は何もない。
晶葉「単なる、仁奈が好きなロボかも知れない」
あい「ロボにも好悪の感情があるのか?」
晶葉「ウサミンロボにも好悪はある。みくファンや蘭子ファンもいるぞ」
あい「そういえば……ウサ耳をネコミミに換装していたロボがいたような……」
晶葉「それだ」
あい「あと、漆黒の翼を背中に装備していたロボも……」
晶葉「それだ」
あい「……ウサミンロボも、なかなか隅に置けないな」
晶葉「パネェんだよ」
あい「パネェ……か」
晶葉「仁奈ファンのウサミンロボがいてもいいだろう」
あい「ああ」
頷いた二人の前を、仁奈を頭の上に座らせたウサミンロボがキュラキュラと走っていく。
耳を掴んだ仁奈は、きゃっきゃっと喜んでウサミンロボに右だ左だと命令している。
あい「仁奈くんが楽しそうなら、それで充分か」
晶葉「まあ、悪のウサミンロボが時に野心を抱き、寮征服を夢見たとしても、ここには鬼の風紀委員がいるからな」
早苗「蹂躙されて黙ってないけど。ところで誰が鬼かな?」
晶葉「鬼のように強い元婦警のアイドルだな」
早苗「あのね、お姉さんは基本的に可愛いものとは戦いたくないんだけど?」
晶葉「戦う羽目にはならないと思う」
早苗「だったらいいけど」
それだけ言うと早苗は、待てぇー、と楽しそうに叫びながら仁奈の乗ったウサミンロボを追いかける。
仁奈「早苗お姉さんが来やがりました! 逃げるでごぜーますよ、ロボ」
ウサウサ
きゅらきゅきゅきゅ
そして一週間が過ぎた。
ちひろ「……長いですね」
モバP「一か八か、意識不明のまま日本へ搬送すると連絡が来た」
ちひろ「!!」
モバP「幸い、それだけの手間を費やしても必要な人材だと、会社側が判断しているらしい」
ちひろ「仁奈ちゃんにはまだ……?」
モバP「俺の口から言えるわけ、ないじゃないですか」
モバP「伝えなければならないとすれば、それは俺の口からじゃないでしょう」
ちひろ「仁奈ちゃん、ウサミンロボが随分お気に入りみたいですけれど、限度ってものがありますよ」
ちひろ「まだ、小さな子供なんですから」
二人の心配は杞憂ではない。
事実、仁奈は少しずつではあるが、日に日に元気を喪っている。
そして、何とかしたいと思っているのは、モバPと千尋だけではないのだ。
そんな、ある夜の寮の食堂。
みちる「リンゴ……リンゴ……確かリンゴがこの棚に……」
みちる「薄く切って焼いたパンにのせて食べるととても美味しいリンゴ……」
みちる「ない。リンゴがありません」
みちる「……買い置きがあったはずなのに」
……ウサウサ
みちる「薄く切ってパンにのせると美味しいリンゴの気配!?」
みちる「そこっ!」
……ウサウサ
みちる「これは、パンを食べたことのない人の気配!」
みちる「つまり、今の寮内でパンを食べたことがないのは……」
みちる「ウサミンロボ!? ウサミンロボですね!」
みちる「出てきなさい! こんがり焼いたパンに薄く切ってのせて食べると美味しいリンゴを抱えたウサミンロボ!」
みちる「返答次第によっては、あたしのお夜食はウサミンロボのオープンサンドに変更です」
ウサ!?
しかし、ウサミンロボは姿を見せない。
みちる「早く、キャタピラをキュラキュラ言わせて出てきなさい!」
……
みちる「出てこないんですね、わかりました。あたしも四国は愛媛でスカウトされたアイドルです」
みちる「四国の底力、見せてあげましょう」
みちる「♪こんぴらふねふね 追い手に帆かけて」
きゅらきゅきゅきゅ
みちる「出てきたーっ!!」
ウサ!?
ちなみに「金比羅船船」の唄は香川県民謡なので愛媛とは関係ない。大原みちる、恐るべし。
そして始まる大追跡は、騒ぎに気付いたあいと、仁奈を励まそうとお泊まりに来ていたきらりの二人が夜食用に残しておいたサンドイッチをみちるに差し出したことで終了する。
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みちる「はむはむ」
あい「それで、ウサミンロボはどうしてリンゴを持っていこうとしたんだ。話によっては晶葉くんに連絡せねばならん」
ウサ
あい「とは言っても生憎だが、君の言葉がわかるのは菜々くんと晶葉くんだけだ」
きらり「きらり、ロボちゃんの言葉わかゆよ?」
あい「……君には時々驚かされる」
ウサウサ
きらり「……仁奈ちゃんをハピハピにすう?」
みちる「ふごふご」
きらり「みちるちゃんの言葉はわかんないにぃ……」
あい「口の中のものを食べてから話したまえ」
みちる「…………ごくん……言ってくれれば、あたしもウサミンロボに協力したのに」
ウサウサ
きらり「食べられるのが恐いって言ってるにぃ」
みちる「食べませんよ?」
きらり「……」
みちる「いや、本当に」
きらり「……」
みちる「多分」
あい「おい」
ウサウサ
きらり「ロボちゃんがあいさんにも協力してほしー☆って」
あい「仁奈くんのためならいいさ。できることをやろう」
そして、翌日。
食堂には仁奈が、そして薫や千枝達も集まっている。
仁奈の様子を聞いて集まった年少組達だった。
居並ぶ中で一人大きいのはきらりだ。 よく見ると輝子や幸子もいるが、身長の低さのため違和感がない。
あい「ふむ……そろそろ時間だな」
食堂奥に設えられた簡易ステージ上には、リンゴと様々な道具の入った籠が置かれている。
あい「ウサミンロボ! ショータイム!」
あい(後半参りましょう、のほうがいいんじゃないだろうか?)
ステージの幕が上がり、そこにはウサミンロボ七号と二十七号の姿が。
♪でんででっで でんでんで でんでんででっでん
二台はきゅらきゅらと走りながら、両手の平を地面に向けてリズムを取っている。
二十七号が耳にフォークを括り付け、食堂端へ。
七号がそれに向かってリンゴを投擲する。
見事にフォークに刺さるリンゴ。
拍手喝采の年少組ときらり。
♪でんででっで でんでんで でんでんででっでん
ウサミンロボは絶好調だった。
次々と投げられるリンゴ、全てをフォークで突き刺し受け止める二十七号。
フォークがリンゴで一杯になると、袖に待機しているみちる、かな子、法子が素早く回収する。
因みに舞台脇には所狭しと調理器具が並べられ、リンゴバケットサンド、アップルパイ、焼きリンゴドーナツが量産されていく。
量産されたそれらは、観客達に振る舞われるのだ。
勿論、みちるとかな子と法子も食べる。
♪でんででっで でんでんで でんでんででっでん
盛り上がる場内。
「ヒャッハー!」
輝子が、ステージの盛り上がりに我慢できなくなったように乱入した。
すかさず付け髭を渡すウサミンロボ十七号。
付け髭を着け、ウサミンロボに混ざる輝子。次々とリンゴ、そしてキノコを投げる。
「ヒャッハー!」
フォークで受け止めるウサミンロボ。
七号、そして待機していた数機のウサミンロボが耳にフォークを付けて現れる。
輝子に当てられたように、次々と乱入して参加する観客達。
十七号は付け髭を配るのに大忙しだ。
幸子も踊っている。付け髭で。
♪でんででっで でんでんで でんでんででっでん
「わぁあ!」
薫が乱入して、むんずと籠の中のリンゴを掴み、放り投げる。
♪でんででっで でんでんで でんでんででっでん
「わぁあ!」
舞も乱入して、むんずと籠の中のリンゴを掴み、放り投げる。
♪でんででっで でんでんで でんでんででっでん
「わああっ!」
仁奈も乱入して、むんずと籠の中のリンゴを掴み、放り投げる。
♪でんででっで でんでんで でんでんででっでん
「にょわ~☆」
きらりが乱入して、ぐしゃりと籠の中のリンゴを握り潰してしまった。
「……にょわ?」
どんどん投げられるリンゴ。受け止めるウサミンロボ。
リンゴバケットサンド、アップルパイ、焼きリンゴドーナツを作り続け、食べ続けるみちる、かな子、法子。
ウサミンロボショータイムは、圧倒的熱狂の中で幕を閉じたのだった。
その二日後、日本に運ばれた仁奈父は無事意識を取り戻した。
後に、仁奈父は仁奈母にだけこう語ったという。
「目覚める前に不思議な夢を見たんだ」
「うん、仁奈と遊んでいる夢だよ」
「もう一人の私と、リンゴでジャグリングをしているんだ」
「そうすると、不思議な声が聞こえたんだよ」
「『そこはロボの場所ウサ。お前はそろそろ帰るウサ』ってね」
おわり
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